ゴールデンライス。漢字で書くと「金の米」。響きは一見キラキラして良さそうなのですが、つまり「遺伝子組み換えイネ」のことです。

 

このゴールデンライスには、ビタミンAの原料となるβ-カロテンが多く含まれ、メーカーは、発展途上国における健康問題、特にビタミンA欠乏症の解決になると主張していますが、いろいろな理由から物議を醸しています。

フィリピンで商業栽培についての議論が過熱していますが、このゴールデンライスは20年以上にわたって開発が続けられてきたにも関わらず今現在まだ商業化に至っていません。この主な原因として遺伝子工学の複雑さが指摘されています。

β-カロテンがどのように植物内で生成されているかなどの正確なメカニズムは理解されておらず、遺伝子工学上の複雑な操作が予測不可能な効果をもたすため、食品の安全性に影響を与える可能性もあります。



■人体への安全性が保障されていない
ゴールデンライスに含まれるβ-カロテンがビタミンAに変換される際に使用される化学経路はわかっていません。ゴールデンライスのみからβ-カロテンを摂取する場合、通常の摂取量の12倍をまかなわなければなりません。実際、ビタミンA欠乏症が深刻な地域では、他の栄養素も不足傾向にあります。これらの地域ではもちろん、β-カロテンをビタミンAに変換するために必要不可欠な脂肪の摂取も難しい事になります。これではいくらβ-カロテンを多く含むゴールデンライスを普及させても意味がありません。

副作用の問題
β-カロテンを大量摂取した場合の副作用も考慮しなければなりません。特に喫煙との同時摂取は人体に悪影響を与えます。また、ビタミンAへの変換過程で人体に有害な副産物が生成される可能性もあります。

 

生態系への影響
遺伝子組み換え作物自体が、伝統的な品種、在来種、野生および雑草などの在来種と交配し予測不可能な変化を遺伝子に起こす事があり、文化、農業、環境への脅威となる懸念を高め、潜在的に食料安全保障に影響を及ぼします。

ゴールデンライスは必要でもなければ、不可欠なものでもない
ゴールデンライスの開発に使用された数千万ドルは、より効果的な解決策の開発に費やす事ができたのではないでしょうか? またゴールデンライスに注目するあまり結果的に、他のより効果的な解決策への研究から議題をそらせる事になるのではないでしょうか?

もしゴールデンライスが大規模栽培された場合、ビタミンの豊富な野菜よりも一種類の主食をもとにした食生活を奨励する事になり、栄養失調を悪化させ、結果的に食料安全保障を弱体化させる事となります。

 

▼ゴールデンライスについて詳しくまとめたレポートはこちら(英語)