地球温暖化対策を議論する国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が11月6日から18日までエジプトの都市シャルムエルシェイクで開幕されます。

COP22がアフリカで開かれるのは、2016年にモロッコで開催されて以来です。COPは毎年、世界の異なる地域の異なる国がCOP議長国を務め、世界のリーダーを招集し、優先事項を定義します。今回のCOPでは、どのような目標が掲げられ、どのような議題が注目されているのでしょうか。

COP(締約国会議)とは?

COPとは、Conference of Parties(締約国会議)の略で、1992年にまとめられた国連気候変動枠組条約の締約国会議のことを指し、地球温暖化に対する具体的政策を定期的に議論する会合です。

前回のCOP26は、2021年11月にスコットランドのグラスゴーで開催され、約200カ国から指導者と代表者が集まりました。

今回のCOP27が開催されるエジプトのあるアフリカ大陸は、気候変動に脆弱な地域です。アフリカは、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量が他国に比べて少ないにも関わらず、熱波、干ばつ、洪水など気候変動が原因で深刻な損害を被っています

そのため、議長国のエジプトは、気候変動の危機に直面するアフリカ諸国の人々の暮らしを守るため、「食の安全保障」をアフリカの適応の重要課題の一つと捉えており、今回はそのための資金調達などの議論に注目が集まっています。

COP27の目標4つとCOP26の成果

COPは毎年、世界の異なる地域の異なる国がCOP議長国を務め、世界のリーダーを招集し、優先事項を定義します。アフリカで開催されるCOP27の議長国であるエジプトは、サミットの4つの重要な目標を次のように定義しています。

緩和:温室効果ガス排出量を削減し、地球の平均気温上昇を2°C より十分に低く抑えること。 

適応:気候変動への耐性を強化し、世界で最も脆弱なコミュニティを支援するために「決定的に必要な進展」が得られること

資金:途上国支援のために約束した年間1,000億ドルの提供を含め、気候変動資金について大きく前進させること

協力:国連の交渉はコンセンサスに基づいているため、合意に達する「すべての利害関係者からの包括的かつ積極的な参加」 が得られること

国連の気候科学者である気候変動に関する政府間パネル (IPCC) によると、世界の平均気温はすでに 1.1℃ 上昇し、このままの各国の排出削減目標(NDC)では、2.4Cから2.7Cの地球の平均気温上昇につながると推定されています。

昨年のCOP26では、クリーンエネルギーへの切り替え分野などにおける米国と中国の今後10年間の協力100以上の国が2030年までに森林破壊を止めることに合意するなどの成果が得られました。

一方で、COP26の焦点のひとつになった年間CO2排出量の40%を占める石炭の使用の廃止に関しては、議長国である英国は石炭火力の「廃止」を求めましたが、中国やインドなどからの意見を考慮し「段階的に廃止」ではなく、「段階的な削減」というより弱いコミットメントとなりました。

今年もどのような「合意」や「宣言」がなされるのか注目が集まっています。

COP27において議長国はどのような議題を優先したいと考えているのか見てみましょう。

COP27注目議題1:途上国への経済援助と資金フロー

気候変動の影響で激化する台風の影響を大きく受けているフィリピンの農家たちが、スーパー台風カーディングの後、COP27に参加する世界のリーダーたちに向け「損失と損害」の資金増加を求め抗議しました。横断幕には、「気候汚染者へ: 損失と損害を補償してください」というメッセージが書かれており、歴史的に排出国であった国々に対し、気候への悪影響の責任を取るように要求しています。

気候変動対策には、気候変動を抑制するための「緩和」、緩和策を実施した上で抑えきれない気候変動の影響に適応するための「適応」、それでも避けられない損害を最小限にするための「損失と損害」の3つのフェーズがあります。

パリ協定の第9条では、先進国から開発途上国の「緩和」および「適応」への資金提供が義務づけられており、2015年に開催されたCOP21では、開発途上国がクリーンエネルギーに切り替えるのを支援するために、先進国は2020年までに年間1,000 億ドルを開発途上国に提供することを約束しましたが、実現していません。

今年はパキスタンやバングラデシュでの大洪水やアフリカで深刻化する干ばつや熱波など、すでに起こっている気候変動の影響に対する「適応」と「損失と損害」に対する開発途上国への経済支援が重要視され、支援=資金だけではなく、技術移転やキャパシティビルディングも含めた支援が期待されています。

気候変動資金の推移(USD billion)
OECD(2022.07) Aggregate Trends of Climate Finance Provided and Mobilised by Developed Countries in 2013-2020

2020年の気候変動資金は48%が緩和策へと使用され、適応分野への資金は28%でした。しかし適応分野は徐々に資金量を増加させており、昨年のグラスゴー気候合意でも「2025年までに適応資金を2019年比で倍増」盛り込まれたことからCOP27での資金フローの変化に注目が集まっています。

温室効果ガスを多く排出する国は「適応」や適応できない気候変動の影響に対処するための「損失と損害」には十分に資金を出してきませんでした。また、これまでは気候変動の影響を受けやすいグローバルサウスの問題とされてきた「適応」や「損失と損害」の分野の問題も全ての国の問題になりつつあります。

