第26回目放射線調査 ~福島県沖海洋及び河川・河口域放射線調査および琵琶湖ベースライン放射線調査

記事 - 2016-08-19
 

東京電力福島第一原発事故により拡散した放射性物質の汚染状況調査報告

グリーンピースでは、東京電力福島第一原発事故発生直後の2011年3月26日〜27日の第1回から、これまで25回、放射性物質、放射線調査を行っています。

今回、2016年2月21日から3月11日までの期間、グリーンピースは宮城県の阿武隈川河口域、福島県の沿岸といくつかの河川の流域を選び、放射線測定とサンプリング調査を行ないました。
放射線測定は、グリーンピースの船「虹の戦士号」の支援を受けて、日本の調査船により行われました。
フランスの独立の放射線測定機関ACROとグリーンピースの放射線測定の専門家数名が、ガンマ線スペクトロメーターとサンプル採取装置を装備した遠隔操作による無人水中探査装置(ROV)を用いて、海岸線から10キロメートル以内の海底の堆積物の放射線量を測定しました。
陸上の調査チームも、阿武隈川、太田川、夏井川、鮫川、新田川の流れに沿って、上流と海岸近くの両方でサンプルを採取しました。

 

また、調査チームは、滋賀県の琵琶湖でも、ROV、ガンマ線スペクトロメーター、サンプル採取装置を用いて、堆積物についてのベースライン調査を行ないました。

収集したデータもふまえ、グリーンピースではレポート「水に沈む放射能ーー東京電力福島第一原発事故から5年 淡水域および海水域の堆積物に対する放射能調査と分析」を2016年7月に発表しました。
また、文献をまとめたレポート「循環する放射能:東京電力福島第一原発事故の生態系への影響(抄訳)」を3月に公開しています。これらから、以下のように結論づけています。

結論

● 東京電力福島第一原発事故の教訓:

(1)放射能は広範囲に降下し、生態系内に数十年から数百年とどまる。

(2)森林や湖などは、放射性セシウムの「供給源」となる。放射性セシウムは植物の成長に欠かせないカリウムに似ており、植物に取り込まれるなどして長期間にわたり存在、ゆっくりと環境中を移動する。陸地と淡水系に蓄えられた膨大な放射能は、ヒトとヒト以外の生物相のどちらも危険にさらす。

また、滋賀県で開いた記者会見では、以下を訴えました。

  • 万が一、関西電力の原発で過酷事故が起こった場合、東電福島第一原発事故の経験さえも上回る深刻な環境影響をもたらす可能性がある。
  • 放射能汚染は、長期間にわたり社会・経済にも深刻な影響をもたらす。
  • 原子力発電は、「安定供給」が行える電源ではないことは明らか。関西電力管内では、大飯原発の定期検査入り以降、2年以上原発ゼロ。また、高浜3・4号機は裁判により停止中
  • 将来のエネルギーは、不安定な原発ではなく、社会にも環境にも影響が少なく、かつ地域に雇用をもたらす省エネルギーと自然エネルギーに舵をとるべき。
  • 関西電力の原発の再稼働にあたっては、立地自治体だけでなく広範囲に自治体や市民の声が聞かれるべき。

>プレゼンテーション資料

レポート「水に沈む放射能ーー東京電力福島第一原発事故から5年 淡水域および海水域の堆積物に対する放射能調査と分析」

レポート「循環する放射能東京電力福島第一原発事故の生態系への影響(抄訳)」

 

福島県沖、福島県河川および河口域、琵琶湖岸での調査結果
※地名をクリックすると詳細がご覧いただけます。

 

【調査の日程】

2016年2月21日~3月11日

【測定地域】

東京電力福島第一原発を中心として、いわき市から相馬市にかけての福島県沖、海岸線から10キロメートルの範囲内

 

【測定結果】

事故前(2010年)、福島県沿岸の海底土で計測されたセシウム137は0.3〜1.4Bq/kg(*)でしたが、今回のグリーンピースの調査では、34〜120Bq/kg程度が計測されました。

