皆さんこんにちは。食と農業チームです。 

7月7日(火)、グリーンピースは幼稚園での「給食の安全安心度」をアンケート調査してまとめた「ハッピーランチガイド」をリリースしました。

今日は、有機食材を使った給食に関連して、高知県・四万十市のお話をご紹介いたします。

 

『未来の食卓』という映画をご覧になった方は多いかもしれません。

 南フランスのバルジャック村という小さな村で、村長が子供たちの未来を守るため「学校給食と高齢者の宅配給食をオーガニックにする」と宣言してその挑戦がはじまり、小さな村が少しずつ変化していくという実話をもとにした映画です。

有機野菜をおいしそうにほおばる子どもたちの笑顔にこちらも笑顔をそそられながら、同時に農薬と環境破壊、人体への影響について考えさせられます。

 

日本でも、すでに15年以上も前から「安全でおいしい地元の野菜を子どもたちに食べてもらいたい」という願いで、学校給食に地元の有機農産物を取り入れてきた地域があります。

四国・高知県の四万十市(旧中村市)です。 

四万十市では、子どもたちが校庭で野菜を作ったり、給食の野菜の生産者を訪問して野菜づくりを学んだり、生産者の方が学校を訪問して子どもたちと一緒に給食を食べたりと、食育とコミュニティーのネットワークを大切にしています。

旧中村市では、18年前、循環型社会の実現を公約にした市長が誕生し、農家、市民、行政の三者が協働して「環境にやさしい農業のための研究会」を発足させ、「環境にやさしい農業」を広めてきました。

同会設立趣旨によると、「市内には既に環境に配慮した農法に取り組んでいる生産者がいるものの、『販売先がない』『生産技術が確立されていない』という不安から、広がっていかない」という現状がありました。

そこで、消費者団体・生産者・行政の三者がスクラムを組み、「大きな枠の中で連携を図ることが、今後『環境にやさしい農業』を広めていくうえで不可欠」という思いを共有しました。

そしてこれを市全体的な取り組みにすることを宣言し、「安全で良質な農産物を、少しでもそうしたものを求めている消費者に供給することにより、『市民の健康』と『自然の豊かさ』また、『中村の新しい農業』というものを会員総意で創造していくものとする」と結んでいます。

このように生産者・市民・行政による「環境にやさしい農業のための研究会」は、2002年4月に有機認証制度「四万十こだわり農産物」をスタートさせ、同年8月に小学校給食への納品を開始しました。

現在、四万十市の学校給食(小学校・約2,000食)の米の100%(完全米飯)と野菜の約30%が市内産の無農薬、減農薬農産物です。

市民の働きかけで始まった有機農業

「中村くらしを見直す会」は、長年、同会にかかわり、無農薬農産物を納品・販売している市民団体です。当団体代表の川村祐子さんは、30年前には中村市でも無農薬農業など「ありえない」というのが常識だった、とおっしゃいます。

そんな中、1980年代、原発立地計画に反対した高知県・窪川町(現・四万十町)の有機農業生産者の方たちとつながりながら、農薬についての勉強会を経て、有機農業を育てるために行政に働きかけていきました。

現在、「中村くらしを見直す会」は、「環境にやさしい農業のための研究会」の、スタッフとして、事務局、窓口業務を坦い、学校給食や高知市の自然派レストランへの供給をお手伝いしています。また、生産者から無農薬、無化学肥料の農産物を買い取り、市内の保育園へも納品するとともに、一般消費者への販売も行っています。

そして生産者・消費者・行政が集い、協働してこの地域の有機農業を守り育てている拠点の一つになっています。

  写真:「中村くらしを見直す会」川村さん(右)と四万十市農業課・有機認証委員の宮本さん(「中村くらしを見直す会」にて)

写真:「中村くらしを見直す会」川村さん(右)と四万十市農業課・有機認証委員の宮本さん(「中村くらしを見直す会」にて) 

「市民が動かなければ行政は動きにくい。まずは市民が思いを伝えることが一番大切」と川村さん。

また、「エコはハートのつながり。他を思いやれなくなったらうまくいかない。これからも多くの人々とネットワークをはぐくみながら、この会がみんなを応援していけるささやかな場所になれば」とも。  

このように、四万十市の取り組みは、コミュニティーのネットワークを育みながら行政をまきこみ、協働することで地域の食育を大切にしています。子どもたちが地域で有機野菜の味と育て方を自然に覚え身につけていけば、未来の食卓はさらに安全で豊かなものになるでしょう。もちろん自然環境も。

四万十市の地域に根ざした食育は、ハッピーランチガイドの小学校版と言えるかもしれません。

子どもたちに安全・安心な食を!私たち大人ができること

ハッピーランチガイドでは、全国の幼稚園に給食の安全性についてアンケートを実施、その結果のまとめ、実際に有機給食を導入している園、消費者が手頃に有機食材を取り入れる方法をご紹介。
登録いただくと、有機食材を導入している幼稚園の一覧リストもダウンロードできます。

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【寄稿】金繁典子