第27回目調査
福島県飯舘村で測定した空間放射線量

グリーンピースでは、東京電力福島第一原発事故発生直後の2011年3月26日から27日の第1回から、これまで26回、放射性物質、放射線調査を行っています。

今回の調査は、2016年11月23日から26日、福島県飯舘村の北部、南部、中心部の7軒で実施しました。政府が「2017年3月31日に福島県飯舘村の『居住制限区域』と『避難指示解除準備区域』の避難指示を解除する」方針を発表したことから、飯舘村の避難指示区域の解除されるエリアで調査を行い、その結果をもとに、いま飯舘村に帰って事故前と同じように生活した場合、生涯でどのくらい被ばくするリスクがあるのかを推計しました。

その結果、調査を行なった7軒の場合、生涯(70年間)での推定被ばく量の範囲は39から183ミリシーベルトでした。空間放射線量(地上1メートル高)が、1軒当たり数千カ所にのぼる測定地点の79%から100%(その内4軒は100%)で、政府の長期除染目標である毎時0.23マイクロシーベルトよりもはるかに高いものでした。また、ガラスバッジ設置による調査では、家の中では外の放射線量の6割が遮へいされるとする政府の想定が過大評価の可能性があることも分かりました。さらに、除染後にもかかわらず、局地的に放射線量の高いホットスポットも依然として残っていました。

今回の調査をふまえ、グリーンピースでは報告書『遠い日常:舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』を2017年2月に発表し、以下のように提言しています。

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飯舘村

【調査の日程】
2016年11月23日から11月26日

【測定地域】
飯舘村の23,080カ所における空間線量
同村小宮地区、草野地区など、村の北部、南部、中心部にある合計7軒の民家、民家の所有者の敷地(田畑や森林)、周辺道路の空間線量を測定した。

【調査方法】
飯舘村の23,080カ所における空間線量
下記の方法を組み合わせて実施。


©Marco Kuhne / Greenpeace

生涯被ばく線量の推計には、放射線スキャニングによって得た1軒につき2,000から6,000カ所で放射線を測定し、その加重平均値と土壌のセシウム検査の結果から放射性核種の崩壊予測を考慮した。飯舘村の住民が屋外活動が多いことを鑑み、8時間もしくは12時間屋外にいる場合を、それぞれ推計した。なお推計には、事故直後の莫大な被ばく量、今後の除染による放射線量の増減、森林内の放射能による再汚染、吸入や食品からなどの内部被ばくは入っていない。

【測定結果】 (以下、概要。詳細はレポートをご覧ください)

 

調査を行なった7軒の場合、生涯(70年間)での推定被ばく量の範囲は39から183ミリシーベルト(レポートよりの表12参照)となった。また、推計には、事故直後の莫大な被ばく量、今後の除染による放射線量の増減、森林内の放射能による再汚染、吸入や食品からなどの内部被ばくは入っていない。

南部の民家1軒で測定された屋外放射線量の加重平均値は毎時0.7マイクロシーベルトで、「放射線管理区域」に相当する。政府が想定する遮へい効果(屋内は屋外の放射線量の40%となる)では、屋内では年間2.5ミリシーベルトになるはずだ。しかし、この民家内に設置した個人線量計では、年間に換算して5.1から10.4ミリシーベルトが計測され、政府による遮へい効果の想定が過大評価である可能性が示された。(レポートの表13参照)

空間放射線量(地上1メートル高)が、1軒当たり数千カ所にのぼる測定地点の79%から100%(うち4軒は100%)で、政府の長期除染目標である毎時0.23マイクロシーベルトよりもはるかに高い。(南部の一軒の例をレポートの図1に示す)

生涯被ばく線量推定のために、土壌分析により、Cs-137とCs-134の比率を検証。その結果、6.55±0.12であった。レポートより表9を示す

ホットスポットも依然として残っている。最高値は、南部の民家で測定した1メートル高さで毎時3.3マイクロシーベルト。除染が複数回行なわれた後であり、問題は深刻である。
(レポートの表15。4軒で測定されたホットスポットの最高値)

調査報告書『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』

今後とも、人と環境をまもることに役立つ調査を行っていきます。

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