こんにちは。
昨日、3月18日は、ネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留基準の緩和について検討していた厚生労働省の部会*1が開催され、傍聴にいってきました。この日の部会では、クロチアニジンの残留基準が再審議となるという、重要な発表がありました。
★ 残留基準は再審議に
ホウレンソウやカブの葉への残留農薬の基準値を40ppmという高い数値まで認める提案がなされていたクロチアニジンの残留基準について、今日の部会では、食品安全委員会に再度意見をもとめ、その意見をもとに厚生労働省の部会で再審議を行うことが正式に発表されました。
再審議の理由について厚生労働省は、1657件ものパブコメが届いたことや、欧州食品安全機関(EFSA)がネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド、アセタミプリド)について慢性性からみた許容量(ADI)や急性毒性からみた許容量(ARfD)の引き下げを推奨したことを踏まえたと言っています。
みんなの声、力になっていますね!
尚、食品安全委員会の審議には、パブリックコメントや調査で得られた文献も提出する予定とのことです。
★ 急性毒性も新たに評価
日本では、急性毒性からみた許容量(急性参照用量:ARfD)は、ほとんどの農薬で設定されてきませんでした。しかし、世界的な流れでは、急性と慢性、両方の毒性を考慮するようになってきていることから、厚生労働省では、今年4月以降の農薬の登録申請から、急性毒性からみた許容量も、検討に含めていくそうです。*2
クロチアニジンはかなり前に申請されていた農薬ですが、特別に対象となり、急性毒性からみた許容量の設定が食品安全委員会に依頼されました。
その他のネオニコチノイド系農薬や有機リン系農薬、カーバメート系農薬も、優先的に急性毒性が検討されるそうです。*3
★ みんなの声が、いま、残留基準の緩和を止めています
実は、残留農薬のパブリックコメント募集のあと、再審議が行われることはまず無いとまでいわれるくらいパブリックコメントは形式な扱いをうけてきました。
それが、今回は、再審議が決まり、急性毒性の検討などを検討するために食品安全へ再諮問されることになりました。その間、基準緩和のプロセスはいったん止まります。
これは、無視できないほどたくさんの、そして真剣な声があったからです。
パブリックコメントの結果も、この日の部会で、部会の専門委員に報告されました。報告では、どんな意見がどれほど多かったかを説明した文書が資料として出されました。↓
「クロチアニジンの基準改正に係るパブリックコメントの結果について」
パブコメのなかから科学的な意見しか取り上げないと厚労省は言っていましたが、市民の高い関心や意見を受けて、厚生労働省もそれを部会の委員の方に伝える努力をしてくれたと受け止めたいと思います。
★ 動けば変わる-さらなる動きをつくりだそう
市民の声が、いま残留基準の緩和を止めています。
今後再び、食品安全委員会、厚生労働省でそれぞれ審議があります。またパブリックコメントが募集されることもあると思います。
今回の前進をより確実なものにし、私たちの食卓と農業の未来をまもるために、今後の再審議の過程でも消費者の意見がしっかり反映されるよう、さらに大きな声を作っていくことが必要です。農薬の規制について、情報のアンテナを張り、同じ思いをもつ人たちと情報や意見を交換し、生産者(農家)の方たちともつながって、さらなる動きをつくりだしていきませんか。
*1薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会
*2 資料11(別添スライド資料)
*3 資料11急性参照用量を考慮した残留農薬基準の設定について(案)
その他グリーンピースの「食と農業」キャンペーンの関連情報は
こちらの「食と農業」のページをご覧ください
~~(付録)今回部会の議論から~~
部会の議論からさらに二つほど、ご紹介と感想です:
ミツバチ
厚生労働省の部会は、ミツバチへの影響については審議していません(農林水産省の担当なので)。
でも、この日は、部会の座長から、農林水産省で調査検討しているのか、それはいつ結果がでるのかといった質問が出席していた農林水産省担当者に向けられました(農林水産省は結論の時期については答えませんでしたが)。こうした質問が出るのも、パブリックコメントでミツバチへの影響について心配する意見がたくさんあったことと無関係ではないと思います。
性毒性について
急性毒性といえば、冷凍食品に故意に農薬が混入されたときのニュースで耳にしたという記憶がありませんか? 委員からも、故意ではなくこれまでの通常の農薬使用で急性の被害がこれまで具体的にあったのかといった質問が出ていました。これに対して、被害の報告はこれまでのところなかったが、その可能性もあるから急性毒性の観点からの許容量(ARfD)をきめる、ということがその場で確認されました。
でも、よく考えてみると、日常的に食卓にならぶような食品について、残留農薬の急性毒性を心配しなければならないような状況に私たちはいるということです。
農薬を使う場面や量が増えるたびに、基準の方を引き上げるということは、もうやめ、予防原則を取り入れた、意思決定をしていくことが急がれます。