「海洋の酸性化」――聞き慣れない言葉ですが、科学者のあいだでも注目されるようになったのはつい数年前、2004年にパリで開かれた海洋会議以来のことだそうです。それまで二酸化炭素(CO2)を人工的に海洋投棄した場合の影響については研究されていましたが、自然に吸収されたCO2が海にどんな影響をもたらすかは研究対象として注目されておらず、この会議のときに初めて使われた言葉だといいます。







今回、グリーンピースが協力して海洋酸性化の調査を行ったドイツのライプニッツ海洋研究所の科学者でプロジェクトリーダーのウルフ・リベセル教授(写真)によると、この調査が世界で最初の、かつ最大の海洋酸性化調査になるそうです。33日間におよぶ調査のあいだ、12人の科学者たちは毎日交代で海中に設置したメソコスムに自分たちでゴムボートを運転して通い、観察を続けてきました。その結果、「一日も失敗なく、完全に満足する結果を得られた」とのこと。







地球上で発生したCO2の45%は大気に、35%が森林に(ただし地球上の森林が減っているので、この数字は変化しています)、25%が海に吸収されています。CO2が海に吸収されると、化学変化によって海水が酸性化します。海水が酸性化すると、サンゴや甲殻類の成長に欠かせない石灰化が難しくなり、結果的にこれら生物の減少につながる危険性があります。大気へのCO2排出がこのまま増え続けると、2060年にはいまより120%も海水の酸性度が増すと予測されています。そのとき地球環境全体に何が起きるのか――。 リベセル教授らは今回の調査結果をまとめ、科学雑誌に発表するだけでなく、来年4月にジュネーブで開かれるヨーロッパ最大の自然科学会議、欧州地球科学連合(EGU)の特別セッションで発表する予定です。この会議は、世界から約10,000人の科学者が参加するもの。








『ナショナル・ジオグラッフィック』誌のジャーナリストも2人、取材に来ており、来年にはこの調査が同紙に掲載される予定ということですので、世界中で「海洋の酸性化」が話題になるかもしれません。








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(c) Nick Cobbing / Greenpeace

メソコムスの回収作業をするエスペランサ号
Norway,
Svalbard 2010/07/07