みなさんこんにちは!マモさんことエネルギー担当関口です。

実はわたし先日、国連大学でIAEAの天野事務局長にお目にかかり、お話しして参りました。そこで、実は大きな収穫があったのです。今日はその報告です!

IAEA?

写真:グリーンピースによるIAEAでの過去の抗議行動から

何度かグリーンピースのブログ等でも触れているIAEA=国際原子力機関。よく覚えていない方のために説明しますと、国連の関連機関の一つで原子力の平和利用を研究したり、原子力機関の安全基準を設定したりする団体です。

実はグリーンピース、このIAEAの天野事務局長に今年になって2回、公開書簡を送っています。書簡の内容は、IAEAが先ごろ発表した『The Fukushima Daiichi Accident 〜Report by Director Genreral〜(福島第一事故・事務局長報告)』なる報告書の内容に関して、ちょっとそれどうなの!?という懸念があったからであります。

天野事務局長への手紙

1通目は5月28日。IAEAが作成した事故報告書の要約版を入手し分析した結果、その内容が福島第一原発事故の現実とその影響を正確に反映せずにむしろ過小評価していることを指摘して、内容を公表する前にもっと福島の住民や専門家の声を反映させるよう、そして対話のためにIAEAの代表者との会見を求めるものでした。 

2通目は9月14日。事故報告書の公式発表を受けて、その内容が1)被曝や住民の健康被害について、2)安全リスクの分析について、3)環境への影響について、重大な懸念を抱かせる内容であることを伝えた上で、「事故による被曝の人体への影響に対して尚早な結論を出さないこと」と、「福島県で実際に起こっている被害者の状況を確かめるために、被害者、弁護団、そして仮設住宅での生活を余儀なくされている人々や、母親グループなどとの会合の場に出席すること」を求めた内容です。こちらの書簡は、グリーンピース・ジャパンだけでなく日本国内の他のNGO3団体(*1)と連名で提出しました。

待てど暮らせど・・と思いきや

2通の手紙の返事を待ちに待ったあげくに気持ちが落ちかけてきた頃、なんと来日中の天野事務局長ご本人が、10月8日の国連大学の対談イベントに登壇するという情報が舞い込んできました。

「返事がないなら、こっちから行くしかないでしょ!?」てなことで、グリーンピース・スタッフ4人で行って参りました!

マモさん事務局長に会う

さあいよいよマモさんの前に天野事務局長が!持参した手紙のコピーと事故報告書へのグリーンピース分析レポートを手にご挨拶。

マモ「グリーンピースから参りました。過去2回、お手紙を差し上げましたが…」

すでにお送りしている手紙ですから、再び手渡そうとしてもお受け取りにはなりません。

天野氏「手紙は拝見しました。お返事はしていませんが、ご指摘の内容に関しては、報告書の中に既に私の意見が反映されています。」

マモ「(つれないなー… てか答えにはなってないし…)」

 

写真:天野事務局長に手紙を再度手渡そうとするマモさん

てな具合だったのですが、実は大きな収穫がありました!天野事務局長はこのようにも言われたのです。

「もしも対話の場や住民の方々とお目にかかる機会が設けられるなら、私は喜んでその場に出向いていきますよ。」!!!(注:実際のやりとりは英語です) 

天野さん、聞きましたよー!言ったからには断れないはず。ということで、今後こちらとしてもその機会を実現していきたいと心に刻んだ帰り道。 

大切なのは人々の生活?それとも原子力産業?

IAEA報告書の内容と懸念事項に関しては、ぜひ下記のブログやプレスリリースをご覧ください。IAEAは「原子力平和利用の推進」を使命の一つに掲げる団体です。ですから、原子力産業の維持と発展を重視するのは団体としては当然でしょう。 

しかし、今だに12万人もの人が避難生活を強いられ、福島県では甲状腺がんの発生件数の増加も報告(*2)されています。IAEAは事故直後の住民の被ばく量などについて正確な情報がないことを認めながらも、まだ時期尚早とも言える現段階で「健康に影響なし」と結論づけてさえいます。未だに実質的には安全神話を補強するような報告書の内容によって、不当に福島第一事故の現実が過小評価されてしまうことは、あってはなりません。

写真:飯舘村にて 

来年は東京電力の福島第一原発事故発生から5周年。そしてチェルノブイリ事故から30年の年になります。 時の経過とともに、”原発安全神話”の再構築を図ろうとする原発産業と政府。それを止められるのは、中立な立場での調査と、それに基づいた”原発はいらない”という市民の声です。

この節目の年にあたって、私たちグリーンピースでも、原発事故の被害とその影響の真実を明らかにする活動を続けていきますっ!

あなたも、署名で声をあげてください!

*1 
9月14日の書簡には、フクシマ・アクション・プロジェクト、グリーン・アクション、原子力資料情報室に連名をいただきました。
本年10月8日に、岡山大学津田教授のチームが外国人記者クラブにて会見を行い、国際環境疫学会の医学雑誌にレポートを発表しました。被ばくと甲状腺がん増大の関係について結論づけること自体は未だ議論の余地が残されていますが、津田教授の報告する発生件数とそれをスクリーニング効果で説明できないとする結論には耳を傾ける余地が十分にあると考えられます。
http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Detection_by_Ultrasound_Among.99115.aspx#
 

IAEAに関連するグリーンピースのブログやプレスリリース:

2015/09/14 プレスリリース:IAEA福島報告書は福島原発事故の影響を過少に評価するもの ――グリーンピースらNGOが警告

 

原子力推進が目的?IAEA「福島原発事故報告書」 天野事務局長、被害者の声を聞いてください。

 

グリーンピースがIAEAの未発表「福島第一原発事故レポート」を独占入手・Webで公開