こんにちは。
多くの方に参加して頂いたネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留基準の緩和に反対する署名は、4週間弱の間に12,739筆が集まり、先ほど、厚生労働大臣宛に提出してきました。短い期間に署名に参加し、また広めてくださった大勢のみなさん、ありがとうございます!署名には8割以上の方が、メッセージを書いて下さっていました。提出にあたっては、その中からいくつかを口頭で紹介したあと、ひとつひとつのメッセージを注意深く読んで、残留基準の緩和を即時凍結するよう求めました。
写真: 厚生労働省厚生労働省医薬品食品局食品安全部基準審査課長の長谷部さんに12,739筆の署名を手渡しました。
提出のあと、次の3点を中心に話を聞きました。
<1> いまどのような検討をしていますか?
署名を受け取った厚生労働省の担当の方は、「いろいろ検討しており、決定時期については未定だ」ということでした。
残留農薬のパブリックコメントの後はほとんど修正なく基準緩和が決定されてきていたこれまでとは違い、詳しい検討が続けられているそうです。
これは、残留農薬についてのパブリックコメントとしては異例の1,657件(ふつうは多くて10件だそうです)の意見がよせられたため、とのこと。これに加えたった4週間で12,739筆もの署名が集まっていったことが、安易な基準緩和を食い止めているのだと思います。基準審査課長もグリーンピースのサイト(みなさんからお預かりしたメッセージを紹介したブログページなど)を見ていたと話していました。
このほか、
現在、農林水産省、食品安全委員会と話し合いしており、クロチアニジンの急性毒性の指標(急性毒性用量、ARfD)の設定を食品安全委員会に依頼するかどうか、検討中である、とのことでした。
<2>パブコメの意見はどうなるのですか?
基準審査課長によると「科学的な意見を精査しています。科学的な意見以外は参考にしますが最終的には科学的知見に元づいて決めます」ということでした。
でも、パブリックコメントの目的は、科学的情報を集めることではなく、「行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てること」(総務省)です。今回の残留基準の引き上げ案は、必要性の検証のないまま農薬メーカーの申請に応じて進められているといった不公正さや、ホウレンソウに40ppmもの残留基準値案が導かれた検討プロセスの不透明さなど、問題がたくさんあります。
グリーンピースで実施した12,739筆の署名やメッセージには、こうした根本的な問題に対する「おかしい」という思いや、一方的に残留農薬が増やされることへ不安や疑問、反対の意見がたくさんありました。1,657件ものパブリックコメント。“科学的”な意見以外も、国民の権利利益の保護のためには大切です。
国民の健康を守るという厚生労働省の責任を果たすよう求めるものと受け止め、慎重に検討してください、とお願いしました。
これに対して厚生労働省の言葉は、「パブコメを精査してからどうするか決めますが、このあといきなり基準が決まって発表される、という事はありません」とのことでした。
みんなの声が、大きな力になって届いているようです!
<3>農薬の使用拡大について、必要性は厳しく検討されているのですか?
ところで、安全性以前に、農薬がこんなに残留する程たくさんつかう必要性は、はぜ検討しないのでしょうか?
これは、基本的には農林水産省の仕事で、厚生労働省では、検討しないのだそうです。
課長によると「農水省が適正な基準に照らしていると思う」とのことで、農水省で必要性を検証したかどうかは厚労省で確認していないようです。
予防原則の考え方には、科学的な因果関係の証明をまって手遅れになる前に対策を打つ、というだけでなく、『決定プロセスの公開』や『必要性の検証』や『よりよい代替がないかの検証』という重要な要素があります。
農薬は、基準に合っていればすべて安全というわけではありません。厚生労働省も、いくつかの化学物質が合わさった影響(複合影響)のリスク評価は出来ていないことは承知しています。
そうであれば、農薬の残留基準を増やす必要性や、代替策について徹底的に検証をすることがまず必要ではないのでしょうか。そうした検証もなく、農薬メーカー⇒農水省⇒厚生省⇒基準引き上げ、と一方通行で基準が上がっていくやりかたは認めるべきではない、ということを強く申し入れました。
今後は、住友化学などの農薬メーカーからの依頼を受けて、厚生労働省に引き上げの検討を要請した農林水産省や、消費者庁に対しても、みなさんの署名メッセージの提出と申入れを行っていく予定です。
引き続きご注目ください、一緒に変えていきましょう。
■署名とともに提出した要請書
「ネオニコチノイド系農薬の残留基準の緩和の凍結を求める要請書」