ファイナンスに関しては11月9日「ファイナンスの日」を中心に話し合いが進められます。

COP27注目議題2:持続可能な農業と食料安全保障

11月12日の会合テーマは「適応と農業」です。

今年はウクライナ侵攻によりエネルギー価格の高騰や食料不足が発生し、農産品の価格が急騰しただけではなく、悪化する干ばつ、洪水、熱波、豪雨、洪水など気候変動の影響を受け、農作物が甚大な被害を受けるなど食料危機が悪化した1年となりました。

2021 年の時点で、8 億 2000 万人以上が飢餓に苦しんでおり、食料安全保障は今年の議長国エジプトにとって重要課題の一つです。

食料不安が続く中、食料安全保障、農業生産性の向上、食料生産の損失削減、小規模農家の回復力と生計を強化、農業と食料システムの回復力を構築するための解決策、持続的な農業などについて深く議論されることが予定されています。

今年、会場には初めて、国際的な食品組織の連合が運営する公式のフードシステムパビリオンが設置されます。 FOLU (Food and Land Use Coalition) の政策および国際関与の責任者は「これほど食料に関して力を入れたCOPはありません」とコメントし、食の分野における進展が期待されています。*

スーパー台風カーディングの後、フィリピンの農家は、Rice Watch Action Network と グリーンピース・フィリピンの活動家と共に、COP27に参加する世界のリーダーたちに向け「損失と損害」の資金増加を求め抗議しました。

また、世界の農業・食料システムは、すべての温室効果ガス排出量の 3 分の1 以上を排出しており、生物多様性損失の主な原因となっています。また、食品廃棄物の温室効果ガス排出量を国に例えると、世界で3 番目に大きい排出国に匹敵します。

気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は、土地利用部門が全世界の温室効果ガス排出量の約 4 分の 1 に寄与していると推定しており、WWFは生物多様性の喪失において世界的に重要な懸念事項として農業の拡大による土地の利用・管理方法の変化を指摘しています。

1.5℃目標を達成するためには、森林伐採を止め森林再生に力を入れ、食料と土地利用システムを変え、海洋生態系を保護することが必要です。

また、工業型農業の継続は土地や水資源の劣化にもつながっており、全世界で生産される食料の3分の1がさらに失われる可能性があります。気候変動は食料生産性に劇的な影響を与え、食料生産性はすでに21%減少しています。IPCCの第2次作業部会の最新報告書によると、サハラ以南の労働人口の55~62%は農業従事者であり、農業は気候変動の影響を最も受けやすい部門の一つであるにも関わらず、十分な技術や資金が行き渡っていません

COP27では、増大する食料需要を満たすために必要な解決策を、気候変動に強い方法でどのように拡大するかに特に焦点が当てられます

食品の未来のためのグローバルアライアンスの新しいレポートによると、公的気候資金のうち、フードシステムに使われるのはたった3%です。これは、エネルギーおよび運輸部門に向けられた金額の22分の1です。 小規模農家は世界の食料の約 3 分の1を生産しているにもかかわらず、その資金のわずか 2% しか小規模農家に割り当てられていません。食料と土地利用に割り当てられる気候資金の増加が期待されます。

COP26では、自然の保護と回復を目的として、世界最大のアグリビジネス企業12社が1.5°Cの道筋に沿って商品関連の森林破壊を食い止めるための野心的なロードマップに取り組みました。COP27では、森林破壊を止めるために行った具体的な行動が明らかになることが期待されます。


参照:The first ‘food COP’: Why agriculture is finally on the table at the UN climate summit

COP27の成功とは?

パキスタン、シンド州ハイデラバード。モンスーンの大雨で洪水が発生し、下水道が破壊された。水の中を歩く人々。2022年7月26日撮影 Asianet-Pakistan / Shutterstock.com

最近の深刻な洪水がパキスタンに影響を与えた後、パキスタンの外務大臣は、「損失と損害」の資金提供がされなければならないと述べました。

気候変動の影響をすでに深刻に受けている国にとって、気候変動に対する責任の大きい国からの「適応」そして「損失と損害」における資金提供の確保はCOP27の成功の要件の一つと言えます。

また先進国は、中国、インド、ブラジル、インドネシア、南アフリカなどの大規模な発展途上国から、化石燃料の中で最も汚れた石炭から脱却するためのより多くのコミットメントを求めています

一部の科学者は、COP27 で何が合意されても1.5Cを達成するにはもう遅すぎると指摘しています。それほど切迫した気候変動を抑制するためには、現在の各国の排出削減目標(NDC)の引き上げや各業界の脱炭素化の加速、そして森林や生物多様性の回復につながる資金や政策への合意が全ての参加国にとってCOP27の成功の重要な要件となるでしょう。

グリーンピースは、11月6日からエジプトで開催される第27回国連気候会議(COP27)の公式オブザーバーとして、気候変動に脆弱な国の人々の要求と声を会議指導者に伝え、1.5℃目標に沿った排出削減約束、気候変動適応策の強化、気候被害を補償する仕組みの構築を求める闘いを行っていく予定です。

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