(写真:(c) Noriko Hayashi / Panos / Greenpeace )


こんにちは、核・エネルギー問題を担当している鈴木です。

5月23日、福島から、お母さん、お父さんが文部科学省にかけつけ、福島の子どもの被ばく最少化を訴えました。

全国の市民からの支援もあり、5月27日に文部科学省大臣は「年1ミリシーベルトをめざす」と会見で言いました。

「年20ミリシーベルト」を目安とするのは撤回しないけれど、被ばく量が年1ミリシーベルトになるようにしましょうと。

そして、同日、文部科学省は福島県などに「福島県内における児童生徒などが学校等において受ける線量低減に向けた対応当面の対応について」という「事務連絡」を送りました。

それによると、「当面の対応」は

1. 福島県内すべての学校に積算線量計を配布

2. 学校において子どもの受ける線量について年1ミリシーベルト以下を目指す

3. 空間線量が1μSv以上の学校を対象に、土壌に関する低減措置を財政支援

つまり、1ミリシーベルトをめざすのは、子どもが学校にいる間だけ。
財政支援は、土壌だけ。


さらにNGOによる文科省への聞き取りで、

● 登校・下校・放課後などは含めない

● 吸い込みや給食などによる内部被ばくは含めない

● 原発の爆発で大量の放射性物質が3月に降ったにもかかわらず4月からの積算とする

ことなどが明らかになりました。詳しくは「共同声明:文科省5月27日付当面の対応について問題点」をご覧ください。

これでは福島の子どもを守ることはできません。
グリーンピースは、他のNGOや市民のみなさんと協力して、子どもの生活圏全体の被ばくを減らす取り組みをすすめます。

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共同声明: 「文科省文書5月27日付当面の対応について問題点

2011年6月3日
グリーン・アクション、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)、FoE Japan、グリーンピース・ジャパン

子ども1ミリシーベルト問題
文部科学省5月27日付「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」の問題点について

「1ミリシーベルトを目指す」のは学校にいる間の被ばく量のみ
~学校外・内部被曝も含めた1ミリシーベルトを目指すべき~
~避難、保養、学童疎開などあらゆる被ばく低減策を実施すべき~

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子ども20 ミリシーベルト問題に関して、文部科学省は5 月27 日付で「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」を福島県内の関係機関に通知。その中で、(1)全校に積算線量計を配布し6月1日からモニタリングを実施する。(2)「今年度、学校において児童生徒等が受ける線量について、当面、1 ミリシーベルトを目指す」、(3)校庭・園庭の空間線量率が毎時1 マイクロシーベルト以上の学校の土壌除去について、財政支援を行うことを表明した。

この「当面の対応」の内容について、6月2日、福島みずほ議員への文科省による議員レクが行われ、私たちも同席した。そこでは、私たち市民団体が5月27日付声明で問題点を指摘していたように、「当面の対応」には極めて大きな問題があることが具体的に明らかになった。

Ⅰ.明らかになった事実

1.「今年度、1ミリシーベルト」の意味について

● 学校内における被ばく量の目標値であり、登下校も含め、学校外における被ばく量は含めない。
● 学校給食による内部被曝は含めない。
● ほこりの吸引などによる内部被曝は含めない。
● 2011 年4 月の始業式から、来年3 月の終業式までの間であり、2011 年3 月の事故後の被ばく量は含めない。
● 計測は、学校に1台配布している積算線量計により、6 月1 日より開始する。なるべく子どもの行動を代表するような教師が持ち、始業から終業までを計測。4~5 月は、実測による積算線量から推測する。モニタリング結果は、これまで高い線量を示している55校は2週間に1回、それ以外は1か月に1回の報告とし、文科省のホームページで公開する。
● 文科省としても、学校外も含めて、トータルで最終的に1ミリシーベルトを目指すという認識でいる。学校内における「今年度1ミリシーベルト」は、このための通過点である。

2.「今年度1ミリシーベルト」を超えた場合の措置について

これはあくまで目標であり、超えた場合に何かの措置をとるわけではない。

3.毎時1 マイクロシーベルト以上の学校の土壌除去への財政支援について

● 1マイクロシーベルト/時の根拠について:いままでの経験上、土壌除去後の線量が1マイクロシーベルト/時であるため、それを根拠としている。投資するため効果が確実になることも考慮に入れた。
● しかし1マイクロシーベルト以下の校庭の土壌除去により、効果が得られないことを実証したわけではない。
● 1マイクロシーベルト/時以下の校庭の除染は対象外。
● 費用が40 万円以下であると補助の対象にはならない(正確には市町村立の学校、県立の学校、私立の幼稚園等によって金額に違いがある)。
● 先行して除染活動を行ったものについても、上記の要件を満たせば、補助の対象となる。

4.土壌除去以外の被ばく低減策への財政支援について

特に考えていない。


Ⅱ.「学校に限定」ではなく、トータルで1ミリシーベルトを基準にすべき

● 避難、保養、学童疎開などあらゆる被ばく低減策を実施すべき
上記のように、文科省の「今年度、1ミリシーベルトを目指す」という方針は、通学時を含めた学校外での被ばく量、内部被曝、2011 年3 月の被ばくを完全に除外して、「学校にいる間」だけに限定してしまっている。文科省は「ICRPに従って1ミリシーベルトを目指す」と言うが、もしそうならば、「学校にいる間に1ミリシーベルト」ではなく、学校内外を含めた年間トータルで1ミリシーベルトとしなければならない。

● 「学校内に限定」するとしながら、学校給食による内部被ばくの問題は考慮していない。通学時の被ばくはもとより、休み中の被ばく量も「文科省の管轄外」という全く無責任な態度である。

● 「学校内で1ミリシーベルト」ですら、それを超えたときに何らかの措置をとるというものではない。自ら基準を設定しながら、実行できなくてもよしとしてしまっている。
● 1マイクロシーベルト/時という財政支援の基準に関しては、根拠が薄弱であり、これでは1ミリシーベルトを守ることはできない。
● 40 万円以下は財政支援の対象にならないという規定は、市民自身の地道な活動による自主的な除染活動を補助する効果はない。
● 被ばく量の低減のためには、土壌除去以外にも、避難、疎開、夏休みの前倒し・サマーキャンプなどの手段が考えられるのにもかかわらず、それについては支援を行わないということは、大きな問題である。

以上の点から、5 月27 日付文科省の「当面の対応」は、真に子どもたちの安全を確保するものとは言えない。

文科省を含む政府全体の取り組みで、「学校に限定」ではなく、トータルで1ミリシーベルトを基準にすべきである。私たちは、避難、保養、学童疎開などあらゆる被ばく低減策を求めていく。
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