グリーンピースが今回行なった海洋調査は、過去5年間に行なわれたいくつかの(グリーンピース以外の機関が実施した)科学的な調査の知見を追認するものとなりました。
2012〜2013年にThornton, Ohnishi らによって行われた調査によって、東京電力福島第一原発から半径20キロメートル以内の海域で確認された、局所的に高濃度に汚染された場所の存在を再確認することはできませんでした。
要因としては、局所的に濃度の高い場所は、極めて狭い範囲に散在していることと、海水の放射能遮蔽効果が高いことがあります。
例えば40,000 Bq/kg 以上の濃度であっても水中では1メートル離れると検出されない場合もあります。
グリーンピースの測定結果からは、局所的に高濃度に汚染された場所が存在し続けているのかどうか、あるいは放射性セシウムを含有する堆積物がすでに移動し、分散したかについては、今の段階で確定的な結論を出すことはできません。

*出典:原子力規制庁.“環境放射線データベース”.http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top, 2016-07- 11にアクセス

 

堆積物サンプル採取地点

グリーンピースが今回調査した福島県沿岸で採取した海底土(乾燥後)の分析結果は、こちらのレポートの巻末にあります。

 

【調査の日程】

2016年2月21日~3月11日

【測定地域】

阿武隈川、太田川、夏井川、鮫川、新田川の上流と海岸近く

 

【測定結果】

調査結果は、阿武隈川、新田川、太田川の川岸が放射性セシウムにより高濃度に汚染されていることを裏付けました。
阿武隈川は宮城県内で太平洋に注ぎますが、集水域のほとんどは福島県内にあります。その阿武隈川河口域で採取した堆積物サンプルのセシウム137の濃度は 260~5,500 Bq/kg の範囲でした。
また、新田川と太田川の川岸で採取したサンプル中のセシウム137の濃度は、920~25,000 Bq/kg の範囲でした。採取個所は、川岸、ダムの近く、山の中の上流と水源近くです。

鮫川河口域付近での調査とサンプリングの結果、高いレベルの放射性セシウムが確認されました。
東京電力福島第一原発から南に約60キロメートルに位置するいわき市小名浜港の南の鮫川河口域では、サンプル中のセシウム137は52~120Bq/kg、セシウム134は 8.9〜21 Bq/kgでした。また、新田川と夏井川河口域では、セシウム137は 11〜27Bq/kgでした。

堆積物サンプル採取地点

河川の土手で採取した土壌・堆積物(乾燥後)の分析結果は、こちらのレポートの巻末にあります。

グリーンピースは滋賀県琵琶湖で堆積物についてのベースライン調査をおこないました。
この古代湖は、隣接する福井県にある関西電力の美浜原発と高浜原発から、30〜50キロメートル圏に位置しています。琵琶湖は、かつてこの地域に存在しその前身となったいくつかの古代湖を含めると、約350万年前から存在しており、名実ともに世界有数の古代湖です。595の動物種と491の植物種が琵琶湖に生息し、そのうち固有種と固有亜種は62種におよびます。
琵琶湖はまた、関西圏に住む1,400万人の住民に飲み水を供給する水源でもあります。

【調査の日程】

2016年3月22日~24日

【測定地域】

滋賀県琵琶湖岸(高島、長浜、草津の各湖岸)

 

【測定結果】

堆積物サンプルの分析結果が示す放射性セシウムのレベルは、7~13 Bq/kgでした。これは、東電福島第一原発事故以前である1997年に琵琶湖で測定された濃度を下回る数値です。
比較して、例えば、グリーンピースの2015年の調査で、飯舘村岩部ダムの堆積物の放射性セシウムのレベルは最高で83,000Bq/kgでした。
また、東電福島第一原発の西39キロメートルに位置する真野川のはやま湖 は、ひどく汚染されていることが確認されてきました。2012年に行なわれたある調査の結果では、放射性セシウム濃度は 24,189 Bq/kg +/- 5,636(湿重量)でした。

琵琶湖調査の結果は、現在、福島県内のさまざまな湖沼、貯水池、ダムで広範にみられる放射性セシウム汚染と明白な差異があり、琵琶湖を放射能汚染から守ることの重要性と緊急性を浮き彫りにしています。

 

淡水域での放射能の循環(イメージ図)

琵琶湖での堆積物サンプル 採取地点

 

>データシート 琵琶湖で採取した湖底の堆積物(乾燥後)の分析結果
2016年7月21日発表プレスリリース

【使用機材】

ガンマ線スペクトロメーター:(AOMTEX AT6104DM)

関連ブログ

【2016年最新版】放射能調査の結果報告

  

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