国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は本日、エジプト・シャルムエルシェイクで開催されている国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、気候変動による損失・損害に対応するための基金設立が合意されたことを受け、以下の声明を発表しました。

グリーンピース東南アジア事務局長(グリーンピースCOP代表団団長)、イェブ・サーニョ
「今回の損失・損害基金設立の合意は、気候正義(注1)への新たな一歩です。各国政府は、加速する気候危機によって壊滅的な打撃を受けている脆弱な国やコミュニティーを支援するための、長年の懸案だった新しい基金の礎を築きました。基金の詳細な議論には、気候危機に最も責任のある国や企業が最大の貢献をすることを保証する必要があります。そのためには、先進国が、低所得国が気候変動の影響に適応し、緩和を進め、回復力を高めるため1000億ドルの支援を履行することと、2025年までに適応のための資金を倍増させるという約束をまず守る必要があります。

気候変動対策と気候正義の推進は、勝者と敗者が分かれるゼロサムゲームではありません。自然は交渉しない、自然は妥協しないということを忘れてはなりません。損失と損害をめぐる、気候危機で被害を受けている人々の勝利は、気候変動対策を阻むものを暴き、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーを強化し、公正な移行を支援する大胆な政策を推し進める新たな行動に転換されなければなりません。そうしてこそ、気候正義達成に向けて大きく前進することができるのです」

グリーンピース・ジャパン キャンペーン渉外担当、小池宏隆
「COP27の議論を現地で注視しましたが、日本政府が約束した、気候変動被害への追加資金援助は、『実施のCOP』と位置付けられた今回のCOPの成果としては、不十分なものでした。温室効果ガス削減と規制緩和の加速、損失と損害への支援が強く求められる中、岸田文雄首相は会議に出席せず、日本からの発信も、資金援助の他には、水素利用とCO2の回収・利用・貯留(CCUS)推進という、その経済性と温室効果ガス削減効果が疑問視されているものでした。温室効果ガス削減目標引き上げも示されず、日本の消極的な姿勢が強く印象付けられる結果となりました。

来年、広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7)では、気候変動対策も主要議題の一つとなると予想されます。日本はホスト国としてリーダーシップ発揮が期待されますが、そのためにも、急速な変化を積極的に活用し、内燃機関車の新車販売禁止を含む化石燃料の段階的廃止、再生可能エネルギーへの積極的投資、グリーンジョブへの公正な移行を進めることが必要です。気候危機に歯止めをかける具体的で責任ある行動を、日本政府には期待します」

以上

(注1)すべてのステークホルダーにとって公正かつ平等な方法により、気候変動の被害や対策による負担・利益を、歴史的な排出量なども踏まえて共有し、持続可能な社会への移行を目指す考え方。