いま、絶滅する生物は年間4万種にものぼります。絶滅のスピードはこの100年ほどで4万倍になりました。
最新の調査報告書では、世界では49%もの鳥類が減少しているとされています。
原因はさまざまですが、研究者は、相次ぐ熱波、干ばつ、洪水といった気候危機による異常気象が、広範な種の絶滅につながっていると警告しています。

追いつめられるペンギンたち

追いつめられるペンギンたち
Photo AC

日本は世界一の「ペンギン大国」で、国内で100カ所で11種類、約4,000羽が飼育されているそうです。*1
ぷっくりした体型や、よちよちと不器用に歩く可愛らしい仕種で人気の鳥ですが、野生下では、気候変動によって種の存続が危ぶまれています。

彼らが暮らす南極では、この半世紀に3℃ほど平均気温が上昇しました。
このため、かつて降っていた雪が雨となってヒナたちの体を濡らすようになりました。
ペンギンの成鳥の羽根は脂でコーティングされ強い撥水性を備えていますが、ヒナのふわふわした羽毛は水を弾くことができません。2013年から2014年にかけて、アデリーペンギンの生息地で凍死した数千羽のヒナたちが発見されています。*2

海氷の上で繁殖するコウテイペンギンは氷とともに繁殖地を失い、2016〜2018年には3年連続で、2万組以上のつがいが繁殖に失敗したことがわかっています。
このままでは、2100年にはコウテイペンギンの生息地はほとんどが失われ、絶滅する恐れがあります。*3

グリーンピースとともに南極・エレファント島でペンギンの群れを調べる研究者。2020年。
グリーンピースとともに南極・エレファント島でペンギンの群れを調べる研究者。2020年。

温暖化で変わる南極の生態系

ペンギンをはじめとする南極の生きものたちの主なエサは、ナンキョクオキアミという小さなエビに似た動物プランクトンですが、このオキアミそのものも減少しています。
養殖用のエサやサプリメントの原料としての需要が高まり、乱獲が進んでいることが一因です。温暖化で氷が減れば、操業できる海域も広がります。

そのうえ、オキアミの栄養源であるアイスアルジーと呼ばれる藻類が減り始めています。
アイスアルジーとは、海氷の隙間に生える珪藻類や微細な藻類のこと。海氷が減ればアイスアルジーも減ります。
南極の生態系を支えるこの藻が減ればオキアミの減少につながり、ひいてはオキアミを食べる南極の生きものたちの生命の危機をも招くのです。

世界の鳥類の49%が減少

モーリタニア、プラスチック製の漁網に絡まった海鳥。2012年。
モーリタニア、プラスチック製の漁網に絡まった海鳥。2012年。

絶滅が危惧されているのはペンギンたちだけではありません。

昨年、環境省が発表した全国調査によると、ツバメは90年代の1万4978羽から8987羽(-40%)に、スズメも3万1159羽から2万627羽(-34%)に減りました。原因はエサ場となる耕作地などの環境の変化が考えられます。日本で広く使用されているネオニコチノイド系農薬といった有害な化学物質による環境汚染との関わりはわかっていません。

ゴイサギやコサギなど魚を食べる小型の水鳥も分布域が縮小。ブラックバスなど肉食の外来魚によってエサが減っている影響が考えられるそうです。*4

バードライフ・インターナショナルの最新の報告書では、世界では49%もの鳥類が減少し、8種に1種が絶滅の危機にさらされているとしています。*5

ヨーロッパの農業地帯に住む鳥たちは、農業の機械化、化学肥料や農薬の影響、作物の転換などで57%が姿を消しました。オーストラリアでは、2000〜2016年に海鳥が43%減少。エチオピアでは、農地開発によって固有種のニセヤブヒバリが2007年以降に80%も減りました。やはり固有種のインドショウノガンは生息地の開発と野犬の食害で20年間に90%減少し、現在の生息数は1,000羽以下といわれています。中米に生息するキエリボウシインコは、密猟や農業の拡大などで30年間で80%以上減少しました。

