国際環境NGOグリーンピースは10月17日、今週14~18日にロンドンにて開催中の第35回ロンドン条約締約国会議において、東京電力福島第一原発で続く放射能汚染水の流出に対し、早期解決のために国際的な協力を呼びかけました(注1)。また同日、放射能汚染水を海洋放出しないよう求める「STOP汚染水の海洋放出」署名11,393筆を、要請書とともに安倍首相宛てに提出しました。

提出された署名は、5月15日から10月15日までの約5カ月間、グリーンピース・ジャパンのウェブサイト上で参加を呼びかけたもので(注2)、政府の汚染水対策を管轄している資源エネルギー庁 原子力発電所事故収束対応室の担当者に手渡しました。

署名を提出したグリーンピース・ジャパン 気候変動/エネルギー担当の高田久代は「今回の署名では、全体の約3割がグリーンピース実施の署名への初めての参加者でした。『これ以上、私たちの海を放射能で汚さないで』という切実な思いが、署名参加に馴染みのなかった市民にも共有され、行動を起こす機会となったのだと思います。政府と東京電力は、こうした声を受け止め、汚染水問題の解決に全力で取り組むべきです」と述べました。

一方、汚染水問題は国際的な懸案事項にもなっています。グリーンピースはこれまで、汚染水の流出が、ロンドン条約など海洋汚染を防ぐ複数の国際条約の精神に反していると提起し、日本政府にそれら条約の締約国として国際的責任を果たすよう訴えてきました。

現在開催中のロンドン条約締約国会議に出席しているグリーンピース・インターナショナルのシニア・サイエンティスト デイビッド・サンティロは17日、汚染水問題についての議論において、「東電福島原発からの放射能によるこれ以上の海洋汚染を防ぐために、締約国は実務的・財政的な支援を日本に申し出、海洋環境への放射性物質の拡散状況を長期的に調査すべきです。かつてロシアは政治的に複雑な状況にもかかわらず、国際的な支援と放射能の実態調査を受け入れました。こうした国際協力と、それを可能にする情報の透明性があったからこそ、困難な問題への解決策に辿り着くことができたのです」と締約国に呼びかけました。これに対して日本政府代表は、最終日となる本日18日に返答を検討するとしています。

ロンドン条約は、廃棄物の海洋投棄による汚染防止を目的とする国際条約で、1993年の改正によりすべての放射性廃棄物について船舶などからの海洋投棄を禁じています。この改正は、旧ソ連(現ロシア)が日本海などに液体放射性廃棄物を秘密裏に投棄してきたことに対し、世界的な批判が高まったことがきっかけとなりました。当時、アメリカやノルウェーなどロンドン条約の締約国は、放射能汚染水の処理への財政的・実務的支援をロシアに申し出、なかでも日本が積極的に働きかけたことが、ロシアがこの問題を乗り越える上で重要な役割を果たしました(注3)。グリーンピースは、ロシアによる日本海への放射性廃棄物の投棄現場を1993年に世界に公表し、同年の改正に貢献しました。


注1)ロンドン条約は1972年採択、日本は1980年批准。グリーンピースは、NGOとしてロンドン条約締約国会議等への出席と発言が認められています。
注2)署名の提出先は東京電力と日本政府としており、東京電力には8月18日までの一次集約分8,234筆を、8月27日に提出しました。
注3)詳細は、ブリーフィング・ペーパー 『東京電力福島第一原発からの海洋への放射能汚染水流出―日本の国際的責任を考える』(日本語) 『Leaking of radioactively contaminated water at Fukushima Nuclear Plant – A breach of Japan’s international responsibilities』(英語) ―2013年10月17日グリーンピース発行参照。


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