たまには裏話を二つ。
前回の「国民を守れない自衛隊」で触れた防衛省の防衛庁降格案、その後もあまりに杜撰な対応が続くので、グリーンピース・ジャパン(GPJ)として正式な声明を出そうかと文案まで練り、タイミングを見計らった。
迷いもあった。現在、GPJでもGP全体でもアクティブな平和/軍縮キャンペーンを展開しているわけではないし、一番胸が痛いのは吉清父子が行方不明のまま、生存の可能性がきわめて低いことだ。それでも万に一つの奇跡を祈りたいが、犠牲者が出た事件をキャンペーン的に利用することには疑問符がつく。
そのうち、親族を含む勝浦漁協の漁師たちが政府の対応を評価するメッセージを発しはじめた。これでメディアも追及の手をゆるめ、GPJの声明もいまひとつ出しにくくなった。有権者・納税者として政府の手綱をとることと、情の世界とは一線を画すべきだと思うが、事故の直接の関係者をさておいて、あまり跳ね上がった主張をしても理解は得られない。とりあえず声明はボツ!
もう一つ、国会の焦点となっている道路特定財源をめぐり、「59兆円を自然エネルギーに使ったら!」という問題提起キャンペーンを検討した。これから10年間に59兆円を注ぎ込んだとしたら、何ができるか考えてみてほしい。話を単純化するために、このお金をすべて風力発電に集中したとする。いま国内で建設されている標準的な風車は出力1,500kWで、建設費は1基あたり3億円程度。つまり、59兆円あったら20万基近く、3億kWの発電容量が増設できるわけだ。これはじつに平均的な原子炉(出力100万kW)の300基分に相当する! ただし設備利用率を3分の1と考えて、風力で原発100基分としよう。日本では現在、55基の原発が30%あまりの電力供給を担っているとされるから、少なく見積もっても風力だけで国内需要の半分以上を満たせることになる。
以上はあくまでも極論で、実際には59兆円を風力・太陽光・地熱・小水力・バイオマスをはじめ幅広い自然エネルギー源に効果的に配分するし、グリーンピースの「エネルギー[r]eボリューション」が指し示すようにエネルギー利用効率の飛躍的向上にも使われ、当然、普及や規模拡大につれて大幅なコストダウンも起こるだろう。いっぽうでは、たとえば大型風車を建てられる適地は限られていて、一定の歯止めもかかる。しかしごくアバウトに推算して、59兆円の道路特定財源を自然エネルギーと省エネに振り向ければ、日本の電力需要の大半か、場合によってはすべてをまかなえそうだ。発電に原発も石炭も、ひょっとしたら石油も天然ガスもいらない。文字どおりエネルギー革命ではないか! 環境税・炭素税のシステムと組み合わせたり、初期投資の呼び水として使ったりすれば、効果はさらに何倍にも増幅させることができる。
そんな理屈で、国会やメディアの論議に一石を投じようと思ったのだが、ここでも少し迷いがあった。というのは、GPJの気候変動/エネルギー問題キャンペーンは今年から再起動したばかりで、まだ肝心の自然エネルギーとエネルギー効率化の担当スタッフが見つかっていない。原子力と化石燃料の担当が一人二役で必要最小限の準備中だが、専門キャンペーナー不在のままアバウトすぎる議論を吹っかけると、核・自然エネルギー・気候変動の分野で築いてきたグリーンピースの信頼性を傷つけるおそれがあるからだ。
そうこうしているうちに国会会期末も迫り、期間限定の緊急キャンペーンにせよ、いささか時間が足りなくなってきた。キャンペーンの陣容が整ってフル稼働している状態なら、なかなか面白い山場がつくれたのにと悔やまれる。早くそういう態勢ができるように、自薦他薦を問わず「エネルギー・ソリューション・キャンペーナー」求む!*
* http://www.greenpeace.or.jp/info/staff/recruit/jobce_html 

●ついでに、5月から開始するテレフォン・コミュニケーターも募集中(GPJ事務所からの募集ではありませんが……)

http://www.greenpeace.or.jp/info/staff/recruit/jobtel_html