第7回目放射線調査

記事 - 2011-10-05
福島第一原子力発電所の事故により海洋に流出した放射性物質の海産物への影響を調べるために2011年9月13日~9月14日に行ったサンプリング調査の報告です。

第7回目調査

調査の背景


© Kazuya Hokari / Greenpeace

2011年5月、7月、8月にグリーンピースが行った海洋調査では、福島沖の魚や海藻から放射性セシウムを検出しました。

また9月1日には茨城県が、日立市沖で採取したエゾイソアイナメ(ドンコ・海の底に生息する魚)から、国の基準(500ベクレル/kg)を超える540ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表。

政府による水揚げ時のスクリーニングが不十分な状態であるにもかかわらず、同県では底引き網漁が9月15日に解禁されてしまいました。

依然として北部海域では操業自粛に追い込まれているのが現状ですが、県中央以南では実際に操業が始まりました(ただしエゾイソアイナメは全県で出荷自粛、大中型まき網漁業は宮城県南部海域から茨城県南部海域において操業を自粛)。

これを不安視する福島県いわき市の漁業関係者の声を受けて、グリーンピースは9月13日~14日にいわき市にて海洋調査を行いました

調査結果

前回(8月)調査に引き続き今回の調査でも、日本政府の定める暫定規制値を超えるものはないものの、海から採取したすべてのサンプルから放射性物質を検出しました。

2011年9月13日~14日 いわき市

核種別

核種 状況
ヨウ素‐131 検出なし。
福島第一原子力発電所からの放射性物質の新たな大量流出はなかったものと思われます。
セシウム(134+137) 魚類では6サンプル中5サンプル
海藻類では4サンプル中半数の2サンプルから、100ベクレル/kgを超える数値が検出。
放射性物質が、長期にわたり海洋生態系および日本の食卓を汚染していることが判明。

種類別セシウム(134+137)検出結果

魚種 サンプル場所 状況 備考
アイナメ サンプル 1 小名浜 398ベクレル/kg カンパチ以外の魚はいずれも海の底に生息する魚
アイナメ サンプル 2 小名浜 238ベクレル/kg
ヒラメ 小名浜 207ベクレル/kg
メバル 小名浜 254ベクレル/kg
キツネメバル 小名浜 187ベクレル/kg
カンパチ 小名浜 50.6ベクレル/kg
ナガアオサ 平潟 19ベクレル/kg 海藻は日本の食卓に欠かせない食材であるばかりでなく、ウニやアワビなどの餌ともなっています。
マコンブ サンプル 1 平潟 112ベクレル/kg
マコンブ サンプル 2 久ノ浜 127ベクレル/kg
ワカメ 久ノ浜 85ベクレル/kg

調査結果の詳細数値 >>

漁師のみなさんの声

海洋調査では、毎回地元の漁師の方にお会いし、サンプルを提供して頂いたり、お話を伺ったりしています。


© Kazuya Hokari / Greenpeace
  • 政府はいつまで“暫定”規制値を使う気だ。
    いまの500は震災前の魚の1000倍以上。
    既に半年もこの基準を使い、これからも使い続け、本当に安全なのか。
    本当に安全ならば『安全宣言』を出してもらいたい。
    責任をとりたくない政府は、『安全宣言』を出すどころか、この問題自体を行政ではなく生産者に押し付けている。
    なぜ私たちが漁業をいつまでもできないでいるのか忘れたか」
  • 「県のサンプリングやがれき除去を手伝って日当1万円強。
    漁に出ればこの20倍は稼ぐさ。
    補償もいつまでもいい加減。
    安定収入がないからローンが組めず、半壊した家を改築できない。
    1階がいつ崩れるか恐れながら2階で寝ているよ。

    © Kazuya Hokari / Greenpeace
    漁業再開か全額補償のどちらかでもきちんと進めてほしい
    野田首相の『福島の復興なくして日本の復興なし』はやはり単なるパフォーマンスか」
  • 「東京から記者は来るんだ。
    たくさん来る。
    取材を受けて何十回何百回と同じ主張を繰り返し言い続けている。
    しかしいっこうに記事にならない。
    政府だって動かない。
    さすがに疲れてきたよ。
    グリーンピースさん、この現状を伝え広げてくれ
    よ」

調査の日程

2011年9月13日・14日

調査場所・範囲


© Kazuya Hokari / Greenpeace

福島県いわき市:久ノ浜港、小名浜港、四倉港

結論

地域の漁業復興と消費者の安全性の確保には、水揚げの際に安全な魚と危険な魚を分別する十分なスクリーニング(政府や県が主導)と、消費者が魚介類を購入する際に商品を選択できるだけの情報提供(政府やスーパー企業が主導)が不可欠

スーパーなどに並ぶ魚介類を手に取る消費者が求めているものは、「暫定規制値以下だから安心・安全」という情報ではなく、「○○ベクレル/kg」という具体的数値

政府や小売店は、安心して魚介類を食べたいと望む消費者のニーズを受け止め、放射能汚染に関する自社測定、その測定結果の数値公表、そして魚介類商品の漁獲海域の情報提供につとめる必要があります。

調査結果、漁師のみなさんの声を受けて: グリーンピースの今後の活動


© Kazuya Hokari / Greenpeace
  • 今後も地域の漁業関係者と共に海洋調査を継続します。
  • 日本政府に対し、魚介類のスクリーニングの強化暫定規制値の見直し、そして魚介類商品販売現場にて放射能汚染の数値と漁獲海域の表示の義務化、を要請しています。
  • 大手スーパーに対し、流通基準(政府による暫定規制値よりも厳しい基準)の策定、魚介類商品の自社検査と分析結果の消費者への公表、魚介類商品の漁獲海域の消費者への公表、を要請しています。
  • 大手スーパーの店舗にて魚介類商品を購入し放射性物質の抜き打ち検査を行っています。

放射線調査

 

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