こんにちは。女性がつながり変えていく――グリーンピースのプロジェクト「グリーン・ウィメンズ・ネットワーク」担当の金繁(かなしげ)です。

日本でも市民がつくる発電所が各地で始まっているのをご存知でしょうか?
今年5月には地域主導で自然エネルギーを広めていく「全国ご当地エネルギー協会」が発足しています。その近畿地区の幹事もつとめていらっしゃる「宝塚すみれ発電」(兵庫県宝塚市)の代表取締役 井上保子さんに、お話を伺ってきました。

市民運動から行政を巻き込んで発電事業へと発展させ、市民と行政が「協働」して自然エネルギーを推進する。井上さんたちの活動には、暮らしや命を大切にした地域づくりへのヒントがたくさんありました。

30年以上前からつづくネットワーク

1979年の米国スリーマイル島原発事故を発端に、宝塚市にお住いの井上さんが「原発の危険性を考える宝塚の会」など、食べ物に関する活動を仲間と続けて30年余り。ご自身より年上の女性たちの助けを得ながら、一緒に活動を続け、ネットワークができあがってきたと言います。

福島の原発事故をきっかけに

そして2011年、福島第一原発事故が発生。
仲間とともに、宝塚市議会に「自然エネルギーでまちづくりを」と請願を提出したところ、その声が届き、2012年4月、宝塚市に新エネルギー推進課が設置されました。
この動きに合わせて、井上さんと仲間はNPO法人「新エネルギーをすすめる宝塚の会」を設立。会のみなさんは、自分たちの手で太陽光パネルを設置し、2013年1月に市民発電所「宝塚すみれ発電所第1号」(出力11,16キロワット)が動き出しました。同年11月には、さらに出力の大きな2号機(同47.88キロワット)も設置されました。井上さんは、資金も人も、「ネットワークの中から自然に集まった」と言います。

また、給食の放射能測定を求める請願書を市議会に提出したところ、これも採択されて、宝塚市は測定器を購入し、今も定期的に測定しているとのことです。

行政との話し合い、最初は喧嘩ばかり?!

行政とのやり取りが順調に進んだように見えるこれらの取り組み。実は、最初は喧嘩ばかりだったそうです。
「私らが市役所を出た後、塩まいてたんちゃうか?と思うくらい」と笑いながら話す井上さん。それでも、「これをやりたい」という気持ちを持って話し合いを続け、行政を巻き込む努力をしていくうちに、市役所の人たちが耳を傾け、手伝ってくれるようになったそうです。
いったん、行政が連絡役になってしまえば話が早い。「次はこんなことをしたい」と市役所に相談に行くと誰かを紹介してくれたり、イベントでブースを設置させてくれたり...そういったことを契機にさらに知り合いが増え、そしてネットワークが広がる、という好循環ができあがりました。

今や、喧嘩ばかりだった市民と行政が補完し合い、「協働」する理想的な関係になりました。「(市民と行政が)いつの間にか仲間うち」になっていた。そうであってこそ、まちづくりは可能だと井上さんは振り返ります。

市民と行政が協働するまちづくりを

この6月には、市議会で「宝塚市再生可能エネルギーの利用の推進に関する基本条例」が採択されました。そこには、自然豊かで素晴らしい環境を将来の世代に引き継ぐために、市民と行政が力を合わせていこうという思い、そしてこれまでの行動が結実しています。市民と行政が思いを共有し、同じ目標に向かって一緒に歩み始めているのです。

「これから市民発電を始めたい」と思われる方は、「宝塚すみれ発電」の見学会(月に1回)に参加されてみてはいかがでしょうか?お申込はこちらから

 

 


 


「グリーン・ウィメンズ・ネットワーク」とは?

3.11以降、世論調査では常に女性のほうが男性よりも脱原発を望んでいることが明らかになっています。一方で、日本は男女間の格差が世界135ヵ国のうち105位(*)と、世界の中でもっとも男女平等が遅れている国のひとつで、政治経済に関する意思決定の場で女性の声はほとんど反映されていません。
女性の声をネットワークの力でより大きく政治や企業に届ければ、脱原発をはじめとする環境問題はより早く、より多く解決できるはず。グリーン・ウィメンズ・ネットワークはお話会やメルマガを通じてつながりをつくっていきます。

「グリーン・ウィメンズ・ネットワーク」にご登録いただくと、地域社会を変える女性たちの活動紹介やイベントなどの情報を掲載したメールマガジンをお送りします(月1回程度)。ぜひこちらよりご登録ください。

* 世界経済フォーラム 「男女格差報告」2013年より