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例えば家を買いたいときや、個人でビジネスを始めたいとき、ほとんどの人は銀行にローンの相談に行きますよね。それと同じように、大抵どんな事業も融資がなければ実現できません。銀行は様々な事業に資金を提供することで利益を生んでいますが、すでに世界で700以上の金融機関が次々と、ある事業への投資から撤退方針を打ち出しています。それは石炭です。

石炭は、気候変動の最大の原因の一つなので、石炭事業からお金を引き上げて、代わりに自然エネルギーへの投資を増やし、気候変動をストップさせようという動きが、世界中で広まっています。

一方、日本の金融機関も、今年5月に初めて石炭に関する方針を公表しました。方針を公表したこと自体はいいことなのですが、肝心の内容があいまいで、どのようなステップで石炭から撤退していくのかが明記されていません。

特に、三菱UFJフィナンシャル・グループは、世界でもっとも自然エネルギー事業に資金提供をしている金融機関である一方で、石炭火力発電向けの融資・引き受け額が日本の金融機関トップ。そこで石炭への資金提供をやめて世界のトップ銀行に並ぶリーダーになってもらうべく、株主として株主総会に参加することにしました。[1] 日本武道館で行われた総会では、私も直接、社長の平野さんに質問することができました!その時にも伝えた内容をご紹介します。

気候変動を止めるパリ協定に貢献するため

気候変動の影響をできるだけ抑えるための国際的な取り組みであるパリ協定に世界が合意してから2年半。世界の各国政府や企業はパリ協定に適合するために、石炭などの化石燃料を持続可能な自然エネルギーに置き換える動きを加速しています。石炭火力発電所はたとえ最新鋭の設備であっても、もっとも多く温室効果ガスを排出する発電方法であり、気候変動の最大の原因の一つです。

その代わりに伸びている自然エネルギーの成長はめざましく、2007年と比較して2017年には355%も成長しています!安定して供給できるインフラが整い、価格も安くなってきているからです。[2] 

[写真]福島県の風力発電所

石炭火力発電所は「座礁資産」

すでに気候変動による熱波や水不足の影響で、日本の金融機関も資金提供しているインドなどでは発電所の冷却に必要な水が足りなくなり、建設計画が頓挫したり、今後の運転が危ぶまれるケースが出ています。また、石炭火力発電所はたとえ最新鋭の設備であっても、もっとも多く温室効果ガスを排出する発電方法であり、高性能フィルターなどを設置しても毎年トン単位の大気汚染物質を放出します。このため、住民の反対運動や訴訟が起き、発電所建設計画が裁判によって遅れたり、中止となることもあり、投融資する際のリスクとなります。

[写真] インドネシア・ジャバの石炭火力発電に反対する地元の漁師たち

金融機関の大口スポンサーも脱石炭

さらに、世界がパリ協定での約束事を実現しようと動く中、それに逆行する石炭火力発電所を支援することは、金融機関にとってブランドリスクとなります。日本の金融機関の大口株主である海外の機関投資家の中には、すでにはっきりと脱石炭方針を打ち出しているところもいくつもあります。日本の金融機関がこのまま脱石炭方針を曖昧なままにすることは、こうした機関投資家にとって問題と映るでしょう。

[写真]ノルウェー年金基金に、石炭関連事業への投資を止めることを求めるデモ。この後、ノルウェー年金基金はダイベストメントを発表。

世界の銀行のリーダーになって欲しい!

世界で一番自然エネルギーに投資しているのに、石炭への投資も続けるのは、片足で前に進みながら、もう一方の足で後ろに下がっているようなもの。とてももったいないですよね。

株主総会でグリーンピースの質問への答えとして、社長の平野さんは、気候変動のことは重要だと思っていて、極力具体的に方針にも書いたつもり、と言っています。また担当取締役も、発電事業に関するプロジェクトファイナンスは、自然エネルギーが50%、石炭は10%だと話していました。明日その10%をなくすことは難しくとも、実際海外の大手銀行はそうしているように、今後新たに石炭への投資はしないことを明確に打ち出したり、少なくとも経済的な先進国での石炭火力発電所には資金提供しないなど、脱石炭への歩みをよりわかりやすく具体的にできるはずです。日本最大手の金融機関である三菱UFJフィナンシャル・グループが、一日も早く気候リーダーとなることを期待しています。

エネルギーチームリーダー  高田久代 

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[1] 628日、株主として、三菱UFJフィナンシャル・グループの株主総会に参加してきました。グリーンピースは脱原発・脱石炭と自然エネルギーの飛躍的導入を求め、株主総会への参加・議決権行使などのために、東京電力、関西電力、日立製作所、三菱UFJフィナンシャル・グループの株式を最小単位で(100株)で購入しています。

[2]  https://www.bp.com/content/dam/bp/en/corporate/pdf/energy-economics/statistical-review/bp-stats-review-2018-full-report.pdf 44ページ表の水力発電を除く世界全体の自然エネルギーの利用推移について、2007年と2017年を比較。 


 

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