こんにちは、エネルギー担当の高田です。

前回に引き続き、石炭の話題です。

日本がインドネシアに建設を進めている石炭火力発電所について、 10月までインターンをしてくださった久保さんからの報告です。


こんにちは。

マレーシアと中国に15年間滞在した後に帰国し、グリーンピースでインターンをしている久保です。マレーシアはインドネシアに近いため、とても親近感が湧き、今、インドネシアで何が起きているのか、何に困っているのか気になりました。

住民反対の石炭火力発電所を、日本が輸出?

みなさん、知っていましたか?

今、日本政府と日本企業によって進められているインドネシアでの大規模な石炭火力発電の建設計画。この計画に地元のインドネシア住民は反対の声をあげているんです。

私は、このことについて、まったく知りませんでした。 そこで、9月にNGO合同の公開セミナー「日本の石炭火力輸出にNo!インドネシア現地の声から日本の方針を問い直す」に参加してきました。


ビデオ:公開セミナー「日本の石炭火力輸出にNo!インドネシア現地の声から日本の方針を問い直す」の様子

問題となっている石炭火力発電所は、インドネシアのジャワ島の中央バタン県の5つの村(ウジェンネゴロ村、カランゲネン村、ポノワレン村、ウォノクルソ村、ロバン村)に建設が予定されており、その地域住民に立ち退きを命じています。この建設計画は、日本企業の伊藤忠商事と電源開発(J-Power)が推進し、安倍首相もインドネシアを訪れ、支持を表明しています。(詳しくはこちら

なぜ石炭火力発電?


セミナーには、30〜40人が来場。会場には、仕事帰りのビジネスマンや学生さんの姿も。

今回のセミナーには、その対象地域の出身、ポノワレン村の住民リーダーのタリュン氏と、カランゲネン村の住民リーダーであるロイディ氏が出席しました。

彼らの話で印象的だったのが、住民の人権が侵害されているということ。

石炭火力による発電は、二酸化炭素や有害廃棄物を排出、気候変動の原因となり、私たちが住んでいる地球の環境破壊につながります。それにも関わらず、インドネシア政府が日本企業と計画を押し進めようとしているのは、急激な経済成長による電力不足への心配があるから。

インドネシアの経済成長は世界的にも注目されています。そのため政府は、成長し続けるために電力需要を増加させ、働く場所を提供するため石炭火力発電所の建設を進めようとしているのです。

しかし、なぜ石炭火力発電なのでしょうか。いま、世界中で自然エネルギーによる発電プロジェクトが次々と生まれています。これから何年もかけてつくるのに、石炭火力は時代遅れなのでは?と思ってしまいます。

「自然豊かな農地ときれいな水を生かせ」地元住民の声

バタン県の建設予定地には、豊かな自然ときれいな水が残されており、人々は自然と共存して今まで生きてきました。そんな中、火力発電所ができれば、そうした暮らしが奪われ、地域の環境も破壊されてしまうでしょう。

バタンの住民たちは、自分たちが暮らす自然豊かな農地ときれいな水を生かすことが地元の発展につながると考えており、それを強く主張しています。

農地が守られれば、豊かな環境だけでなく、住民の雇用も守られます。また、石炭火力ではなく、自然エネルギーでエネルギー供給をできるようにすれば、地域の環境を活かしながら、雇用を増やすことにもつながるのではないでしょうか。農業とエネルギー供給という2つのフィールドで、地域に雇用を生み出すことができると思います。

立ち退き要求に屈しない住民たち

ところが、インドネシア政府と、日本政府および日本企業は、巨大な石炭火力発電所計画を遂行すべく、住民に立ち退きを要求しています。

立ち退きを進めるために、あらゆる手段で、圧力がかけられたり、脅されたりすると住民たちは訴えています。 例えば、反対派の勢力を弱めるために政府と警察が結託して住民に圧力をかけたり、村の出身者でない人を会議に招くことで賛成派を多くし、反対派を封じ込めようとしたり・・・
政府や警察、関連する日本企業は「自分たちは関与していない」と言うかもしれませんが、少なくとも、現地では人権を侵害する行為や立ち退きなどが行われていることは事実です。

今回来日したインドネシアの住民たちは、帰った時に何をされるかわからないという恐怖を抱えながら、日本にやってきました。それは、私たち日本人に、今彼らの地元で起こっている、日本政府と日本企業が関係する問題を一人でも多くの人に知ってほしいという思いからです。

このブログを通じて、彼らの声が一人でも多くの人に伝わることを願ってやみません。

 


 

公開セミナー「日本の石炭火力輸出にNo!インドネシア現地の声から日本の方針を問い直す」は、以下の団体によって開催されました。

【共催】インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan

【協力】アジア太平洋資料センター(PARC)、A SEED JAPAN、オックスファム・ジャパン、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)