こんにちは、核・エネルギー問題を担当している鈴木です。


7月29日、原子力損害の賠償範囲についての中間指針案が出る、12回原子力損害賠償紛争審査会を傍聴しました。

しかし、配布された「中間指針案」には、自主避難の補償が入っていませんでした。

審査会会長を務める能見善久学習院大教授は会合の中で、
「避難指示の外で生じる損害をどうするか。避難区域外の方については、現状指針外です。
避難指示等にかかる損害、その範囲にはいる人ということで区切っているが、避難区域外で生じる損害をどうするか。ぜひ、みなさんのご意見を伺いたい」ときりだして、30分弱ほど議論になりました。

中島肇委員(桐蔭横浜大学法科大学院教授/弁護士)は、
ものについては出荷制限以外に風評被害も賠償の対象となっているが、人については避難指示が出ている地域以外には広げていないことは問題だとし、農産物と同じように、回避行動が合理的であれば、同じように予防原則の考えで、回避した方をどうするかを考えるべきとしました。

田中俊一委員(財団法人高度情報科学技術研究機構会長)は、
自主避難についても賠償する基準を国なりが考えるべきではないかと示唆しました。

大塚直委員(早稲田大学大学院法務研究科教授)は、
避難区域のすぐそばの方や、お子さんとかいれば気持ちはわかるとして、(積算線量が)20ミリシーベルトの近くの人に何も払わないのは問題として、20ミリシーベルト外の方(=避難区域外の方)に全額ではなくて一定の額を出すという議論もあるのではと提議しました。

鎌田薫委員(早稲田大学総長早稲田大学大学院法務研究科教授)は、
賠償される範囲を決めるのは指針の役割でなく、またすべていれようとすると時間がかかりすぎるとしましたが、指針に書かれていないと賠償しないととらえられると困る、と懸念を表明しました。

草間朋子委員(大分県立看護科学大学学長)は、
(賠償の範囲は)国、自治体の指示があった地域とすることを、「早く対応」するためとして主張しました。

結局、結論は出ず能見会長は、「無視していい問題ではない」として次回も引き続き議論することとなりました。

審査会第12回開催に先立つ28日、枝野幸男官房長官は、原子力損害賠償紛争審査会には「自主避難の方一律というのは難しいと思うが、相当因果関係のある自主避難者の対応は、早く対応を決めてほしい」とし、検討を急ぐよう求めています。けれど、審査会は「政府で決めてほしい」という方向でした。

政府も、審査会も、自主避難者や希望者を救う力があります。積極的に考えてほしいです。


日弁連は「放射線管理区域」以上は賠償をという見解を発表しています。http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110713.html

福島県は「原子力災害が収束していない中(略)、避難等指示区域外の住民が安心を求めて避難することは妊婦や子どもを持つ親はもとより、すべての県民にとってやむにやまれない行動であることから、政府による非難等の指示区域外の住民の自主的な避難経費についても、確実に賠償等の対象とすること」と政府に要望しています。
http://www.pref.fukushima.jp/j/youbou230514.pdf 


8月5日に中間指針がまとめられます。

グリーンピースでは、「子どもを放射能から守る福島ネットワーク」「福島老朽原発を考える会」「国際環境NGO FoE Japan」と共同で、委員の方に手紙を出しました。

みなさん、ぜひぜひ「自主避難にも賠償を」と声をあげてくださるようお願いします。
次の審査会までに、新聞に投書したり、ツイッターのメディアアカウントなどに向けて意見をつぶやいてください。