トヨタ自動車 関係者の皆様へ

豊田会長、佐藤社長宛へのメッセージをご覧になって、このページにアクセスいただいたことと推察します。

はじめまして、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの高田久代と申します。

このページでは

をお伝えしたく思います。

まずは自己紹介させてください。
私はボランティアとして参加して以来、約20年ほどグリーンピースに勤務しています。10代の頃に 「ワクワクするような地球環境を残したい」と考え、様々な環境問題の中でも、国境を越えて起こるような地球環境問題に世界規模で50年以上にわたって取り組むグリーンピースに参加しました(最初は「”あの”グリーンピースに関わって大丈夫かな…」とだいぶおっかなびっくりでした)。

グリーンピースは、設立以来、全ての活動を個人の方からの寄付だけで行っている、世界最大規模の国際環境NGOです。気候危機と生物多様性の損失という2つを最重要課題と捉え、世界各地のグリーンピースが連携して様々な取り組みを行っています。 現在私は、トヨタさんを含め自動車会社さんに主に気候変動の視点で目標と取り組み強化を求める「Drive Change ー 走りづづけたいから、いま減らそう」プロジェクトにスタッフとして参加しています。

何を豊田会長、佐藤社長にお願いしているのか

国際環境NGOとして、私どもは、「パリ協定の1.5℃目標に整合するよう、トヨタ自動車の温室効果ガスの総排出量を減らしてください。削減目標を発表してください。」ということを、豊田会長と佐藤社長にお願いしております。

それはなぜか

今年の夏も記録的な暑さとなり、日本でも恐怖を覚えるような高温や降雨などを各地で日常的に経験するようになりました。世界各地で、そして日本でも、「気候災害」によって、すでに毎年多くの人命が失われています。

2015年のパリ協定では、世界共通の目標に「産業革命前と比べて地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑える」ことを定めました。「目標」と呼ばれますが、この1.5℃は正確には地球の「限界点」なのです。これを超えると連鎖反応的に気候危機が加速してしまう、それを何とか回避できる限界の数字と認識されています。

それにもかかわらず、2024年には一時的ではあるものの、この1.5℃、つまり限界点を超えてしまいました。地球の「限界点」とされる1.5℃に温暖化を抑えるために、残された時間はあとわずかしかありません。連鎖反応的に気候危機が加速してしまうことを避けるためには、いますぐ排出量を大きく削減し始め、2030年、2035年頃までにいかに確実に、大きく減らせるかが決定的に重要です。 (地球の限界点については「プラネタリー・バウンダリー」の提唱で知られるヨハン・ロックストローム博士の動画をご参照ください)

日本を含む各国は、国連のパリ協定のもとで温室効果ガスの削減目標を負っています。しかし、企業はそうではありません。たとえば、世界的な企業であるトヨタ自動車さんは、1社で、日本全体の年間排出量の半分以上に匹敵する規模の温室効果ガスを排出していますが、パリ協定の1.5℃に整合する総排出量の削減目標は設けていません。

トヨタさんは「2050年までのカーボンニュートラル達成」を宣言しており、クルマやその部品、燃料の製造・運搬・使用・廃棄・リサイクルなど、クルマの一生を通して発生する温室効果ガスを限りなくゼロにすることなどを目指しています。比較的早い時期にこのような目標を打ち出し、着々と歩を進めてこられた企業努力は素晴らしいものです。

ところが、トヨタさんの温室効果ガス総排出量は増え続けています。クルマ1台あたりの排出量削減は概ね実現できていますが、販売台数が増えれば、それだけ排出量は増えます。だからこそ、グリーンピースでは、1台当たりの排出量だけではなく、全体の排出量である総排出量にも着目し、これも削減していく必要があると考えています。

なぜトヨタさんなのか

世界で最も自動車を販売している企業であり、日本はもとより、海外の主要マーケットにおいても、自動車業界を超えて政財界に大きな影響力をもっていらっしゃること、加えて、販売する新車のほとんどが温室効果ガスの排出につながるガソリン車であることが主な理由です。

下記の図は、トヨタさんが公表している『2024年サステナビリティデータブック』の2023年度の排出量の数字を、グリーンピースがグラフにしたものです。このように、「販売した製品の使用」つまり、販売した新車から排出される温室効果ガスが、トヨタさんの総排出量の大部分を占めています。

1997年、トヨタさんはハイブリッド車を世界で初めて量産してくれました。発売当時、「21世紀に間に合いました」と、CO2排出量の半減をうたったプリウスのCMはとても印象的で、今でもはっきりと覚えています(当時トヨタさんがスポンサーをされていた『すてきな宇宙船地球号』という世界各地の環境への取り組みを紹介する番組を、私は毎回録画して、メモをとりながら見ていました)。

