こんにちは、海の環境問題を担当している田中です。

グリーンピース・ニュージーランドは先月30日、ニュージーランド最大手の水産企業シーロード(Sealord)社が、同社のサプライチェーン全体で乱獲の要因になっているFAD(人工集魚装置)を使用したまき網で獲られたツナ缶の販売を2014年初頭までに停止すると発表したことを伝えました。

そもそもFADとは、流木など海に浮かぶ物の下や海藻の周りに魚が集まる習性を利用し、海上に浮かべた人工物のこと。その下に集まってきた魚は大きな網で包囲され、一網打尽に獲られます。FADはその効率性ゆえ世界中に広がり、今やこの漁法によって獲られる海産物の重量は200万トンを超えました。この200万トンというのは、実に東京スカイツリー(36000トン)55本分に相当する数字です。

問題は、まき網を含む大きな網を使用した漁法は獲る魚を選ぶことができないことです。本来漁獲の目的ではない、サメやエイ、ウミガメなどが網に入っても選別し、逃がすことは難しく、多くの場合死んでしまいます。また、一網打尽の漁法では、大人と子供を選別することもできません。商品として価値の低い、次の世代を生む前の子どものマグロを獲
り続ければ、海からマグロが減ってしまうことは明らかです。FADは多くの魚を集めるこ
とによって、目的外の生き物も稚魚も根こそぎ海から奪い取る漁法に貢献しているのです。

グリーンピース・ニュージーランドは2年前からツナ缶ブランドの大手5社に破壊的な漁
法で獲られたマグロの取り扱いをやめるよう働きかけてきました。今回、ニュージーランド最大手の水産企業であるシーロード社がこの決断をしたことは、世界中で行われる乱獲、過剰漁業から持続可能な漁業へとシフトしていく大きな一歩になります。

グリーンピースが行っているこのキャンペーンによって、ニュージーランドだけでなく、世界第2位のツナ缶マーケットを有するイギリスの全ての大手ツナ缶メーカーと大手小売業者が、アメリカの大手スーパーマーケット・チェーンであるセイフウェイ(Safeway)が、FADを使用したまき網で獲られたマグロの取り扱いについて、同様の決定に向けて動きだしています。

日本はマグロの世界最大の消費国です。マグロだけではなく、私たちの食生活に魚は欠かせない存在です。そんな私たちが普段食べている魚が今危機的な状況に追い込まれています。世界の海で、「まだ獲り続けても大丈夫」な水準の漁業資源はわずか13%だといわれています。私たちの食の文化と魚を次の世代に残していくためにも、長期的な視野に立った水産資源管理が必要とされています。

スーパーマーケットに「持続可能な漁業で獲られた魚を買いたい」という消費者の声を届
けてください。消費者の声が企業を変える原動力になります。

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