みなさん、こんにちは、食と農業担当の関根です。

2013年5月にEUがネオニコチノイド規制を決め、同年末に規制が開始してから2年あまり。当時なかったデータが次々と発表され、子どもの発達への影響など新たなリスクもわかってきました。

2回シリーズのブログ、今回はEUの決定のあとに発表された主な研究と、他の国や地域での規制、そして日本の現状について、まとめてみました。

 [ハチがいなくなると豊かな食卓も消えてしまう!とうったえるグリーンピースのイベント。イタリア、世界遺産ローマのコロッセオの前で。]

 

【1. EUが禁止を決めた後にわかってきたこと】

2013年12月

ネオニコチノイド系農薬のうちの2種類が、学習や記憶のような機能に関係する神経と脳の構造の発達に有害影響を与えるかもしれない
欧州食品安全機関(EFSA) [1]

2014年6月

「ネオニコチノイドなど(中略)の大量使用が、地球規模の生物多様性に影響を与えている。標的でない生物も(中略)広範囲に慢性的に曝露を受け、(中略)各種の重要な生態系サービスに影響を及ぼしている」
国際自然保護連合(IUCN)のタスクフォース[2]

2015年4月

「ネオニコチノイド農薬が広く使用されていることで、ミツバチ以外のハチや、チョウなどにも悪影響を及ぼす。害虫の天敵を殺してしまうことで、害虫被害を悪化させているケースもある」
欧州連合欧州科学アカデミー諮問委員会(EASAC)[3]

[害虫を食べてくれる役割もあるトンボやスズメの減少にもネオニコチノイド系農薬の影響が関係しているという報告がある]

2015年8月 

「ネオニコチノイド系農薬有効成分を(中略)葉の表面に散布した場合でもハチ類へのリスクがあることを確認した」
欧州食品安全機関(EFSA)[4]

 2016年1月

「花粉を媒介する生物が寄ってくるような作物に、ネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリドが着くと、ミツバチの巣箱自体へのリスクとなる。」
アメリカ環境保護庁[5]

つぎつぎと発表される科学研究の報告を背景に、次に見るように、ヨーロッパ以外の国々でも規制の導入が進められてきています。花粉を運ぶ生物たちをさらし続けないために、早期に規制に着手するという判断をする国や地域が広がっています。

 

【2. 各国の規制は今】

2014年3月

韓国は、EUで禁止したネオニコチノイド系農薬を、EUでのリスク評価が終了するまでEUと同様の規制を開始。 [6]       

2014年9月

アメリカのシアトル市は、市が保有や管理する土地で、ネオニコチノイド系農薬の使用を禁止するという条例を制定。[7]

 [シアトル市。大都市の緑、市営公園でもネオニコチノイドは禁止]

2015年4月

アメリカ環境保護庁は、ネオニコチノイド[8]の新規の登録や、既存の変更を不可とすると発表。[9]

2015年7月

カナダ・オンタリオ州がネオニコチノイド系農薬の使用規制を開始。ネオニコチノイド系農薬[10]で処理したトウモロコシとダイズの種子の植え付け面積を2017年までに80%減らすために植え付けを制限。代わりに化学殺虫剤を使わずに害虫をコントロールする技術の講習を無料で受けられるようにした。[11]

2015年11月 

アメリカ環境保護局(EPA)がネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの使用許可の取り消し命令を出す。[12]  

[アメリカ環境保護庁のウェブサイト・日本で審議中の新種のネオニコチノイドだが、アメリカでは使用許可が取り消された。] 

2016年1月〜

ハワイ州、アイダホ州、オレゴン州、ワシントン州が野生生物の保護区でミツバチへの毒性が強いとされるネオニコチノイド系農薬の使用が1月から禁止になってている。[13]

 

【日本の現状はどうなの?】

ヨーロッパでも、アメリカでも禁止され、販売先がなくなったネオニコチノイド。生態系への悪影響などが明らかになってきたら、日本政府も規制するかと思えば、現実は逆。

ヨーロッパが禁止したネオニコを、日本でもっと広範囲で使えるようにしたり、

子どもや妊婦さんに推奨されるほうれん草の残留基準をめちゃくちゃ高くしたり[14]、

アメリカで使用禁止された新種のネオニコがいま日本で解禁されようとしていたり...[15]。

このままでは、他の国々で禁止されたネオニコチノイド系農薬が日本で大量に売られ、消費者の知らないうちにどんどん野菜や米に使われる、という事態になりかねません。

大切なのは、巨大農薬メーカーの利益よりも環境や食の安全。そのためにあなたの声が必要です!

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ヨーロッパのネオニコ禁止は、いまどうなっているの? ネオニコ規制の今(上)をみる

 

[1]2種類のネオニコチノイドとはアセタミプリドとイミダクロプリド。関連ブログはこちら。EFSAのプレスリリースはこちら

[2] 世界最大の環境NGO国際自然保護連合(IUCN)に助言する科学者たちのグループ浸透性農薬タスクフォースがネオニコチノイド系農薬などの水に溶けて作物に浸透する性質のある農薬の影響について1,121の論文を精査した世界統合評価書のメディア発表資料より

[3]欧州連合の欧州科学アカデミー諮問委員会(EASAC)の報告書 2015年4月

[4]欧州食品安全機関(EFSA)の発表。クロチアニジン、イミダクロプリド及びチアメトキサムの3種類のネオニコチノイド系農薬について。食品安全委員会のサイトで日本語の要約を見ることができます

[5]2016年1月6日アメリカ環境保護庁プレスリリース

[6]関連ブログをみる

[7]関連ブログをみる シアトル市のサイトを見る 

[8]クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ジノテフランの4種類のネオニコチノイド系農薬について

[9]アメリカ環境保護庁の、農薬登録をしようとする業者への通知 2015年4月

[10]クロチアニジン、イミダクロプリド及びチアメトキサムの3種類

[11]オンタリオ州のウェブサイト

[12]2015年11月12日 EPAの使用許可取り消し命令

[13]関連ブログを見る

[14]グリーンピース声明2015年5月 厚生労働省の判断は「子どもや妊婦への脅威」 --ネオニコチノイド系農薬クロチアニジンおよびアセタミプリドの食品残留基準の大幅緩和を受けて

[15] 関連ブログあなたの声を力に!新たなネオニコの解禁を止めるために、パブコメを送ってください