地球温暖化は、気温を上昇させるだけでなく、異常気象の深刻化、海氷の融解による海面上昇、感染症媒介生物の生息域の変化や感染拡大、野生生物の住みかや生態系の破壊などの様々な影響を引き起こします。

世界の海面上昇は今までにないペースで加速していて、数年前には世界平均で今世紀末までに1.5〜2.5メートルの上昇が起きると予測されましたが 、2021年現在、この最大2.5メートルという予測でも、楽観的な見通しであるという見解も示されています *1

2030年9月、東京が水に浸かる日

積極的な気候危機対策をしないまま、2030年を迎えた東京の姿をご覧ください

海面上昇の主な原因は、グリーンランドや南極大陸の氷河や氷床に貯蔵されていた氷が溶けて海に流れ込んで海水の量が増えたり、海水が温められて海の体積が膨張することによります。

全国で600万人以上、東京で約83万人が受ける極端な海面上昇の影響

海面上昇は、島国である日本にとって大きな脅威です。

グリーンピースの発表した海面上昇と高潮のシミュレーションでは、このままの対策で2030年を迎えると、日本全国で600万人もの人が浸水や冠水の影響を受ける可能性があることがわかりました。

他にも、平和への願いが込められた原爆ドームや、新潟県や茨城県の稲作が盛んな地域などでも冠水リスクが高く、守られるべき歴史的な世界遺産や日々の食生活に、直接影響を与える海面上昇リスクが日本にもあることがわかっています。

広域にわたって浸水・冠水リスクのある新潟の稲作地域(オレンジ色の部分)

とくに、東京をはじめ、人口や産業が集中する大都市圏の名古屋や大阪の沿岸付近に広がっているゼロメートル地帯や低地において、大きなリスクが懸念されています。

東京では、台風に伴う高潮などによって生じる極端な海面上昇で、約83万5,000人(23区の人口の9%)が浸水・冠水の影響を受けると予測されます。

さらに、このまま積極的な気候危機対策をせず2050年を迎えてしまうと、佐賀県の約25%、福岡県の約14%、茨城県の約13%の広範囲にわたるエリアが浸水・冠水してしまう可能性もあります。

海面上昇によって、日本の人口の約30%の人たちが、2100年までに住む場所を失うリスクを抱えることになります。

日本の海面水位はすでに8.7センチ上昇

47都道府県のうち、39都道府県が海に面する日本沿岸の平均海面水位は、30年前よりも、すでに8.7センチ上がっています*2日本の浜辺にも、消失の危機が迫っています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測では、2081年から2100年の消失率は、「最も気温上昇の低いシナリオ」では62%「対策なしシナリオ」では、83%と言われています*3

(注)「最も気温上昇の低いシナリオ(RCP2.6)」は、厳しい温室効果ガス排出削減対策をとり、最も気温上昇を低く抑えられた場合のシナリオを指し、「対策なしシナリオ(RCP8.5)」は、積極的な対策を取らず、最も気温上昇が高くなった場合のことを指しています。

影響を受ける東京のGDPは、約7.5兆円

海面上昇の影響は、経済的な打撃にもなり得ます。

新たな分析結果からは、2030年の東京の経済的影響は、都の総GDPの約7%にあたる680億ドル(約7.5兆円)に上るとみられています(2030年に極端な海面上昇による浸水・冠水などにさらされた場合)*4

いまならまだ間に合う。足りないのは政治の決断と行動

世界中の科学者たちは、これまでもずっと、より野心的で、より早い段階からの気候危機対策の必要性を訴えてきました。その声に耳を傾けた日本をはじめとする世界中の人たちが、気候危機について学び、暮らし方や買い物の選択を変え、政治や社会に呼びかけ、気候危機や海面上昇を抑えるために日々行動しています。

各国も気候変動対策を進めていますが、このままの対策では、2100年の地球の平均気温は、産業革命前と比べて、5度以上の上昇になると予測する複数の研究も、近年発表されています。

肉を食べる量を減らす、電力会社を自然エネルギーに切り替えるなど、個人でできる気候危機を悪化させないための行動はたくさんありますが、より大きく、根本から社会を変えていくには、気候危機に真剣に向き合い、原発も化石燃料も使わずに、温室効果ガスを出さない社会づくりを実施する政治の決断と行動が、どうしても必要になってきます。

菅義偉首相は2030年までに、2013年と比べて温室効果ガスの排出を46%減らす目標を立てましたが、Fridays for Future Japanのメンバーの1人は、

「私はこの数値を聞いた時、みなさん方大人に、『あなたたちの命と未来はいらない』と宣告されたように感じました。絶望しました。このNDC46%という目標は、気候危機から国民の命を守るという責任を放棄したように思います」

と、訴えました。

いますぐ積極的な気候危機対策を実施していけば、次の世代が地球に安心して住み続けられる未来を残せるチャンスが、まだあります。

あと戻りができなくなる前に、気候危機を回避する脱炭素社会を自分の暮らす地域から、自分たちで実現していきませんか?

※海面上昇シミュレーションマップは、IPCCによる4つの排出シナリオのうち、厳しい排出削減対策をとった場合(RCP2.6)と、積極的な対策を取らなかった場合(RCP8.5)の2つのシナリオをもとに、全国の浸水・冠水状況などをそれぞれ表示することができます。また、今回のシミュレーションには、防潮堤や防波堤のデータは含まれていません。そのため、一部の防潮堤などの海岸保全設備がある地域では、影響が軽減される可能性があります。

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