みなさん、こんにちは。

食と農業担当の石原です。

前回の行政が支えるオーガニック給食 サンパウロ市の挑戦!!」に引き続き、世界のオーガニック給食をご紹介いたします。今回はイタリアです。

今回もアルゼンチン出身のボランティア、バルビエリさんにリサーチの協力をしていただきました。

 

オーガニック給食に力を注ぐ国、イタリア!

パスタやピッツァを誇る日本人にも人気な美食の国・イタリアは、オーガニック給食に最も力を注いでいる国の一つです。

この国では 、多くの幼稚園・小中学校で一部もしくは全てに有機食材を使った給食が提供されています。

その数は毎日100万人分、年間1億8千万人分と言われています。

学校食堂の平均的な価格は、家庭の収入によって異なりますが、基本的には一食3〜5ユーロ(約400~675円)と言われています[i]。

しかし、低所得の家庭は助成の対象となり、低価格もしくは無料で提供されるそうです。

イタリアでは、学校で給食を食べることは子どもの権利だと考えられているからです。

Cesena

 

始まりはチェゼーナから

イタリアのオーガニック給食は、1986年にチェゼーナから始まりました。

チェゼーナはイタリア北部にある人口10万人ほどの都市です。

野菜や果物に恵まれるのどかな地域で、自治体はかねてより有機農業を推進したいと考えていました。

ちょうどその頃、地域の子ども達の血中コレステロールが上昇している問題が医学者から指摘されていました。

そこで、行政が学校給食をオーガニックに変える取り組みをスタートしたのです[ii]。

このことがきっかけに、有機野菜がたくさん必要となり、地域の有機農業は大きく前進しました。

そして、学校にオーガニック給食を取り入れる取り組みは、イタリア中に広まりました。

Roma

首都・ローマでもオーガニック給食を導入!

現在イタリアの首都ローマでは、年間100万人分の給食が提供されていますが、そのうちの70%は有機食材を使用しています[iii]。

栄養士がメニューの決定に関わっているので、保護者は子供がどんな給食を食べているかを心配する必要がなくなります。

さらに、ローマのすごいところは食材だけではありません。

子どもの健康と同時に、環境に考慮した給食提供を心がけているのです。

例えば、プラスチックの食器はセラミックやガラスのものへ変えられ、学校から自動販売機は撤去されました。

 

学校食堂では、環境にやさしい洗剤を使用する、遺伝子組み換え食品は使わない、フェアトレードの食品を採用するなど、調達に関する様々な決まりがあります。

調達に厳しい規準を設けることで、取引先の企業をよりエコに変えるきっかけとなります。

このように、各自治体はユニークな方法でオーガニック給食の普及に励んでいます。

独自の食糧調達をしている学校もあれば、地元の共同組合に頼っている町もありますが、いずれの場合も地域の農産物にこだわっています。

Organic

 

給食は社会を変える力です!

イタリアの例を通して、学校給食に有機食材を取り入れることは、地域の有機農業の促進に大きく貢献することがわかります。

給食に有機食材を取り入れることで、有機農業に安定した需要を生み出すことができるのです。

例えばイタリアの2009年のデータによると、有機野菜の卸先として全体の26%が「学校給食・その他団体給食」が占めています[iv]。

 

図: 日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産部

Table

安定した卸先があることで、農家が組合などを組織して、有機農業に安定して専念できる仕組みになっています。

学校給食は、有機農家にとって重要な販売先なのです。

 

このように、イタリアではオーガニック給食を取り入れることで、有機農業を発展させ、環境を保全していくことを目指しています。

学校給食が持っている潜在力を示しているとても良い例だと思います。

Lunch

 

日本でもオーガニック給食の輪を広げましょう!

日本でも子どもたちに安全安心な有機給食を届ける取り組みが行われています。

グリーンピース・ジャパンが作成した「ハッピーランチガイド」には、関東地方で有機の給食を提供している幼稚園のリスト、そして、地元の農家さんと協力しながら幼稚園に安全安心なオーガニック給食を広げるためのアイデアがたくさん書かれています。

▼こちらから無料でダウンロードいただけます。

Happy Lunch Guide

 

▼ぜひご寄付でも、この活動を応援してください。

 

【関連ブログ】

>愛媛県今治市を訪ねて~その(1)有機の給食はこうして始まった

>行政が支えるオーガニック給食 サンパウロ市の挑戦!!

 

参考資料

[i] Cristina Grandi, Paola Trionfi and Giuliana D’Agostini, “SUSTAINABLE, ORGANIC SCHOOL MEALS IN ITALY,” FAO/WHO Session on Agricultural Policies, Climate Change and the Impact on Human Wellbeing and Nutrition. Presented at Prince Mahidol Award Conference on Mainstreaming Health into Public Policies Bangkok, Thailand, 28-30 January 2009.

[ii] 同上

[iii] Green Public Procurement, “Sustainable food procurement for schools in Rome.”

[iv] 日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産部 『平成20年度コンサルタント調査:イタリアの有機農産物の現状調査』 発行:2009年3月.