みなさん、こんにちは。

2月10日にグリーンピースから住友化学株式会社へ送った公開質問書(注1)に対して、2月27日に回答をいただきました。(注2)

同社の、市民団体と対話をする姿勢を歓迎したいと思います。

グリーンピースからは6つ質問をし、すべてに回答がありました。ここでは、主な点をまとめてご紹介します。

 

 

(1) 消費者の意見を聞いていますか?

グリーンピースからは、農薬の使用の量や範囲を増やす申請をするまえに消費者の意見をきいたことがあるかどうか、そして前回パブコメで1600件を超す「残留基準緩和に反対」の声をどう受けて止めているかをききました。(詳しくはPDFの質問2と3をごらんください)

住友化学の回答では、「当社は国による農薬の規制やパブリックコメント制度が、食品の安全性確保や規制の透明性確保に有効に機能していると考えており、この制度を通じて得られた消費者の皆様の貴重なご意見は検討さていただいております。」とされています。 

でも、市民に意見を募集するパブリックコメントは、下の図のように最後の最後です。

 

厚生労働省による図に加筆したもの

農薬メーカー(赤)⇒農林水産省(緑)⇒厚生労働省(青)⇒食品安全委員会(紫)と、進んでくるまで、消費者が意見をいえる機会はないのです。そしていままた厚生労働省(青)へきてパブコメが終わった段階です(赤まるで囲んだところ)。

そして、そのパブリックコメントの声を会社としてどう受け止めているのか、消費者とどう向き合おうとしているのか、という問いに対しては、回答はありませんでした。

農薬メーカーが農薬を売る先は、農薬の関連会社や農協やホームセンター。でもその先には最終的に子どもや妊婦さんを含む消費者がいます。その消費者の声を、住友化学にもぜひ聞いてほしいと思います。

 

 

 

(2)どうして残留基準の引き上げ(高濃度に残留するような農薬の使用)が必要なのですか?

(詳しくはPDFの質問1、質問4、質問5をごらんください)

 ほうれんそうへの残留基準値が高くなってしまうような農薬の使い方をする必要性について聞いた質問(質問4)では、アブラムシが作物を害したり、ウイルスを媒介したりして著しく収量が減ったり品質が低下したりするから、という要旨の回答がありました。

しかし、反農薬東京グループが都道府県にアンケート(注3)を行った結果をみると、クロチアニジンの必要性は疑わしいことがわかります。

以下は、ほうれんそうのアブラムシ対策の農薬(の種類)が現在不足しているか、や、ほうれんそうの適用拡大についての考えに関する都道府県の回答のうち、生産地上位5県(この5県で全国の生産量の約半分を占める)の答えから抜粋したものです:

【千葉県】
薬剤抵抗性の発達を防ぐために、異なる作用機構を持つ薬剤を複数選択できることが必要

【埼玉県】
(アブラムシ対策として、適用可能な殺虫剤が不足しているとは)考えません。

【群馬県】
現状ではアブラムシ対策として十分な殺虫剤があると考えている。ただし、ネオニコ系殺虫剤が使用できなくなると防除が困難になることも考えられる。そのため新たな殺虫剤の登録が必要になると考えられる

【宮崎県】
クロチアニジンの適用拡大について、特に必要であるとは考えていません。

【茨城県】
県として,クロチアニジン製剤の適用拡大を要望はしておりません。

以上、反農薬東京グループによる都道府県アンケート結果より抜粋

 

つまり、現在使える農薬で不足があるというわけではないのです。

それどころか、千葉県、群馬県の回答を見ると、ネオニコチノイド系ではない農薬が必要になる可能性を示唆しています。

住友化学のいうように「アブラムシが害やウィルスをもたらしうる昆虫だ」というのは事実かもしれませんが、「だからクロチアニジンが必要だ」とは必ずしもいえない、ということが上記アンケート結果から見えてきます。この違いに注意が必要です。

ちなみに質問1の回答は、ネオニコ農薬のクロチアニジンをほうれんそうでも使えるようにするために、住友化学が試験を実施したうえで申請したところ、40ppmという残留基準値案を厚生労働省が提案した(申請前は3ppm)。というものでした。

農薬の使用を拡大する必要性が疑わしいのに、申請すれば、農林水産省も厚生労働省も通過してしまう国の制度。「有効に機能している」とはとてもいえません。

わたしたちがもっと農業現場の声を知るためにも、また私たちの声を伝えるためにも、消費者と生産者とが近くなることは、いっそう大事だといえます。

 

(3) ナスやトマト、ピーマン、ゴーヤのように皮ごと食べたり、ホウレンソウなど葉自体を食べる農産物に収穫前日まで直接散布するのはなぜですか

この問に関しては、「毎日収穫する(中略)作物の適期収穫のため、収穫前日まで散布できる選択肢を設けるものです」という回答がありました。(詳しくはPDFの質問6をごらんください)

