こんにちは、食と農業問題担当の関根です。

ネオニコチノイド系農薬の使用禁止と残留基準の規制緩和の撤回を求める署名は、皆さんの熱意により9,235筆が集まりました。ご協力ありがとうございました。今日、この署名を農林水産省に提出し、要請と意見交換をしました。

 

 

[写真]署名は、グリーンピース・ジャパン事務局長佐藤潤一より、農林水産省農薬対策室の瀬川雅裕室長に提出するとともに、ネオニコチノイド系農薬の使用規制、残留基準の緩和の撤回、有機農業の支援強化を求めました。

 

提出のあと、今回同行してくださった、NPOダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、反農薬東京グループ、日本有機農業研究会の3団体の方々とともに、農林水産省に要請・意見交換をしました。

★話し合いの概要をご報告します

 

(1) 予防原則にもとづいてネオニコチノイドの規制をしたヨーロッパのように、日本では規制ができないの?

ヨーロッパでは、ミツバチの大量死の原因にネオニコチノイドが疑われたことから、2年間ネオニコチノイド系農薬の使用をいったんとめる(制限する)と決めて、その間に詳しい調査研究すすめています。

日本で農薬の使用を定めている法律(農薬取締法)ではそういうことはできないのでしょうか。

室長の回答によると、ヨーロッパのような、ネオニコとハチの被害の因果関係が疑われた段階でいったん使用をとめて、詳しく調査をするという仕組みはないそうです。それで日本では、ネオニコチノイドを使い続け、ミツバチの被害を出し続けながら、因果関係の調査研究をしているのです。

予防原則の考え方が取り入れられていないと、このように被害が長く続くことになってしまいます。

 

 

(2) ミツバチの被害調査はどうなっているの?

では、その調査は今どうなっているのでしょうか。

農林水産省によるミツバチ調査は2013年から2015年まで行われる予定になっています。昨年発表された中間報告では、夏に水田にまくネオニコチノイド系などの農薬がミツバチの被害に関連していることを農水省も認めています。昨年の調査の結果は今年発表される予定とのことで、水田に農薬をまく季節になる前の発表をお願いしましたが、時期については明確な答えはありませんでした。

ミツバチ被害に対しても、当面の対策としては、ネオニコ農薬を散布する農家と養蜂家の間でミツバチの農薬への暴露を避けるよう情報提供する、と「農薬ありき」の回答でした。

同席してくれた日本有機農業研究会の田坂さんは、ネオニコに耐性をもつ「害虫」が出現していて、日本でも広がっていることを警告しましたが、室長の答えは「効き目がなくなったら農薬を改良していく」という趣旨。

「農薬ありき」の発想では、「害虫」とのいたちごっこが果てしなく続いていくことになってしまいます。

 

(3) 農薬の使用を制限する方法はどうなっているの?

では、当初予想していなかった害が現れたときに、現在の法律ではどのような使用規制ができるのでしょうか。比較的最近の事例として、過去に実施された方法を聞きました。

それによると、農林水産省から都道府県を通じて、問題の農薬の使用を農家さんが控えるよう「通達」を出したことがあり、それにより、最終的に農薬メーカーが登録を取り下げるという流れとなったそうです。

農薬メーカーにとても遠慮したような、消極的なやり方、という印象です。

ミツバチだけでなく、子どもの脳や神経の発達にも悪影響を与える可能性があると科学者やヨーロッパの食品安全機関が警鐘をならすネオニコ農薬。しかし日本の法律やその運用の方法は、子どもやみつばちよりも、農薬メーカー優先になっていると言わざるを得ません。

 

 

★子どもやミツバチをまもれる仕組みに

こどもや妊婦さんにも推奨されているほうれんそうや、主食のお米をはじめ、日本ではネオニコチノイドに軒並み高い残留が決められようとしていることに対して、署名とともにたくさんの市民からの声が集まっています。

また、ほうれんそうやお米にネオニコを使うことは必ずしも必要ではない、という声が主要な産地の県や農家さんからも上がっています。(注1、注2)

食品安全を担当する厚生労働省との交渉はこれからですが、「農薬ありき」ではなく、まず「食や環境の安全ありき」へと規制の仕組みを変えていく必要があります。

グリーンピースは来月4月にも、ネオニコチノイド系農薬からミツバチと子どもの健康を守れるような法律を求める趣旨の署名を開始し、また子どもの給食での有機食材の利用について調査や導入促進など、より有機や無農薬の農業が一般的になっていくよう活動を続けていきます。

 

注1)ブログ 住友化学からの回答がとどきました〜農薬メーカーもぜひ食べる消費者の声に耳を傾けてください(2015/3/6)

注2)ブログ 立ち上がった生産者たち――ネオニコ系農薬の使用禁止を訴え(2014/03/4)

 

 

☆☆☆ 今、ご寄付が必要です☆☆☆

4月以降に強化していく活動には、調査や活動費用として約300万円が必要です。政府や企業からの支援を受けてない強みによって、今回のように直接、政府へ働きかけることができます。

子どもや、ミツバチをまもる仕組みを作るためにぜひ、ご寄付をお願いいたします。



 

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