プラスチックで窒息する巨大クジラ。溶ける氷のペンギンの彫刻。熱帯雨林の音で作られたダンストラック。ビルの屋上で繰り広げられる、まばゆいばかりの空中ダンス。グリーンピースは50年以上の歴史の中で、芸術と創造性の力を使って、社会と環境の変革を求めてきました。
 アートは、多くの人にとって身近で、力強く説得力のある環境活動の媒体となりえます。私たちは、世界中のアーティストや専門家と協力し、すべての人にとってより良い世界を実現するために、問題を提起し、抗議し、行動を喚起することを目的とした創造的なキャンペーンを展開してきました。ここでは、過去15年間のグリーンピースの芸術活動の例をいくつかご紹介します。

有機米アート (タイ)

有機栽培の田んぼの空撮。 最初の田植えから3カ月後、稲刈りの準備がほぼ整ったあとにアートを作成しました。
このライスアートは、タイで最も重要な食用作物を遺伝子組み替えの脅威から守るよう、
政府に対して呼びかけるものです。@Greenpeace/Athit Perawongmetha

2009年、グリーンピース・タイは、東南アジア有数の豊かな米の生産地であるタイ中央平原にある田んぼを譲り受け、食べられるアートとして生まれ変わらせました。約16,000平方メートルの田んぼに2種類の有機米を植え、田んぼで働く農民を表現しました。

4ヵ月後には、数百人のグリーンピース・サポーター、ボランティア、活動家が農家に加わり、米を収穫し、分け合いました。

世界中のメディアで広く紹介されたこのライスアートは、タイの豊かで多様な米の伝統を讃えています。また、この地域で最も重要な食用作物を遺伝子組み替えの脅威から守り、持続可能な農業を支援するよう、各国政府に呼びかけるものでもありました。

溶ける「ダ・ヴィンチのスケッチ」(北極)

グリーンピースの砕氷船「アークティック・サンライズ」が、北極の海氷上にある銅で
ダ・ヴィンチのスケッチ「ヴィトルヴィアンマン」を再現する作業をサポートしました。
グリーンピースは、気候変動に対する行動を起こす必要性を強調し、世界の指導者たちに
北極の氷の融解を認識させるために、この作品を依頼しました。© Nick Cobbing,Greenpeace

2011年、アーティストのジョン・クイグリーは、グリーンピースの砕氷船「アークティック・サンライズ」の乗組員の協力を得て、北極海の海氷上にレオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチ「ヴィトルヴィアン・マン」を銅で再現しました。巨大な作品は、流氷が溶けるにつれてゆっくりと氷海に滑り込んでいきます。

クイグリーは「気候変動は文字通り、私たちの文明の体をむしばんでいる」と語りました。彼(ダ・ヴィンチ)がこのスケッチをしたときは、啓蒙主義、ルネッサンス、今日まで続くこの革新的な時代の幕開けでしたが、私たちの化石燃料の使用はそれを脅かしています」 と述べました。

グリーンピースは、北極圏の氷が縮小している事実を広く伝え、世界の指導者たちが気候変動に対して早急に行動を起こさなければならないことを訴える目的でこの作品を依頼しました。

その年の夏、海氷の最小値は記録的に低くなり、その後もさらに減少を続けています。もし、夏に海氷が完全になくなってしまったら、人類や生物多様性に重大な影響を与えることになります。

※アート建設後にすべての材料を撤去し、銅を再利用しました。

楽園の翼 (世界20カ国)

マレーシアのアーティスト、リー・ホイ・リンとその生徒たちは、炎天下や激しい雨の中で何日も作業を続け、
クアラルンプールの歴史ある中華街に新しい壁画を公開しました。© Nandakumar S. Haridas / Greenpeace

ジャカルタからメキシコシティ、ニューヨークからプラハまで、アーティストたちがグリーンピースと協力し、パーム油産業によるインドネシアの熱帯雨林の破壊に注意を喚起するために、街の壁をキャンバスにしました。

2018年の「Wings of Paradise」プロジェクトでは、世界20都市で25平方メートルを超える巨大壁画が描かれました。このプロジェクトは、グリーンピースが多国籍企業に対して、熱帯雨林やその生物多様性、コミュニティを保護し、森林破壊者からパーム油を買うのをやめるよう呼びかけたキャンペーンの一環でした。

「”ウィングス オブ パラダイス “の壁画は、私たちのアートが、パプアの熱帯雨林とその豊かな生物多様性を守り、行動を促することを願っています」と、アーティストの一人、リー・ホイ・リンは、30人のボランティアとともに、マレーシアのクアラルンプールで106平方メートルの壁画に命を吹き込みました。

アフリカのゴミマスク(ナミビア)