インド、カーナ国立公園で、2007年撮影。
インド、カーナ国立公園で、2007年撮影。

背景にあるのは環境破壊と気候変動

報告書では、近年、世界中で頻発している大規模な森林火災・山林火災によって、鳥たちの生息地が荒廃していることを指摘。研究者は、相次ぐ熱波、干ばつ、洪水といった気候危機による異常気象が、広範な種の絶滅につながっていると警告しています。

人間の経済活動をきっかけに生まれる病原体も、鳥たちにとって脅威となります。

今年、高病原性鳥インフルエンザによって一部の鳥類の個体数が急速に減少しています。イギリスの海鳥のコロニーでは、300件以上の発生が報告されているのです。高病原性鳥インフルエンザの強毒化は、過剰に工業化された畜産農場の特異な環境─高密度、不衛生、化学物質の濫用など─と無縁とはいえません。

生態系を支える鳥たち

中米、キュラソー島のパナマヒメエメラルドハチドリ。ハチドリは花の蜜を吸うことで植物の受粉を媒介している。
中米、キュラソー島のパナマヒメエメラルドハチドリ。ハチドリは花の蜜を吸うことで植物の受粉を媒介している。

赤道をまたいで数万kmもの旅をしたり、植物の花粉を受粉させたり、種子を運んだり、生きものの遺骸を片づけたり、海と陸との間の栄養分の循環を助けたりする鳥たちは、この地球という繊細な生態系のネットワークに欠かせない存在です。

彼らをまもるために行動を起こすには、いまが最後のチャンスではないでしょうか。

2021年1月、気候変動と生物多様性対策を協議する「ワンプラネット・サミット」で、2030年までに地球上の陸と海の少なくともそれぞれ30%を保護するという目標が掲げられ、日本政府も参加を決めました。*6

90カ国以上が賛同するこの目標を達成するまでに、時間は残り8年しかありません。

ニュージーランド、オークランド諸島のシロガシラアホウドリのカップル。絶滅が危惧されている。
ニュージーランド、オークランド諸島のシロガシラアホウドリのカップル。絶滅が危惧されている。

グリーンピースは、鳥たちだけでなく、かけがえのないあらゆる命がまもられ、尊重され、誰もが安心して暮らせる未来を目指して、世界中で活動を続けています。

いま以上の気候変動の悪化をくいとめるため、社会システムを転換する手段をもつ大企業や政府・自治体に対し、実効的な対策を提案し、はたらきかけを続けています。

  • 温室効果ガスを最も多く排出する石炭火力発電の廃止のため、他団体と協力して、世界中の石炭火力発電に出資している日本の3大メガバンクにはたらきかけ、新規の石炭火力事業への投融資を中止させることができました。
  • 石油産業に次ぐ汚染産業となったアパレルメーカーに有害化学物質の使用と排出の撤廃を求め、ユニクロやリーバイスやナイキなど世界シェアにして15%を占める大手ブランド80社を合意に導きました。
  • 温室効果ガス排出量の4分の1を占める運輸機関の環境負荷を減らすため、世界的な大手自動車メーカーに対し、販売台数ではなく移動サービスの提供を主体とする持続可能な産業へのシフトを提案、対話を続けています。
  • 日本中の自治体に脱炭素政策を実行してもらうための草の根運動を立ち上げ、地元の人たちが自分の手で我がまちのエネルギー政策を転換させるように後押ししています。
  • 核兵器と原発と核汚染をなくすため、1971年の設立以来、世界中で行動を続けています。

ものいわぬ生きものたちに代わって、この地球の未来をまもれるのは、わたしたち人間だけです。

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アルゼンチン、グランチャコ。この地域は干ばつ、山火事、洪水、違法伐採といった環境破壊にさらされている。2018年撮影。

*鳥類の日本名はeBirdを参考に記載しました。

*1 : 海洋政策研究所【Ocean Newsletter】第408号(2017.08.05 発行)
*2, *3 : ハンギョレ 2022-04-30 雨の南極…「凍死の危機」にさらされるペンギンのひな
*4 : 環境省:自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)について
*5 : ​​STATE OF THE WORLD’S BIRDS
*6 : グリーンピース プレスリリース 2021-01-13 日本の参加を歓迎──2030年までに 地球上の陸と海の30%を保護する国際目標