国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は11月2日、明治神宮外苑を例に、都市における樹木の冷却効果の調査結果をまとめた報告書『都市樹木の冷却能力ーー明治神宮外苑のケーススタディー』を発表しました。調査は今年9月にNPO法人中野・環境市民の会とオンライン署名発起人のロッシェル・カップ氏と共同で実施。神宮外苑の4カ所の表面温度を赤外線サーモグラフィーで測定するとともに、衛星画像から東京都の地表面温度を比較、検証しました。

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<調査方法>

明治神宮外苑での表面温度測定(2022年9月6日)

  • 明治神宮外苑の4カ所で、日の出(5:20)、午前(10:30)、午後(14:10)、日の入り(17:45)に赤外線サーモグラフィー画像を撮影した。

衛星画像による地表面温度比較(2022年6月30日)

  • ランドサット8号、9号が8日ごとに撮影した衛星画像のうち、6月30日午前10時30分頃の首都圏の画像を使用した。同日は東京都心で2022年で2番目に暑い日だった。

<主な調査結果>

  • 9月6日の表面温度調査では、日向のアスファルトの表面温度は、ピーク時で47度に達した。日陰のアスファルトエリアの表面温度のピークは33.5度だった。アスファルトのような色の濃い舗装材は熱吸収性が高いことが理由と考えられる。
  • また、日中の測定(10:30〜、14:10〜)では、日陰と日向のアスファルトの間で高い表面温度差が記録された。その差は14度~18度で、街路樹の冷却効果が確認された。
  • 6月30日の衛星画像によると、明治神宮外苑の地表面温度は都市部の近隣地域よりも2~4度程度低かった。
  • 代々木公園や新宿御苑のような主要な公園と、周辺の建築密集地との地表面温度の差はさらに明確で、公園の方が約6~7度も低くなった。

<提言>

  • 既存の樹木を保存し、さらに植樹する。新しく植樹された木は古木に比べて冷却能力が劣るため、ここでは保存を優先させる。
  • 樹木の過度な剪定は、樹冠を小さくしてしまうため、避ける。枝が自然に伸びるようにすることで、より多くの日陰を作り、冷却効果を高める。
  • 明治神宮外苑のすべての樹木の健康状態と移植の可能性について、独立した第三者による追加評価を行う。


グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ

「今回の調査で、樹冠の広い十分に育った木が、アスファルトの温度上昇を防ぐ働きがあることが改めてわかりました。神宮外苑の再開発について、事業者や都は新たな植樹などで緑は増えるとしていますが、既存の樹木と新しく植樹された木では、遮熱効果が大きく異なります。樹木の冷却効果を保つためには、可能な限り既存の樹木を保存していくことが必要です」

東京都立大学都市環境学部・三上岳彦客員教授(気候学)

「東京都内に散在する大規模な緑地では、夜間の放射冷却で生み出された冷気が周辺市街地に流出し、最大4度の気温を低下させるクールアイランド効果のあることが従来の研究調査で実証されています。一方、街路樹など、面的には狭い樹林等であっても、樹冠が日射を遮るパラソル効果と葉面からの蒸散効果で気温上昇を抑制するため、歩行者や屋外で仕事をする人たちにとっては熱中症の危険から守ってくれる必要不可欠の存在であり、これらを伐採することは健康被害の大幅な増加を招くことになります。」


以上