(前編)ベテラン環境記者と、グリーンピース・ジャパン元事務局長が語る、日本の環境問題の本質!
グリーンピース・ジャパン広報担当の城野です。
4月28日、初夏の爽やかなお天気の日、ヤマナシ・ヘムスロイド・ミモザギャラリーという青山の素敵なギャラリーで、「スペシャル・トークベント あなたの暮らしと環境問題はどうつながっている?」を行いました!
30数年の経験を持つベテランの環境ジャーナリスト、共同通信編集委員・論説委員の井田徹治さん。そして、グリーンピース・ジャパン元事務局長で、いまはパタゴニア・ジャパンで環境・社会部門ディレクターを務める佐藤潤一さん。この二人のゲストを招いての対談でした。
イベントには、グリーンピースのサポーターさんや、グリーンピースはよく知らないけど環境問題に関心があるという方々などがご参加くださり、和やかな会となりました。
グリーンピースに入職して、およそ2年あまり経つ自分ですが、もっと現場に行かねば、もっと勉強しなければ、と心を大きく揺さぶられる1日になりました!
そのイベントの模様をレポートします。
なぜ環境問題に関心を?
まずは、お二人のパーソナルストーリー。なぜ環境問題に関心を持つようになったのでしょうか?
井田さん「子ども時代に、自分の身近で公害が起こっていて、環境がどんどん破壊され、自然がなくなっていくのを見ていたことが底流にあります。また学生時代に、反核運動などをしていたドイツの緑の党にすごく影響されました。『右でも左でもなく前へ』というスローガンが好きで。環境保護に関われそうな仕事、一番環境に悪くなさそうな職業として、記者を選びました」
(写真:井田氏ご提供)
佐藤さん「もともとは、環境というより平和の問題に関心があって、フォトジャーナリストになりたかったんです。そのために留学した米国の大学は、ヒッピーの先生がいっぱいいるユニークな教育方針。ネバダの核実験場に行ってネイティブアメリカンの人にお話を聞くなど、間近に環境問題、社会問題を感じました。それが、きっかけですね」
(写真:佐藤氏ご提供)
グリーンピースの元事務局長として
「グリーンピースの役割は、普通の人たちの見えにくいところで起こっている環境問題の現場に行って、目撃して、世界に発信すること。ジャーナリズムと似ています」と話す佐藤さん。
2016 年までの15年間、グリーンピース・ジャパンで活動し、グリーンピース史上最年少(当時)で日本事務所の事務局長を約5年間務めた立場として、グリーンピースが日本社会にどういう変化を起こしてきたか、いくつかの事例を紹介してもらいました。
その昔、日本海では、いまでは信じられないようなことが起こっていました!
佐藤さん「旧ソ連が日本海に、ドラム缶に核廃棄物をつめて、大量に捨てていたんです。1993年、グリーンピースがこの事実を突き止めて、現場に行って写真を撮りました。NHKがまだ衛星から映像配信できない時代だったんですが、グリーンピースは自分たちの船から世界中に映像を配信。直後に海洋投棄を議論する国際会議があって、ロンドン条約で禁止となるきっかけになりました」
井田さん「世界的なカバレッジ(報道)で、すごかったですね」
また、2001年、グリーンピースの長年の働きかけを経て、松下電器産業(現パナソニック)が、日本で初めてのノンフロン冷蔵庫を発売。グリーンピースに入職して3日目の佐藤さんは、右も左もわからないまま、松下電器の記者発表会に。「ノンフロン冷蔵庫ありがとう」と大きく書いたバナーを会場で掲げました。
井田さん「すごいキャンペーンだったんです。僕が初めてグリーンピースと付き合った90年初めごろから、日本事務所でもすでにいろいろ調査してましたね。今やノンフロン冷蔵庫は当たり前ですが、当時は業界の激しい抵抗にあって、ここにこぎつけるまでに大変だったんですよね」
新婚の佐藤さんが買った冷蔵庫も、ノンフロン冷蔵庫だったそうです(笑)
さらに、ファッション業界への働きかけの事例も。
佐藤さん「衣料品ってすごく環境汚染をする産業。まずは、コットンをつくるときに有害な農薬を使うんです。そして染色のときも。化学薬品を使って、それを川に垂れ流し、川が汚染されます。中国の工場などを調べたら、近くの川が化学物質だらけだったんです。アパレル業界で世界3位のユニクロを展開するファーストリテイリングは、グリーンピースの働きかけの結果、いまでも2020年に向けて、有害化学物質を減らすように約束して、取り組んでくれています。」
井田さん「ぎりぎりまで交渉が大変だったと聞きましたが」
佐藤さん「知人が社長の柳井氏を紹介してくれて、直接お話することができました。
グローバルなネットワークを使った追跡力や、グローバルな企業を変えることができるのが、グリーンピースの強みです。企業からお金をもらっていないからこそ、できることでもあります。大きな会社が変わると業界全体がかわる。高いスタンダードができます」。
女性の社会進出と環境問題の関係?
ここで、参加者から質問が出ました。
「長年、環境問題に関心を持って活動していても、日本の社会はなかなか変わらない。選挙の投票率も低いし、いまの選挙制度は自分たちを代弁してくれる政治家が選ばれていないようにも思います。一体どうすればいいんでしょうか? また、今日のイベントもそうですが、環境問題に関心を持っている人は女性が多いように思います。それついてどう思いますか?」
佐藤さん「海外の国を見ていると、女性がどれだけ政治にかかわっているかということが大切だと感じます。また、日本の大企業のトップは男性ばかりで、男社会の悪さが出ていると思います。女性の社会進出が進むと、勝ち負けではなく、環境、人権、自然や地球、生活や生きることを重要視した政策が出てくる。ニュージーランドやドイツなど、女性がトップをとっている国は、環境政策がうまくいっていますね」。
井田さん「まさにそう。環境問題だけでなく、社会全体を見るべきだと思います。環境問題というのは民主主義全体の問題なんです。なぜ日本の環境問題対策がダメかというと、日本にちゃんとした民主主義がないから。それを支えるNGOなどの市民社会も弱い。だから、女性差別、女性格差をなくし、市民社会の力を大きくするなど、きちんとした民主主義の基盤を根付かせることが大切だと思います」
環境問題イコール民主主義の問題。これは、この日とても印象的な気づきでした。
後編につづく