寒い日が続きます。皆様いかがお過ごしですか?海洋生態系担当の吉野良子です。今日は、いつもと少し視点を変えて、プラスチック問題についてお伝えします。 (*2018年5月23日更新)
Copyright: Poldhu Beach Watcher/BBC News
太平洋に浮かぶプラスチックごみ、フランスの面積の3倍にも
プラスチックは大変便利です。私たちの身の回り、いたるところで便利に使われています。でも、ちょっと考えてみてください。使いやすいからこそ、捨てやすい。たくさんの使い捨てプラスチックが氾濫する生活。もしこれらが、きちんとリサイクルされず、投げ捨てられたとしたら…?そしてその多くが、海に漂っているとしたら…?
この写真は、英国のとある海岸に打ち上げられたおびただしい数のプラスチックボトルのゴミです。ある朝、美しい海岸線を気分よく歩いていたら、突如目に飛び込むのが、この大量のゴミ…こんな光景、誰も望みませんよね。
NPO「オーシャン・クリーンアップ」(The Ocean Cleanup)が科学誌「Scientic Reports」で発表した論文によると、太平洋のハワイからカリフォルニアの間の海域にはごみが広がっている「太平洋ゴミベルト」といわれる海域があり、広さではフランスの面積の3倍、重量ではジャンボジェット機500機分にも相当するといいます(※1)。
青い空、青い海、美しい大海原を満たすのは、色とりどりの魚たち…ではなく、プラスチックということになりかねない深刻な状況です。
私たちの口にも?!
すでに胃の中がプラスチックでいっぱいの魚や海鳥なども見つかっています。とりわけ、マイクロビーズと呼ばれる極微小のプラスチック粒子は、海洋生態系への大きな影響から、極めて深刻な問題です。海に浮かぶ1ミリもない「目に見えないゴミ」は、魚や海鳥、ウミガメ、クジラなどの口にも入ります。つまり、「目に見えないゴミ」は食物連鎖を通じて私たちが日々口にする魚や塩のなかにさえ、紛れ込みはじめています(※3)。
私たちの体は食べたもので作られます。プラスチックを食べている魚を食べて作られる体…でもその魚がプラスチックを食べてしまう原因を作ったのは、他でもない私たち…
でも、問題の原因を作ったのが私たちであるならば、この悪循環を止めることが出来るのもまた、私たち人間以外にいません。
美しい海を守る、自分たちでは問題を解決できない海鳥やお魚たちなど人間以外の命を守る、そうしてその結果、はじめて、私たち自身だけでなく、私たちの守るべき子どもたちも未来も守ることができるのです。
さぁ、今こそ行動の時!思い立ったが吉日!やる気は十分。でも、何をすればいい…?
たった5つのシンプルな方法
大規模な解決策も重要です。でもその解決策ができるまでにはきっと時間がかかる。私たちに待っている時間はありません。なぜって、今すでに危機は私たちの口の中に入ってきているのですから。
そこで大切なのが、今日から、今から、私から、できる問題解決のための行動です。
「Reduce, Reuse, Recycle(減らして、再利用して、リサイクル)」。これが基本。以下5つの具体的な行動をご紹介します。是非、今日から実践してみてください!
1.使い捨てプラスチックにNO!
レジで、ナイロン袋や使い捨てプラスチックのフォークやスプーンをもらわない!
なんといっても、毎日のお買い物の時こそが、行動の時です。
マイバック持参は多くの人が実践していると思いますが、マイスプーンにマイフォーク持参なんかも素敵です。コーヒー店のなかには、マイボトルやタンブラーを持参すると、それに挽きたてコーヒーを淹れてくれるお店もありますね。
2.マイクロビーズにNO!
マイクロビーズ入り製品は買わない!
スクラブ入り歯磨き粉や、スクラブ入り洗顔料ってありますよね。歯磨き粉や、洗顔料、ボディソープなどに極微小サイズのプラスチックである「マイクロビーズ」がスクラブとして使用されていること、ご存じですか?(※4)
毎日使う歯磨き粉や洗顔料など、日用消耗品に含まれるマイクロビーズが、バスルームや台所、洗面台から最終的に海に流れ出しています。この目に見えないマイクロビーズが、魚たちを経由して、私たちの口にも入っている可能性が高いのです。欧米ではすでに規制も始まりつつありますが、日本はまだまだ。消費者の自発的な、買わない、行動こそが、まず最初の第一歩です!
3.リサイクル!
すでに多くの方が実践されていますよね。でも、次のこと、今度のお買い物の時にちょっと気にしてみてください。
1)すでにリサイクルされた製品を買おう!
2)もちろん、もう一度リサイクル!
4.ビーチを清掃しよう!
海水浴に行った時、ビーチを散歩した時、潮風を感じながらリフレッシュ。そんな時、ビーチも一緒にリフレッシュさせませんか?誰にでも、数分でできるアクションです。
足元に目をやれば、きっとたくさんのプラスチックゴミが目につくはず。
5.お友達やご家族を巻き込んじゃいましょう!
毎日の心がけや週末のビーチクリーン。
一人でやるのはもったいない!
休日にご家族と、いつもの仲間と、ビーチ清掃大会、なんて素敵です。ママ友とのお茶会やご近所さんとの井戸端会議、会社の同僚との飲み会で、ねぇねぇ、知ってる?!歯磨き粉や洗顔料に小さなプラスチックが入ってるんだって〜!っていう情報共有も大切です。
こんなボランタリーな動きが全国各地で集まれば、それは決して小さなことではなく、大きな大きな一歩です。
プラスチックから海を、地球を、未来を、守るたった5つのシンプルなこと。周りを巻き込んで始めませんか?ぜひ、こちらのページも参考にしてみてくださいね。
プラスチック汚染を止める >
参考資料
※1)東京都「プラスチックによる海洋汚染」2015年11月15日、https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/general_waste/attachement/01_Prof.KANEHIROfromOTSUMAWomen'sUniversity.pdf
※2)「Evidence that the Great Pacific Garbage Patch is rapidly accumulating plastic」 Nature, 22 March 2018https://www.nature.com/articles/s41598-018-22939-w
※3)”One-third of fish caught in Channel have plastic contamination, study shows,” the Guardian, 24 January 2013, http://www.theguardian.com/environment/2013/jan/24/fish-channel-plastic-contamination.
Katie Herzog, “There’s plastic in your fancy sea salt, study says,” grist, 5 November 2015, http://grist.org/article/theres-plastic-in-your-fancy-sea-salt-study-says/
※4)「洗顔料のプラスチック粒子、米で規制へ 湖沼汚染を懸念」『日本経済新聞』2014年3月6日、http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0600D_W4A300C1000000/。
佐々木奎一「環境汚染の微細プラスチック「マイクロビーズ」の実態」2015年7月11日、http://blog.goo.ne.jp/ssk23_2005/e/0c4cf698d9c22fd8ca10f10bfa1482d0