この作品は、グリーンピース・アフリカのポイ捨て防止とリサイクルキャンペーンとして制作された「African Trash Masks」と題する広告です。このキャンペーンは、公害に対する意識を高め、前向きな変化を促すという
グリーンピースの継続的な取り組みの一環として行われたものです。マスクは、才能あるナミビアのアーティスト、Petrus ShiimiとSaima Iitaによって制作されました。アフリカン・トラッシュ・マスク」は、アドバンテージY&Rがコンセプトとデザインを担当し、権威あるカンヌライオンズ・フェスティバル・オブ・クリエイティビティの
プラネット部門で2位を獲得しました。© Advantage​ Y&R

消費主義が生み出すごみに意識を向けるため、グリーンピース・アフリカは2017年に広告代理店のアドバンテージY&Rと協力し、「アフリカン・ゴミ・マスク」と題した一連の広告を制作しました。マスクはアフリカではおなじみのアイコンであり、その力強いイメージを使って、汚染と将来の世代への影響について話すきっかけを作るために使用されました。

印象的なマスクは、ナミビアのアーティスト、ペトルス・シイミとサイマ・イイタが制作したものです。この広告は、新聞や街頭の電柱に掲示されたほか、学校や大学でポスターとして配布され、若い人たちが責任を持ってごみを処分することについて考えるよう促しました。

バーティカルダンス(台湾)

この空中ダンスは多くの観客を魅了し、プラスチック汚染問題への関心を呼び起こました。
© Greenpeace / Chia-da Huang

2017年、グリーンピース台湾のボランティアは、環境保護庁(EPA)の建物の側面を懸垂下降して大胆な空中ダンスを披露し、下にいる観客たちを驚かせました。プロのダンス振付師やトレーナーと協力し、参加者はプラスチック廃棄物を誤って食べて窒息死した海洋動物を表現するために6カ月間トレーニングを受けています。

このダンスは、海洋プラスチック汚染の問題を強調し、プラスチックの使用を削減する持続可能な方法を促進するイベントの一環として行われました。

セイブ・ アワ・サウンド  (東南アジア

2017年、インドネシア人DJのニンダ・フェリナは、グリーンピースと大手広告代理店BBDOシンガポールのSave Our Soundsプロジェクトのために、パプアの熱帯雨林の音を録音、保存し曲を作成しました。この曲は、ジャカルタで発表された後、タイで開催されたWonderfruit FestivalでDJ Nindaのセットの一部として演奏されました。

熱帯雨林が消えれば、野生の生きものたちの魅力的な鳴き声も消えてしまいます。2017年、インドネシア人DJのニンダ・フェリナは、グリーンピースと大手広告代理店BBDOシンガポールのSave Our Sounds(SOS)プロジェクトのために、西パプアのカラソウ谷を訪れ、パプアの熱帯雨林の音を録音、保存しました。

これらのユニークな音を用いて、国際的な音楽プロデューサーであるベン・ローゼンとコラボレーションし、ダンスミュージック・トラック「Birds of Paradise」を制作しました。この画期的なプロジェクトの目的は、熱帯雨林の音をジャカルタの人々に届け、森林破壊に対する人々の意識を高めることでした。

「森の声に耳を傾けることを学んだことで、私はインスピレーションを受けました。この音が私の音楽に新しい色を与えるだけでなく、他の人たちが森に関心を持ち、森を守るために行動を起こすきっかけになればと願っています」とDJ ニンダは語っています。

この曲は、ジャカルタで発表された後、タイで開催されたWonderfruit FestivalでDJ Nindaのセットの一部として演奏されました。

また、西パプアのニンダとチームが録音した森の音を使って、プロジェクトの詳細を確認したり、独自の曲を作成したりすることもできます。

リンクwww.sosforests.org

巨大窒息クジラ (イタリア)

イタリアのヴィアレッジョのカーニバルで、使い捨てプラスチックで窒息死する巨大なクジラがパレードに参加し、大企業にプラスチックからの脱却を呼びかけました。 © Francesco Alesi /Greenpeace

グリーンピース・イタリアは、2019年にトスカーナ州ヴィアレッジョのカーニバルに参加し、使い捨てプラスチックで窒息した瀕死の巨大クジラを取り上げました。アーティストのロバート・ヴァンヌッチが制作した高さ20mの作品は、海を汚染するプラスチックから脱却するよう、大企業に強い思いを伝えるためのものでした。クジラと一緒に行進したのは、「海は使い捨てではない」というスローガンを掲げたグリーンピースのボランティアたちです。

「私たちの海と地球を守るために、使い捨てプラスチックの使用を直ちに止めなければなりません。私たちは何年も前から、大企業に対してプラスチック包装への依存を減らすよう求めてきました。

ヴィアレッジョのカーニバルのような有名で参加者の多いイベントから、海に関するこのような緊急のメッセージが発信されることは重要です」と、グリーンピース・イタリアの有害物質キャンペーン担当者ジュゼッペ・ウンゲレーゼは述べています。

