空き缶、北極海の海底で発見

エスペランサ号の海底カメラが捉えた、北極海の海底200メートルに横たわるコカ・コーラの缶です。どうやって捨てられて、ここにあるのでしょう? おそらく、トロール漁船か観光船から投げ捨てられたか、湾岸からハリケーンで飛ばされてきたのでしょう。人の住んでいない北緯80度の海岸沿いには、大小のプラスチックゴミも散在しており、そこをホッキョクグマが歩いていました。

私たちを乗せて北極海調査を続けるエスペランサ号はほぼ連日、ケーブルをつなげた水中カメラを北極海の海底に沈めて観察してきました。それは、ときには海底400メートルにまで達し、クルーたちはエスペランサ号から交代でケーブルを巻き上げて、すぐにカメラの記録をチェックします。スクリーンには美しくすばらしい生き物たちの姿が映し出される一方で、ローラーや開口板のついた巨大な網で海底を引っ掻き回して獲物を捕まえるトロール船で削られた溝も数多く見つかりました。地球上のあらゆる場所で、人類がどれほど影響をおよぼしているのかを痛感させられます。

いま、北極海は二酸化炭素の排出による気候変動と海水の酸性化と汚染により、その自然環境を脅かされています。それはコカ・コーラの缶のように目に見えるものから、風や波によって運ばれてくるPCBなど有害物質のように目に見えないものまで、さまざまです。そうした汚染は、ホッキョクグマをはじめとする大型の捕食動物の体内に蓄積されます。北極圏における産業――漁業や石油、石炭・天然ガスの採掘は、この環境破壊の一因でもあります。

気候変動は海流の変化に影響を与えます。

複数の海流(海水の大きな流れ)がぶつかる前線を潮目と言いますが、高緯度(北極や南極に近い海域)の冷たい海流が暖められれば、低緯度(赤道付近)の暖かい海流とぶつかる潮 目は北上(北半球の場合)します。こうした潮目は栄養豊富なため多くの生物が群れる特性があるので、潮目
の動きに沿って魚の群れも北上し、さらに漁船もその群れを追いかけ北上するのです。

このようなところでどんどん漁業が行われ続ければ、手つかずの自然が残る北極海は、ますます危機にさらされます。

写真:(c)Greenpeace/Gavin
Newman 2010年6月北極海