でも、消費者としては、毎日収穫する作物ならばできるだけ化学農薬を使わないようにする選択肢を充実してほしいものです。新たに化学農薬を使えるようにすることが、農薬を減らす工夫や選択肢を妨げるようでは、本末転倒です。

農薬の利用を最小限に抑えて、上記のナスでは全国一、ピーマンでは3位の生産量をあげている高知県の取り組みを以前のブログ(注4)でご紹介していますのでご覧ください。

 グリーンピースは、消費者と生産者がつながり、生態系に調和した農業がもっと一般的になるよう一緒に活動していきます。

住友化学も、化学農薬ではない農薬(でんぷんや、天敵昆虫など)を販売しています。クロチアニジンのように、ヨーロッパをはじめ各国で規制が始まった農薬の使用を拡大するのではなく、最終的な消費者の声に耳を傾け、有機農業や自然農法に貢献する方向で、メーカーとしての責任を果たして行ってほしいと思います。

 

 

注1 ネオニコ農薬のメーカー住友化学に質問書を出しました。「どうして残留基準値を上げるのですか」

注2 住友化学株式会社からの回答PDF

注3 反農薬東京グループニュースレター274号(2014年6月25日)

注4 虫たちの活躍するWin-Win な農業〜高知県の天敵農法の現地を訪ねました                       

締め切り3月15日「ネオニコの基準緩和しないで!」緊急署名を実施中

このバナーをクリックして署名ページへ。30秒でできます。

 

 

食と農業 についての関連ページ

虫たちの活躍するWin-Win な農業〜高知県の天敵農法の現地を訪ねました

ネオニコ農薬のメーカー住友化学に質問書を出しました。「どうして残留基準値を上げるのですか」

全国の農産物エコラベル、ほんとにエコなの? 47都道府県に聞いてみました!

きのう農薬をまいたホウレンソウ、食べる? 意見を送ろう、ネオニコ残留基準のパブコメ募集開始

アメリカ、ハワイなど野生生物保護区でもネオニコ禁止に〜オバマ大統領令につづくアメリカの動き(2)

「べつの道」は、あなたを待っている:イタリアの小さな村が農薬全廃を決定~日本でも各地で農薬に頼らない試み

ミツバチを守れ!アメリカの国会議員60人が環境保護庁に要求〜オバマ大統領令に続くアメリカでの動き(1)

米シアトルでも、ネオニコ系農薬が禁止に。 世界と逆行する日本

bee my friend ―生産者を訪ねて

ネオニコ系農薬のパブコメ結果発表。引き続き注目を!

ネオニコ残留農薬の基準、またもや規制緩和か? パブコメ出そう!締切は7月31日17時

これでいいの?農薬の空中散布の効果と健康被害--長野県の集会に参加して

アメリカもミツバチを守るための計画づくりを開始へ--オバマ大統領の覚書

ネオニコ系農薬のこと、社長に直接聞いてみました【製造メーカー:住友化学・株主総会 出席報告】

レポート『滴る毒』 まとめ & BeeMyFriend宣言のお知らせ(2014-06-05)

カナダでも農業団体がネオニコチノイド系農薬の5年間のモラトリアムを議会に提言(2014-6-2)

農水省がおかしい? GMOやネオニコ農薬についての座談会(2014-05-29)

パブコメ募集中:新たなネオニコチノイド系農薬の審査が始まっています。(2014-05-27)

次の審査は非公開 ! ―ネオニコ系農薬の食品残留基準の再審議について(2014-05-20)

レポート「消えるハチ」日本語版。まとめてみました。(2014-04-18) 

農薬が気になる野菜は何ですか? アンケートを実施します!(2014.4.16)

オランダ議会は、すべてのネオニコチノイド系農薬の使用禁止を票決。家庭でも使用禁止に。(2014/4/12)

ネコのノミとりにも? 身近にあるネオニコ商品(2014/4/7)

みんなの声が残留基準の緩和をとめています--クロチアニジンの残留基準の緩和が再審議になりました!(2014/4/7)

ネオニコ系農薬の残留基準が、国会でも問題に。(2014/3/13)

韓国でもネオニコ系農薬の禁止、始まっています! (2014/03/12)

ミツバチの大量死に関係するフィプロニル、処理された種子もEUで3月から使用禁止に(2014/3/6)

立ち上がった生産者たち――ネオニコ系農薬の使用禁止を訴え(2014/03/4)

署名12,739筆!ネオニコに反対する署名とメッセージを厚労省に提出しました(2014/2/18)

ミツバチがいなくなったら、いったいどうなるの?(2014/2/6)

残留農薬を増やさないで! 厚労省との緊急交渉の報告&署名を2月13日まで引き続き集めます!(2014/2/3)