「消える」ペンギンの氷の彫刻

東京都新宿区付近で「消えるペンギン」の氷の彫刻を展示しました。 © Greenpeace / Taishi Takahashi

2020年、東京、ソウル、ロンドン、ブエノスアイレス、ケープタウンなど、世界中の首都に「消える」ペンギンの氷の彫刻が登場しました。この作品は、海洋野生生物を保護するための世界海洋条約への緊急行動を要求するものでした。

ヒゲペンギンのコロニーは、約50年前の調査以降、激減しているのです。2030年までに世界の海の30%を保護区にする海洋保護条約によって、海洋生物の生息地を守り、生態系を回復させることを目的としています。

違法採掘の抗議 (ブラジル)

ブラジルの先住民の土地での違法採掘を合法化することを目的とした法案に対し、先住民の指導者と活動家が
ブラジリアで抗議活動を行いました。© Tune Fernandes / Greenpeace

2022年4月、ブラジルの先住民の指導者と活動家は、グリーンピース・ブラジルと共同で、先住民の土地での違法採掘を合法化することを目的とした法案に抗議するため、クリエイティブな抗議を実施しました。参加者は、違法採掘による死者数、暴力、苦悩を表す血と泥で汚された鉱山エネルギー省の建物に向かって行進しました。

建物の外には、「犯罪」と書かれた巨大な金塊が置かれ、バイーア地方のアーティスト、イブライム・ナシメントが制作した、先住民が鉱山に対して行った戦争を表現した巨大なバナーとともに展示されました。ペンキ、泥、血で作られたこのパネルには、さまざまな民族の代表者が手や足を使い、血や泥で画面を埋め尽くすという、さまざまな人々の想いを表現していました。

「先住民族だけではありません。私たちは皆、首まで泥まみれになって、この恐怖のシナリオを生きているのです。私たちは人を殺し、文化を破壊しています。これ以上続けてはいけません。このアートは、闘争の一部であり、活動的な行為であるため、特別な意味を持っています」とイブライム氏は語りました。

環境への想い (日本)

撮影は九十九里浜で一日がかりで行われた© Hidenori Tanaka / Greenpeace

2018年8月千葉県の九十九里浜で撮影されたWEBムービー『混獲-Bycatch-』。

夜の海辺を舞うダンサーたちが身につけているのは、実際の漁で使われた網を使った「漁網ドレス」です。様々なリサイクル素材を使ってドレスを生み出す、ロンドン在住の日本人コスチュームデザイナー・タニクミコ氏が制作したリサイクル漁網のドレスをまとった2人のダンサーが、漁網に翻弄される海の生きものの苦しみを芸術的に表現しました。

「グリーンピースの海洋生態系チームでは、マグロなどの絶滅危惧種をはじめとした過剰漁業の問題をテーマに活動してきました。しかし、漁業をサステナブルに変えるキャンペーンには熱烈なサポーターの方々がいるものの、関心を持ってくれる方を増やすことに頭を悩ませていたんです。

この作品をきっかけに私たちが海にどれだけ大きな負担を強いていることに気づくきっかけになるんじゃないかと思いました。」とプロジェクトリーダーの林は語っています。

「Nature Sound Project」(日本)

風になびいてこすれる草木音や、遠くに聞こえる鳥の声にSIRUPさんとShin Sakiuraさんは
マイクを傾けていました。@harutaaaaaaa

シンガーソングライターSIRUPさんと音楽プロデューサーでありギタリストのShin Sakiuraさんとのグリーンピースの共同プロジェクト『FOREVER』。

美しい日本の自然、そこで育まれる文化や暮らしにも気候変動が影響している。その現実を知り、大切なものを守るために一緒に行動したい仲間とつながろう。そんな思いから、このプロジェクトが生まれました。

この楽曲「FOREVER」を配信で楽しむアクションが、グリーンピース・ジャパンへの寄付となり、気候変動と生物多様性の活動を応援できます(ダウンロードはこちらから)。

実はこの楽曲、使用されている音の数々は、ふたりが自然豊かな日本の里山に足を運び、フィールドレコーディングしたものです。

SIRUPさんは「自分がこれからどうなるかだけではなくて、全体がどうなって、その中で自分がどうあるべきか。そういう大きな考え方ができた気がする」、Shin Sakiuraさんも「コロナ禍になって、東京に住む意味とか音楽の仕事をする意味をたくさん考えるようになったけど、その答えになるような出会いがたくさんあった」と語りました。

みなさんも、自分がこれからも残していきたい風景や文化、今自分にできることについて思いを巡らせながら、楽曲を繰り返し聴いてみてくださいね。

グリーンピースの環境保護活動のすべてを支えているのは、自然をまもりたい、生きものたちの命を、子どもたちの未来をまもりたいと願う個人の皆さまのご寄付です。誰もが安心して暮らせる世界を築くグリーンピースの活動に、今日、ご寄付で参加してみませんか。

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