2016/01/26 原子力規制庁、新規制基準違反の有無未確認――高浜原発でのケーブル分離現場検査は1カ所

プレスリリース - 2016-01-26
国際環境NGOグリーンピース(東京都新宿区)とグリーン・アクション(京都府京都市)は、今日、原子力規制委員会は、関西電力高浜原発のケーブル敷設の分離について、有無が未確認として非難しました。1月21日に参議院議院会館で行われた集会で、原子力規制庁の職員は市民からの質問に対し、高浜原発3、4号機に基準違反があるかどうかわからないとしました(注1)。関西電力は、福井県若狭湾沿岸に位置する高浜原発3号機を1月29日にも再稼働させる予定です。

安全上重要なケーブルは、火災の際、延焼などを防ぎ、電源の喪失などにいたらぬよう、他のケーブルとは分離させなければなりません。さもないと最悪の場合、原子炉冷却が正常に行われず、メルトダウンなどの過酷事故につながる可能性があり、新規制基準で分離が明文化されました。原子力規制委員会は日本のすべての原子力発電所にケーブル敷設の問題についての調査を指示し、今年3月末までの報告を求めています。しかし、高浜原発と川内原発は除かれています(注2)。安全上重要なケーブルの分離は、国際的に(注3)、1970年代から(注4)最も重要なことと認識され、現場確認も行われてきました。日本の原子力規制は、その認識の面で世界から数十年遅れています。2013年、原子力規制委員会は、福島原発以降の新規制基準で初めてケーブルの分離を明示し、使用前検査でも確認することとしました。

グリーンピースのグローバル・シニア・エネルギー担当のケンドラ・ウルリッチは「原子力規制委員会のやり方は許しがたく、燃料パイプと他の系統の混在が未確認のまま、満員の旅客機を離陸させるようなものです。もし、ケーブルが混在のままで事故になれば、電源やパックアップ安全システムが同時に機能を失うこともあり得ます。住民には、再稼働で命が危険にさらされる前に事実を知る権利があります」と批判しました。

原子力規制委員会は、2015年3月に高浜原発の新規制基準適合について、関西広域連合に説明をし「系統分離方針を確認」したとしました(注5)。関西連合は関西の府県など自治体で構成され、これまで、規制のあり方や再稼働プロセスなどについて問題提起をしており、構成自治体内の住民は2100万人にもなります。原子力規制委員会は個々の自治体や福井県にも同様の説明をしていました。2015年4月、福井地裁は新規制基準が緩やかに過ぎるとして高浜原発3、4号機の再稼働を差し止めたました。関西電力はこれに不服を申し立て昨年12月に不服が認められましたが、住民側は即時に抗告しています。

グリーン・アクション代表のアイリーン・美緒子・スミスは「原子力規制委員会が、関西広域連合に、関西電力が規制を遵守していると説明した事実は、実際には、方針の確認であり、現場でして実行されているかどうかは確認できていません。それでは規制にもならないし、関西広域連合をあざむく行為で、原子力規制委員会は不誠実です。高浜原発3、4号機の再稼働適合審査は昨年夏に終わっているのにもかかわらず、まだこの問題で確認がとれていないのか? いないなら、なぜでしょうか」と疑問を呈しています。

なお、IAEA(国際原子力機関)は22日、日本の原子力規制についての暫定報告書を発表し、検査制度の見直しを求めていることを明らかにしました。

参考:グリーンピース・ブリーフィングペーパー「原子力発電所でのケーブル分離問題――日本の原子力規制の重大な欠陥」(2016年1月26日発行)

注1) 原子力規制委員会にあてて、「高浜原発3・4号の原子炉起動は中止し、川内原発1・2号は運転を停止したうえで、ケーブル不正敷設問題について、他の原発と同様に詳細な調査報告等を提出させること」を求める署名が提出されている。署名呼びかけ団体:川内原発30キロ圏住民ネットワーク/反原発・かごしまネット/福井から原発を止める裁判の会/避難計画を案ずる関西連絡会/グリーン・アクション/アジェンダ・プロジェクト/NPO法人使い捨て時代を考える会/美浜の会/FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会/グリーンピース・ジャパン/脱原発はりまアクション/被ばく医療を考える会かごしま/川内原発建設反対連絡協議会

注2) 原子力規制委員会は、昨年12月、少なくとも柏崎刈羽原発の全機、福島第二の3,4号機、浜岡4号機、志賀原発1号機、女川3号機、東通1号機の計13機でケーブル敷設不正があったことを認めた。

注3) IAEA 文書:Protection against Internal Fires and Explosions in the Design of Nuclear Power Plants, IAEA Safety Series, Pages 46-48

注4) 米国原子力規制委員会文書:Fire Protection For Nuclear Power, October 2009 Revision 2, U.S. NRC Regulatory Guide 1.189 (Draft was issued as DG-1214, dated April 2009) 


注5) 原子力規制委員会 関西広域連合への説明資料

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

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