グリーンピースジャパン、広報担当の城野千里です。
7月11日、東電福島原発事故 のあと福島県から母子避難中の 森松明希子 さんが、参議院東日本大震災復興特別委員会(略して復興特、ふっこうとく)で、参考人として意見を述べました!
私、生まれて初めて国会に入り、国会議員や参考人のやり取りを傍聴しました。
復興特には、全部で40名ほどの国会議員がいます。傍聴席から、最初から最後までほぼ寝ている状態の議員も見えました。
森松明希子さん(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream<サンドリ>代表)は、3月にスイス・ジュネーブでの国連人権理事会本会合で、事故被害者への日本政府の対応の改善を求めて、グリーンピースとともにスピーチを行った方です。
森松さんの他に、原発事故避難者の支援を行っている「避難の協同センター」世話人の熊本美弥子さん、「福島12市町村の将来像に関する有識者検討会」座長の大西隆豊橋技術科学大学学長、特定非営利活動法人宮城歴史資料保全ネットワーク事務局長の佐藤大介東北大学准教授、も参考人としてお話されました。
森松さんや熊本さんといった被害当事者の復興特への招致は、市民社会がかねてから求めていたものが、ようやく実現したものです。
委員会は、3時間20分の長丁場でした。まず、4人の参考人が15分ずつ意見を述べました。そして、各会派から全部で9人の国会議員が参考人に質問をしました。
森松さんは最初の15分の陳述で以下のように訴えました。(グリーンピースまとめ)
「当事0歳の娘は父親との暮らしを知らぬまま7歳に」
わたしの夫は、郡山市でいまも仕事をしており、わたしと二人の子どもは、大阪府に住んでいます。なぜ、母子だけで避難をしているかというと、私の住まいは強制避難の避難指示がおりなかった「区域外」だからです。
事故当時0才だった娘の年齢がそのまま、避難生活の年数です。娘の父親は、子どもたちの成長をそばで見守ることができずにいます。
私にとって、事故後もっとも衝撃だったのは、事故の1か月後、東京の水道水から放射性物質が検出されたというニュースです。福島第一原発から200㎞も離れている東京で放射性物質が検出されて、60㎞の郡山の水が汚染されていないはずはありません。
実際、翌日には、福島市や郡山市などの水も汚染されていると報じられました。地域の住民が汚染された水を飲み、また、その水を飲んだ母親の母乳を赤ちゃんに飲ませるという過酷な決断を迫られたことも知られていません。
私たちは、被ばくという事実と現実の恐怖にこの7年間さらされています。
少しも被爆したくない思いは誰でももっていい権利、基本的人権だと思います。そして、避難するという選択も、誰にも認められていい権利ではないでしょうか
原発事故避難者は、国内避難民として国家の保護の対象です。国連人権理事会が日本政府に対して勧告した、「国内避難民に関する指導原則」の立法化を求めます。
いつ、誰が、どこで「国内避難民」になるかわからない日本
質疑応答に入り、国会議員がそれぞれの参考人に質問をしました。いろいろと興味深い質疑応答がありましたが、ここでは、森松さんへの質問をお伝えします。
国民民主党の藤田幸久議員からは、国連人権理事会におけるメキシコとポルトガルからの勧告について説明を求める質問がありました。
森松さんは、ポルトガルからの「国連国内避難民に関する指導原則」は日本では今までなかったが今回、外務省が和訳することになったことを紹介しました。そして、メキシコの核被害に関する医療サービスへのアクセスを保障するという勧告について、国が責任をもって制度をつくってほしい、今行われている県民健康調査も国の責任で行ってほしい、と要望しました。
藤田議員は、本件を自らも所属する「外交防衛委員会」でもフォローするとしました。
立憲民主党の川田龍平議員からは、20年も前に国連でつくられたIDP原則が日本では対応されていない、やらなければならないことをしっかりやっていきたいという発言がありました。
共産党の岩淵友議員議員から「森松参考人は国連でスピーチされていますが、日本政府の対応について、海外での受けとめはどうでしたか?」と質問がありました。
森松さんは、日本は、広島、長崎への原爆投下を経験した被ばく国」というところを、みなさん意識されていたと思います。それがメキシコの核被害者の医療サービスという勧告につながったのだと思います」とし、また、フランスで講演をしたとき、フランス人で事故当時東京に住んでいたという女性が、フランスが国外退避を呼びかけたため、日本を去ったことを気にしていてくれていたことに触れ、「彼女もまた母親で、ずっと見守ってくれていたんだということをありがたく思いました」と話しました。
被災地での医療サービスの整備に注力する石井苗子議員からは、「何があったら、福島に戻ろうと言うお気持ちになっていただけるのか?」との質問が。
森松さんは「なにがあったら帰ってくれるのか、ではなくて、どんな被ばく防護を考えましょうか、という質問だったらうれしいのですが」として「県民健康調査を国家として行ってほしい、2年に一回ではなく、毎年、そして20歳を超えると5年に1回となるのではなく、きめ細かく実施してほしい」と答えました。
自由党の山本太郎議員は、残った人にもケアが必要だと思うがどうかと問いました。
森松さんは、残った人にも戻った人にも、被ばくを回避する権利があり、現在問題になっているモニタリングポストの撤去(参考)はおかしいし、土壌汚染の情報も提供すべきだと答えました。
現在、西日本で大変な豪雨災害が起こっています。また、2年前には熊本地震が起こり、いまも多くの被災者の方が避難生活を余儀なくされています。
自然災害の多い日本では、いつ、誰が、どこで「国内避難民」になるかわかりません。
森松さんは、これらからの「国内避難民」のためにも、「国連国内避難民に関する指導原則」の立法化を、繰り返し議員に求めました。
区域外避難者の実態調査を(熊本さん)
「避難の協同センター」世話人の熊本さんは、区域外(自主)避難者の窮状、それがさらに深刻化していること、だからこそ区域外避難者の実態調査が必要であることを訴えました。
7月11日の東日本大震災復興特別委員会は参議院インターネット審議中継 からごらんになれます。(上記の写真も参議院WEBTVより)
グリーンピースは、これからも、被災者のみなさんといっしょに、国連人権理事会で出された勧告を日本政府が実行するよう、はたらきかけをおこなっていきます。
グリーンピース・ジャパン 広報担当 城野千里
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