こんにちは。核/エネルギー担当の鈴木かずえです。
避難集合場所は津波危険区域
再稼働審査が進む川内原発(鹿児島県)の避難計画の実地検証を行いました。
そうしたら、住民のみなさんがバスで避難するときの集合場所が、津波ハザードマップの中(上記の地図で赤く表示されている部分)でした。
他の多くの自治体と同じく、薩摩川内市でも、原発事故時には基本的に自家用車を使って避難することになっています。自家用車が使えない人は、バスで避難することになっており、自治会の細かな単位でバスに乗る集合場所が決められています。
薩摩川内市の滄浪地区の倉浦自治会の集合場所は「倉浦バス停前」。ここは原発から5キロ圏。野ざらしのバス停を集合場所にするべきではありません。しかも河口沿いで水面からが4メートルほどしかなかったのです。
これでは津波や川の水があふれたときには集合できません。薩摩川内市が作成した津波ハザードマップの上に集合場所をマッピングしてみると、いくつかの集合場所が、危険区域と一致していました。
10キロ圏の可愛地区でもそうでした。
集合場所に指定されている亀山小学校は海抜4.2メートル。「津波注意! 高台はこちら」のサインが。
津波のときには「高台へ」。原発事故では「川沿いへ」。これでは複合災害のときに、どっちへ行ったらいいかわかりません。
東電福島原発事故は津波・地震との複合災害。ここでも教訓が生かされていません。
いちばんの心配は、家族がバラバラになること
薩摩川内市在住のHさんをお尋ねしたのは午後3時。
もし平日であれば、Hさんはおうちに、上のお子さんは鹿児島市の、下のお子さんは薩摩川内市内の学校に、そして子どもたちのお父さんは会社に、とバラバラです。
「子どもを引き取りに行けない場合は、学校から避難所に連れて行ってくれるというけれど、ちゃんと合流できるかどうかが心配」とHさんは言います。
自宅→学校→鹿児島市の避難所と合計75キロを車で走ってみました。
途中、山の中にはがけ崩れが心配される斜面もありました。
避難計画は住民参加が必須
また、5キロ~20キロ圏の計10名の方にお話しをお伺いすると…。
• 「車で逃げると聞いたが、どこへ逃げるか知らない」
• 「子供を迎えに行き、県外へ避難する」
• 「小学生の子供と親の避難場所が異なる」
• 「高齢のため避難せずに自宅にとどまる」
• 「消防団員なので避難誘導に当たると思うが、自身の被ばくを防ぐ方法や誘導手順について行政からの指示・支援はない」
避難計画には、実際に避難することになる住民のニーズや予想される行動形態が反映されていないことがわかりました。
避難計画は、原発の再稼働する、しないにかかわらず、そこに核燃料がある限り、必要です。住民参加のもと、大幅に改善する必要があります。
自治体に聞いてみよう
あなたの街の避難計画をぜひ、読んでみてください。
そして、疑問に思った点はどんどん自治体に聞いてみてください。
アメリカでは原子力規制委員会が避難計画に責任を持ち、検討し、不十分な場合には原子炉を停止させる権限を持ちます。
日本では各原発の避難計画を審査する国の機関はありません。
グリーンピース・ジャパンは、原子力規制委員会に避難計画を審査するよう求めていますが、誰も審査しないなら、住民みずから審査するしかありません。
今、原発立地各地で、避難計画が市民によって検証されています。
これから、原発地元での「避難計画説明会」が開かれていきます。
でも、いきなりその場で質問をしたり、意見を言ったりするのはちょっと大変ですよね。日頃から自治体の「原子力防災計画」を読んでみることをお勧めします。
そして、わからない点はどんどん自治体の担当の方に聞いてみるといいと思います。
もし、市民の側で学習会をされるなら、講師をご紹介することもできますので、お気軽にグリーンピースの鈴木までご相談ください。
関連資料
プレスリリース「グリーンピース、川内原発の避難計画に関する実地調査を独自に実施―原発避難計画は津波ハザードマップと整合性なし、複合災害考慮せず」
鹿児島県知事あて要請書「住民を守れる避難計画なしで川内原発の再稼働を許可しないことを求める要請書」
報道用資料:川内原発の住民避難について、住民と共に行った独自の実地調査
川内原発 30 キロ圏および鹿児島市の住民 500 人に対する原発再稼働と避難に関する意識調査
* 今回の避難計画実地調査は、行政による避難訓練の住民監視行動に長年参加し、川内原発の防災計画の課題点を指摘している末田一秀氏(原子力災害市民研究会 会員)の協力のもと、実施しました。末田さん、そして、参加してくださった地元のHさん、Mさん、聞き取りに協力してくださった薩摩川内のみなさま、ありがとうございました。
#とめよう再稼働 オンライン署名にご参加を!
再稼働申請が出された原発立地県知事あてのオンライン署名です。
まだ署名されていない方は、ぜひ、ご参加ください。
署名された方は、ぜひ、まわりの方に広めてくださいますようお願いいたします。
原発再稼働をとめるために ― グリーンピースの取り組み
2013年9月16日に大飯原発3,4号機が定期点検のため停止してから、日本で稼働する原発はゼロ。
電気は足りているのに、原発再稼働は必要なのでしょうか?2013年秋までさかのぼって、グリーンピースの原発再稼働反対の取り組みを紹介します。
関連ブログ
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