北極海から嬉しいニュースが飛び込んできた。

28日、英・オランダの石油会社ロイヤル・ダッチ・シェル(以下、シェル)が、米アラスカ州沖の北極海域での石油・ガスの探査活動を停止すると発表したのだ(1)。

グリーンピースは、2012年6月から「北極を保護区に」というキャンペーンをはじめ、シェルをはじめとする大手石油メジャーに北極圏での油田開発を行わないように訴えてきたが、このキャンペーンの成果が出たことになる。

このキャンペーンには、現在までに多くの著名人だけではなく、世界中で700万人以上の市民がグリーンピースの活動に参加・協力してくれた。

このシェルの決定は、世界中の市民がつかんだ環境保護の象徴的な勝利を意味するとともに、化石燃料に依存する経済システムの「終わりの始まり」を意味するものとなるかもしれない。 

  

シェルは、8400億円を無駄に

シェルは、今回の判断の表向きの理由として、北極海での石油とガスの埋蔵量が予想を下回る可能性を述べているが、ここまで固執して進めたプロジェクトにおいて、短期間の採掘調査だけでこのような判断を下したとは到底思えない。

また、シェルは今回の判断で、北極海での油田開発につぎ込んできた8400億円とも言われるコストを無駄にすることとなった。さらに、第3四半期決算において、多額の評価損を計上することとなるという。

これらの数字が意味するのは、北極での油田開発が与える企業のブランドイメージの悪化リスクが、そこで得られる利益よりも高いと判断したということだろう。

また、この巨額な損失が、シェルの北極海からの事実上の撤退を意味すると言われる所以でもある。

 

化石燃料に依存する事業への投資はリスクに

かつて投資対象として魅力的だと思われた北極海開発プロジェクトが、グリーンピースの忠告通りにその期待を見事に裏切った。

これで、化石燃料に依存するプロジェクトへの投資リスクは現実のものと認識され、今後はこのようなプロジェクトは投資対象から急速に外れていくだろう。

今回のシェルの北極海からの撤退という判断は、その象徴的な出来事として大きな意味を持つ。

実際に、化石燃料を供給したり、それに依存する企業を投資対象から外すという動き(ダイベストメント)も広がっている。これまでに公的基金などが、7兆2000億円もの株式や債権を引きあげているという。

この動きも、市民やNGOが活発化させたものだ。

 

原子力にも化石燃料にも依存しない社会へ

原子力にも、化石燃料にも依存しない社会への急速な転換が必要だ。

これらの危険で環境を汚染するエネルギー源にはお金が集まらず、自然エネルギー開発に投資が集中する時代がもうそこにやってきている。この投資環境の変化は、原子力や化石燃料に依存する日本の企業にも影響を与えるだろう。

市民が社会を変える。そのサクセスストーリーの新たな1ページが刻まれた。

ーーーーーーーーーーーーーー

このような活動ができるのは、政府からも企業からも支援を受けずに、個人の皆さまからのご寄付で活動を行っているからです。

世界300万人のサポーターの一人となって、このような活動を支えてください。よろしくお願いします。

これまでの市民による環境保護のサクセスストーリーは以下のバナーをクリック。

 (1) シェル発行のプレスリリース