今年の夏も暑かったですね。年々気候変動が悪化していることを肌で感じます。気候変動の大きな原因である温室効果ガスの排出。その原因の一つが電気などエネルギーをつくるための化石燃料の燃焼です。しかし、中でも二酸化炭素の排出の多い石炭火力発電をこれから動かそうという計画もあります。その計画への意見書提出が始まりました。

いまもやってる石炭火力が気候危機の原因

日本の電気の7割が化石燃料からできており、その3割近くを石炭が占めています。そして、石炭火力発電の二酸化炭素排出量は、天然ガスの約2倍(約860g-Co2/Kwh) とずば抜けて二酸化炭素排出の多い発電方法です。

図:ISEPウェブサイトより:日本全体の電源構成(2020年速報) 出所:電力調査統計などよりISEP

そのため、ポルトガル(2021年まで)、イギリス(2024年まで)、イタリア(2025年)、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、チリ(2030年まで)などが、2030年までの石炭火力の廃止を決めています(注1)。

しかし、日本は廃止どころか、今でも建設を続けています。日本には現在167基もの石炭火力発電所があり、さらに7基を計画ないし建築しています(注2)。現存する発電所が生み出す電力で電気は足りているのに、もっとも二酸化炭素を排出する石炭火力をまだ増やそうとしています。

最新型の石炭火力も大きな二酸化炭素排出源

”いや、最近の石炭火力発電は、二酸化炭素排出を減らしているんだ”、という話しを聞いたことがあるかもしれません。

でも、下のグラフでみてわかるように、従来型の石炭火力発電とたいして変わらないんです。(単位はg-CO2/kWh)

図:Japan Beyond Coal ファクトシート「石炭火力発電の問題」より

にもかかわらず、政府や事業者は、最新型の石炭火力発電を「クリーンコール」と呼んで推進しています。これは「グリーンウォッシュ(環境に配慮したように見せかけること)」です。

石炭なしでも電気は大丈夫

戦争などの影響で電力の需要が逼迫し、「石炭火力もやむなし」という声も聞こえてきます。しかし、気候危機を考えれば、もう、石炭火力を使う余裕はありません。電力は、建築物の断熱性能を上げることや、機械などの効率化により、大幅な省エネが可能です。その上で住宅や駐車場、ビルの屋根への太陽光パネルの設置や、ソーラーシェアリング(畑などの上に太陽光パネルを設置して太陽光を「シェア」するしくみ)、風力、とくに洋上風力の普及によって、自然エネルギー100%でまかなうことは可能です(注3)。

いま最優先されなくてはならないのは、少しでも温室効果ガスの排出を減らして、気候変動の加速をとめることです。

これ以上、温暖化を悪化させる化石燃料の使用はもうやめる時がきているのです。

松島火力発電所 写真提供:350NewEneration

ゾンビのように蘇る石炭火力発電所

いま、古い石炭火力発電所に、石炭をガス化する発電設備を付け加え、排出する二酸化炭素の量をわずかに減らして使おうという電源開発会社(Jパワー)による、GENESIS松島石炭火力発電所(長崎県)の建設計画が問題となっています。

「減る」二酸化炭素の量は1割程度(注4)。

これが許されれば、日本中にある老朽化した石炭火力が次々にこうした「設備」をつけて蘇りかねません。

昨年の、環境アセスメントの計画段階配慮書手続きのときには、日本各地から 855 件の市民意見の提出がありました。これは、石炭火力発電所の環境アセスメント史上最多だそうです。グリーンピース・ジャパンが事務局をつとめる脱炭素のための市民のプラットフォーム「ゼロエミッションを実現する会」でも、意見の提出を呼びかけ、勉強会もしました。

今、環境アセスメントの次の段階、「環境影響評価方法書」の縦覧が始まっています(注4)。これに対して、市民は事業者に意見を送ることができます(注5)。締め切りは10月17日(当日消印有効)です。

若いボランティアが集まって石炭火力に反対しているグループ「350NewEneration」はこうした石炭火力を「石炭ゾンビ」と呼んで、キャンペーンをおこなっています。350NewEnerationは、9月の平日夜9時から、連日勉強会をしてくれます(詳しくは特設サイト)。

また、「ゼロエミッションを実現する会」でも、締め切り日まで、毎週土曜日10時からの「定例相談会(注6)」の中で「意見書を書く会」をしますので、ぜひ、お気軽にご参加ください。

今すぐ書きたい方は…..

意見書は、封書で提出してください。(プリンターがない方は、コンビニエンスストアのプリントサービスを利用することもできますね)

(どうしても封書で出せない場合は別の方法があります)

意見書には、以下を明記してください。

・氏名及び住所

・意見書の提出の対象である方法書の名称「GENESIS松島計画 環境影響評価方法書」

・方法書についての環境の保全の見地からの意見(意見の理由を含め、日本語で記載してください)

意見書の提出期限:2022年10月17日(月)(当日消印有効)

意見書の提出先:

〒104-8165

東京都中央区銀座6丁目15番1号

Jパワー 立地・環境部 環境室

TEL:03-3546-2211(代表)

意見書には、あなたの意見を自由にお書きください。

たとえば、わたしは以下のような意見を送ろうと思っています。

・最新の設備を装備しても、大量の二酸化炭素が排出されます。再生可能エネルギーの設備に転換してください。

・石炭火力は多くの先進国で2030年までに廃止されます。これから稼働させる計画は無駄であり、日本の2030年に向けての温室効果ガス削減目標の達成を阻害します。

・石炭火力は、温室効果ガスを大量に排出するだけなく、硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんなどの有害な物質も排出します。周辺住民の健康を考え、再生可能エネルギーの設備に転換してください。

これまでも、いくつかの石炭火力発電所の建設計画が中止されています。これは、市民の一人ひとりが反対の声をあげたからこそです。

熱波、台風の激化、洪水…. これ以上、気候変動を悪化させないよう、行動していきましょう。

封書で出せない方は..

GENESIS松島石炭火力発電所に反対してキャンペーンを展開している市民のネットワーク”ACT松島”が、封書で出せない方のために、以下のフォームを用意しています。以下に入力すると”ACT松島”が封書で提出してくれます。(こちらの締め切りは10月12日です)

「GENESIS松島計画 環境影響評価方法書  」への意見フォーム(10月12日まで)

注1 出典:E3G Coal Transition Progress Tracker: OECD & EU Countries

注2 出典 Japan Beyond Coal 

注3 複数のNGOが再生可能エネルギー100%のシナリオや戦略を発表しています。

WWF 2050年排出ゼロを実現する!日本の「エネルギーシナリオ」

自然エネルギー財団 脱炭素の日本への自然エネルギー100%戦略

グリーンピースでも、東京都の再生可能エネルギー100%シナリオをISEPとともに発表しています。「東京都の再生可能エネルギー100% シナリオ~グリーン・リカバリーによる脱炭素化ロードマップ~」

注4「GENESIS松島計画 環境影響評価方法書」の届出・送付及び縦覧・説明会について

注5 出典:GENESIS 松島計画 計画段階配慮書 に対する意見 気候ネットワーク

注6 ゼロエミッションを実現する会

グリーンピース・ジャパンが運営している脱炭素をめざす市民のプラットフォーム。ぜひ、以下よりご参加をお申し込みください。

Facebook グループ こちらから

Slack グループ 申し込みフォーム

参考:GENESIS松島計画についての特設サイト「ACT 松島」