札幌で開催された先進7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境大臣会合は、4月16日、共同声明を発表し、閉幕しました。再生可能エネルギー拡大のための目標設定など前進も見られましたが、目指すべき目標からは程遠い結果となりました。このうち、CO2削減、ゼロエミッション車(ZEV)導入拡大についてのグリーンピース・ジャパンのコメントは以下の通りです。

グリーンピース・ジャパン、気候変動・エネルギー担当 ダニエル・リード

「2023年3月に採択された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 (AR6)統合報告書では、CO2の排出量超過(オーバーシュート)について明確な警告が出されているにもかかわらず、今回G7は、排出量の大幅削減、化石燃料の段階的廃止の明確な期限、脱炭素社会への移行を加速させるための野心的な行動計画を打ち出すことができませんでした。世界のエネルギー由来のCO2排出量の25%を占める7カ国が、2030年までに石炭火力発電所を廃止することにさえ合意できなかったことは非常に残念です。

世界全体の約24%のエネルギー起源CO2を排出する運輸部門の中で、その大部分を占める道路部門の排出削減をめぐっては、2035年までに2000年比で、G7諸国の自動車から排出されるCO2半減目標が議論されていましたが、これについては『機会がある』との表現に後退しました。さらには、多くの国が期限を明記したZEV販売目標の設定を支持する中、日本は当初より消極的な姿勢を見せており、結局、具体的な数値目標は採択されることはありませんでした。1.5度目標を届く範囲に留めておくためには、急速な削減が求められていますが、日本は議長国として自動車産業におけるそのような削減野心を示すことはできませんでした。

また、日本が交渉草案で提案したハイブリッド技術が、共同声明から最終的に削除されたことは、道路部門の脱炭素化のための全方位パワートレイン戦略が世界に通用しないことの証左です。世界のトレンドを踏まえれば、バッテリー電気自動車(BEV)が唯一の現実的な選択肢であることは明白です。例えば、Eフューエルなどの合成燃料は非効率で実用的ではなく、水素自動車は現在大きな需要がなく、ハイブリッド車では必要な排出量削減を実現することができません。

世界のZEV販売台数は2022年には14%に達しています。(注1)このような進展にもかかわらず、日本は各国の取り組みに追いつくための野心的なイニシアチブを取らず、過去に他の先進的な産業が衰退していったように、今度は自動車産業を衰退させてしまう恐れがあります。G7広島サミットまで時間がある今こそ、日本は自動車産業における脱炭素へリーダーシップを発揮する好機です。岸田首相は、内燃機関(ICE)の廃止と、ZEVの導入に向けた野心的な目標を設定すべきです」

以上

(注1)IEA Emissions in 2022