こんにちは。子どもを産まないで数が増えるサカナがいたら教えてほしい、海洋生態系担当の小松原です。
今日は日本海での太平洋クロマグロの巻き網漁について考えてみます。
ニュースでも流れてますが、5月下旬から日本海での巻き網漁がはじまりました。なんでこの話題にピリピリしているかというと
・太平洋クロマグロの産卵場は日本の海にある(日本海、南西諸島)
・今はまさに産卵期(4-7月)
・なのに、産卵期の太平洋クロマグロを保護する規制がない!! からです。
国際管理機関での決定に基づいて、日本でも今年から30kg未満の個体の漁獲制限は始まりました。これは、かつての4%まで減ってしまっている産卵親魚量(繁殖が可能な成魚の量)を増やすことを目指しています。4%ですよ。危機的状況ですよね。
ところがですよ、ちょーっと考えてみてください。せっかく小さなマグロを獲るのを我慢しても、30kg以上のものについては獲り放題ということ。なんだかしっくりこないですよね?
なかでも、日本海では今の時期の巻き網漁が盛んで、産卵のために戻ってきたマグロ(言ってみれば妊婦マグロ)の群れを狙ってガバッと獲ってしまっている恐れがあるんです。
なんで巻き網が心配なの?
巻き網はその名が示すとおり、サカナの群れを大きな網で囲み、逃げられないように口を閉じて巻きとる漁法です。こんなの↓
つまり、産卵のために群れを作って泳いでいる「妊婦マグロ」をまとめて獲ってしまえるということなんです。
獲られた妊婦マグロは水揚げされた港で、こんな風に産むことの叶わなかったたくさんの赤ちゃんたちと悲しいお別れをすることになり(写真下↓)、それは私たち人間にとっても、せっかくの資源量回復の機会をみすみす捨てているようなもの。
なぜかって?マグロは自然の生きものなので、産卵して子どもを産まなければ全体数が増えるわけがないのですもの。
※妊婦さんマグロとその卵巣(真子)。ショッキングな写真ですみません。
でも私たちはこうして命をいただいているので、目を背けてはいけませんね。
どのくらい獲ってるの?
ここでちょっと下の表をご覧ください。水産庁が発表している、日本における成魚・未成魚(30kg未満)別・漁業種別の漁獲状況から成魚のものを抜粋したものです。
すぐに分かるのは、2004年以降の日本海での巻き網による成魚の漁獲量が大幅に増えていること(濃いブルー)。
特に日本海まき網(薄いブルー)と沿岸はえ縄が飛び抜けて多く、また例外はあるものの、日本海の巻き網によるものが多いこがわかりますね!
水産庁の調べによると、南西諸島と日本海での産卵量はおよそ7:3ということなのですが、「じゃあ日本海で産卵期のものをいっぱい獲ってもいいのか」というと話は別です。
危機的状況にまで減っていることを考えたら、比較的インパクトが少ないから獲っても大丈夫!って、言える状態ではないし、ましてや妊婦マグロを一網打尽するような方法がマズいことは誰にでもわかること。
どこで獲ってるの?
ここで注目したいのが、日本海巻き網漁で獲れた太平洋クロマグロの水揚げで有名な鳥取県の境港。下の表は、堺漁港に主に巻き網漁によって水揚げされた量です。
こちらも2004年以降に急増、前出の表の濃いブルーの箇所と比べると、日本海巻き網の多くが堺漁港に水揚げされていることがわかりますね。
しかも、実は誰もがどこかでお世話になっているであろう日本の会社が関わっているんですが、長くなるのでそのお話は次の機会に。
来週の予告
境港だけが、巻き網漁業だけが悪いのか?というと、それはちょっと違いますが、今日は産卵場である日本海で妊婦マグロ一網打尽における資源回復への妨げの観点からお話ししました。
カギは、「子どもを産んで次世代を増やす・繋ぐ」という自然の法則。
つまり、産卵期の禁漁など、本気の管理保護措置が必要とされるということ。
ところが先陣指揮を執るべき水産庁の動きはまだ見えません。
では、どうしましょう? ということで、来週はこれに関わる企業と私たち消費者のつながりについて考えます!
ではまた来週〜♪海洋生態系担当の小松原でした!
出典
太平洋クロマグロ産卵場調査の結果について(水産庁)
太平洋クロマグロの資源管理について(水産庁)
境港におけるクロマグロの水揚げ状況について(まき網)(境漁港)