トヨタさんが温室効果ガス削減にどんな選択をするかは、地球全体の未来を左右する規模のインパクトを持っていると言っても決して過言ではないと思います

トヨタさんが、世界的企業へと成長なさった背景には、卓越した技術力、安全性への信頼、そして利用者や社会の視点に立って挑戦を続けるスピリットがあるからこそではないでしょうか。初代プリウスの開発時は、「燃費2倍」という高い目標と期限を経営陣が掲げたことが成功の背景にあったと記事で読みました。今必要なのは、まさにそれです。連鎖反応的に気候危機が加速してしまうことを避けるために、「パリ協定の1.5℃に整合するようトヨタの総排出量を減らす」と明確に、豊田会長と佐藤社長が目標を掲げ、それを実現しようとするリーダーシップこそが、トヨタさん社内だけでなく、業界やサプライチェーンを通してパリ協定の1.5℃に整合するよう総排出量を減らす取り組みの加速のきっかけの一つになるのではないだろうかーー そうした切実な期待から、トヨタさんへの働きかけを行っています。

他の企業や国、そしてトヨタさんへの働きかけ

グリーンピースは気候変動に関して、日本を含む世界各国の政府に働きかけたり、自治体の気候政策を後押ししたり、化石燃料の巨大企業に方針転換を迫るなど、世界各地で様々な活動を展開しています。自動車企業さんについても、Volkswagen社やHyundai社、ホンダさんや日産さんなどとも働きかけや対話を行っています。

トヨタさんには、2021年に豊田社長(当時)宛にお手紙を差し上げ、お返事を頂戴して以来、働きかけを続けてきました。ありがたいことに、担当部署の方と意見交換を何度もさせて頂き、トヨタさんが気候変動に向き合い、社内で真剣に議論されている様子を感じています。だからこそ、増え続けている自社の総排出量を強く懸念されているはずだとも感じています。

先日、日本で熱中症・水害・農林畜水産物損害の経験者(気候被害者)のみを対象にグリーンピースが委託して行った意識調査では、「トヨタ自動車が総排出量を減らすことを打ち出したら、どう思うか」という問いに、「大いに支持する」「ある程度支持する」と答えた方が合わせて88.1%にも上りました。そこで、総排出量の削減目標を設定する必要があるとお考えかどうかなどを公に尋ねるトヨタさんへの公開質問状も、豊田会長と佐藤社長宛てに10月10日にお送りしました。

トヨタ関係者のあなた様へ

気候危機が私たちの目の前で加速していることを、多くの人が肌で感じています。気候変動についての国連の会議UNFCCC COPが始まってから今年で30年。多くの人々の努力にも関わらず、残念ながら気候変動は気候危機へ、地球温暖化は地球沸騰化へと呼び名が変更されるほど深刻度を増してしまいました。

気候危機が制御不能となってしまう前に、私たちはまだ行動を起こす選択肢をかろうじて持っています。でも時間がありません。スピードと確実性が決定的に重要です。

もちろんトヨタさんも排出量の削減目標を掲げていますが、現在の危機の規模と、対処のために求められるスピードと確実性には不十分です。クルマが廃車となるまで15年ほどだとすると、2025年に販売されたガソリン車は、2040年ごろまで温室効果ガスを排出することになります。これではパリ協定の1.5℃に間に合いません。

トヨタさんはすでに販売され使用されている車からの排出を減らすため、ガソリン車の燃料をバイオ燃料などに置き換えようとする技術開発にも取り組んでおられます。こうした研究自体は意義のあることだと考えますが、パリ協定の1.5℃に間に合うように温室効果ガスの総排出量を確実に減らすことができるかも含め、考慮が必要な点はいくつもあります。

パリ協定の1.5℃に整合する総排出量の削減目標を打ち出すことは、経営計画を大きく変更することにもなり、とても困難な挑戦だと認識しています。でも、総排出量の削減と気候危機への対応は今後、どんな企業にもこれまでにも増して強く求められるようになるため、確実に雇用を守り、5年先、10年先の経営を守るためにも、「走り続けるために、いま減らす」。その変化のためのリーダーシップを業界トップのトヨタさんに期待しています。

トヨタさんに「1.5℃に間に合いました」という削減目標をぜひ出していただきたい。そのために応援の声を集め、トヨタさんが脱炭素のトップへ、次の加速をする後押しをしたいと心から思っています。

ご感想、ご意見などをお寄せいただければ幸いです。
もし少しでもご共感いただけるようなら、トヨタご関係者として、あなた様の声をご同僚やご家族やご友人、そして豊田会長と佐藤社長に届けてください。応援署名へのご参加も歓迎です。お名前を出すことに抵抗がある方は、グリーンピースのお問い合わせフォームから、高田宛にメッセージをお送りいただけます。お問い合わせをお待ちしております。

最後まで長文をお読みくださり、どうもありがとうございました。

グリーンピース・ジャパン 高田久代