こんにちは。海洋生態系担当の小松原です。

今日は福岡からお届けします。

8月29日から5日間にわたって開催されていた、中西部太平洋まぐろ類委員会 (WCPFC) の北小委員会に、オブザーバーとして参加してきました。

いま、会議を終えて、「誰も太平洋クロマグロのことを本当に心配していないんだなぁ」と言う悲しい気持ちでいっぱいです。

そもそも、WCPFCは対象となる魚種の「持続可能性を確保すること」を責務とする管理機関なので、「資源」としてのマグロについて議論する場。

5日間の会議を傍聴して、極端な言い方にはなりますが、種としてのマグロの存続を脅かさないようにしつつも、人間が獲っても大丈夫な最大量を見極め、各国における漁業の調整・交渉をする委員会で、「保護」を最優先に考えてくれる場所ではないことを痛切に感じました。

とはいえ、何度もお伝えしていますが、太平洋クロマグロは残り2.6%。そのほとんどが海から姿を消してしまっているのが現状です

WCPFCが掲げる暫定目標は、2024年までに歴史的中間値(これまでの資源量の中間値)までに回復させるとするものですが、実はこの目標を達成しても太平洋クロマグロの資源量は8%にも満たないのです。

健全なレベルの最低限の目安として、初期資源量の20%という数字が挙げられますが、いま太平洋クロマグロが置かれている状況が続いた場合、2034年までに到達する可能性は、なんと1%もありません。

気になる会議の結果は?

私は、太平洋クロマグロの「保護」の観点から、一刻も早く健全なレベルまでに回復させるための長期回復計画の策定を期待して参加しました。

しかし、目標基準値(健全なレベル:維持する資源量の目標値)についても、限界基準値(これより下回らないようにする値)をいくらにするのか、などの具体的な回復計画についても、来年以降に先送りになりました。

また、日本政府が提案をしていた「緊急漁獲規制」も各国に受け入れられず、合意には至りませんでした。

このルールは、加入量(どのくらいの仔魚が生まれたか)が過去最低レベルを3年間も続かないと発動しないという非常に心許ないもの。そもそも、もうすでに危機的な状況にある太平洋クロマグロにとっては、個体数を回復させる対策が今すぐ実施されることが求められているのに。

グリーンピースは、ピュー・チャリタブル・トラストという環境団体と共に、北小委員会の開催に先がけ、委員会に対して、「最低2年の禁漁を含む保護管理措置の強化」を要請していましたが、大きな進展はないままに閉会しました。

 

合意できなかった今、日本政府がやるべきこととは

太平洋クロマグロは、「資源崩壊」の目安とされる10%を長らく下回ったままで、ついに残り2.6%という状況です。それでも「保護」は最優先されず、いかに漁獲量を減らさないままで、個体数を回復できる道を探っているようにしか、私には映りません。

国際的な対策が、1年も先送りになった今、国内の規制強化が太平洋クロマグロに残された希望かもしれません。

日本は、世界全体の漁獲量のおよそ80%を消費しています。残念ながら、事実、太平洋クロマグロを今の状況に追い込んだ当事者は私たち日本です。過去は変えられません。

でも、だからこそ、太平洋クロマグロを絶滅させた国ではなく、ピンチから救った国として、思いきった勇気ある決断が今こそ求められていると、私は思います。

グリーンピース・ジャパンは、太平洋クロマグロを守るため、引き続き水産庁に産卵期の禁漁と巻き網漁の規制強化を要請してゆきます。

水産庁にお願いをする署名の締め切りはもうすぐ。ぜひ一緒に声を届けてください。