© Ryohei Kataoka / Greenpeace

8月22日、福島第一原発のALPS処理汚染水の海洋放出について、政府が開始日を発表しました。グリーンピースは、8月17日に署名約5.5万筆を政府に提出。同日開催された討論会では、市民からの批判が相次ぎました。5年の間に大幅に膨れ上がった費用や期間など、問題を山積みにした中での強行決定。海洋放出以外の代替案の検討は正しくなされたのでしょうか。

▼この記事を読むとわかること

> 署名、計54,976筆を政府に提出しました
> 「約束は守ります」のはずが
> 代替案はほとんど議論されていなかった
> 費用35倍以上、期間4倍以上
> 海洋放出は必要ない
> 原発も、化石燃料も、「卒業」しよう
> 9月18日、「ワタシのミライ」に参加しよう

署名、計54,976筆を政府に提出しました

8月22日、日本政府は、東京電力福島第一原発敷地内に貯留されている「ALPS処理汚染水」の海洋放出を気象や海象条件などに支障がなければ、今月の24日にも開始することを発表しました。福島県民を始め多くの市民が反対したり、懸念を抱くなかの発表でした。

発表が間近に迫っていると言われていた8月17日、グリーンピースはこれまでに寄せられた汚染水の海洋放出に反対する署名36,334筆を経済産業省に提出しました。

署名を政府担当者に提出するグリーンピーススタッフ
「放射能汚染水を海洋放出しないで」署名を経済産業省の担当者に提出しました © Ryohei Kataoka / Greenpeace

あわせて、原発を気候政策として使うことに反対する署名、

「誰かの犠牲で成り立つ原発を気候変動政策にしないでください」 14,215筆
「原発のない世界を日本から実現してください」 4,427筆

を、内閣府の担当官に提出しました。

原発に反対する署名2件を内閣府の担当者に提出するグリーンピースメンバー
原発に反対する署名2件を内閣府の担当者に提出しました © Ryohei Kataoka / Greenpeace

「約束は守ります」のはずが

8月17日、署名提出を行った同日、国際環境NGO FoE Japan主催の市民と政府および東京電力との討論会がありました。経産省、原子力規制庁、東京電力から10名以上が出席、市民側は放出に反対する福島県民やオンライン参加者も含め多くの参加がありました。

8月17日の市民と政府・東京電力の討論会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace
8月17日の市民と政府・東京電力の討論会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace

政府・東電は、2015年に「関係者の理解なしにいかなる処分も行わず、他核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留します」と文書で約束しました。この約束は守られるのか、との問いにも、東京電力も経産省は「守る」と回答しました。

福島県内では、多くの自治体が、海洋放出に反対、もしくは丁寧な対応を求める意見書を採択しています。また、宮城県議会は今年7月、海洋放出に反対する意見書を全会一致で採択しました*
約束を守ると言いながら、海洋放出を推し進めようとする政府の姿勢に、討論会に参加した福島県の「これ以上海を汚すな!市民会議」の佐藤和良さんからは、「これは理解の強要だ」だとの批判の声が上がりました。

8月18日の「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace
8月18日の「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace

代替案はほとんど議論されていなかった

討論会に参加して衝撃だったのは、陸上に保管する代替案についてほとんど議論されていなかったということが、改めて浮き彫りになったことです。技術者や研究者も参加する「原子力市民委員会」は、「大型タンク貯留案」と「モルタル固化処分案」を提案していますし、グリーンピースも繰り返し陸上タンクでの保管を訴えてきました。

東京電力は今回の討論会で、モルタル固化案については「ALPS小委員会に置いても検討が行われています」と回答しましたが、検討がなされたのは地下に埋設する別の方法についてであり、しかもそれも会議資料に2行書いてあるだけで、議事録にも他に記録はありません。

費用35倍以上、期間4倍以上

また、様々な処理方法が検討されていた2018年の時点で、海洋放出の費用は17〜34億円とされていました。ところが現在の試算では1200億円になっています。処理にかかる期間も52〜88ヶ月程度と書かれていますが、現在は少なくとも30年以上と言われています*

討論会で東京電力は、「処分方法に関する検討については、国が6年以上にわたり専門家を交えて技術面だけでなく社会的な面からも議論を尽くされてきたものと理解している」と回答しました。

ところが、実際には代替案は真剣な議論もされず、海洋放出による処理に必要と見込まれる費用や期間は大幅に変わっています。技術的な検討はまったく尽くされていないのです。

討論会では参加者から、「前提が大きく変わってきているのだから、一度立ち止まって考え直すべき」との声が大きく上がりました。

8月18日「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace
8月18日「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace

海洋放出は必要ない

福島第一原発の廃炉作業を進めるために「ALPS処理汚染水」の海洋放出は必要ありません。そもそも「廃炉作業ため」と言われていますが、現在の廃炉計画は破綻しています。またそもそも、汚染水の発生自体を抑えることが必要ですが、これもまだ解決していません。

抜本的な解決策について、グリーンピースは元ゼネラル・エレクトリック社で東電福島第一原発などに勤務していた原子力コンサルタントの佐藤聡氏に委託して、2021年に具体的な提案を含むレポートを公表しています*

欧米で運用されているより高精度な多核種除去設備で限界まで放射性物質を取り除いた処理汚染水を、現行のタンクより堅牢で大型のタンクに移し、さらに高度な除去技術を開発するのが、現段階では最善の解決策とグリーンピースは考えています。

8月18日の「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace
8月18日の「これ以上海を汚すな!市民会議」主催の抗議集会 © Ryohei Kataoka / Greenpeace

原発も、化石燃料も、「卒業」しよう

政府は、気候変動や温暖化対策として脱炭素を進めるために、原発を利用しようとしています。でも原発は温暖化対策になりません。

一方で、「地球沸騰化」に警鐘が鳴らされ、エネルギーを効率的に利用する技術や持続可能な再生可能エネルギー利用の世界的な革新が進んでいます。いまこそ原発や化石燃料から卒業し、人と自然と地域と調和する再生可能エネルギーによる日本へと進んでいく時です。

9月18日、「ワタシのミライ」に参加しよう

そんな想いをもつ人たちが集まる、「ワタシのミライーー再エネ100%と公正な社会を目指して」集会&パレードが、9月18日(月・祝)に開かれます。

これは、9月にニューヨークの国連で開かれる国連気候サミットに合わせ、世界各地で開かれるアクションに連動して開催されるものです。直接来られる方は、ご友人などをお誘い合わせの上、ぜひ代々木公園にお集まりください! それ以外にもオンラインや全国各地でのアクションが開催予定です。チェックしてみてください。

企業に対する調査や継続的な働きかけを支援する

続けて読む

▶︎原発のない町で暮らしたい 上関、祝島 

▶︎東京電力福島第一原発事故から12年 〜いまとこれから 

▶︎不安に苛まれる日々、いまも─ 安齋徹さん