ロシアのウクライナ侵攻は、両国の農業生産と流通を妨げており、この2カ国が生産する穀物に依存している中東や北アフリカで食糧が不足し、市場価格が上昇しています。

グリーンピースが計算したところ、EUで家畜用飼料となる穀物使用を8%削減するだけで、今回のウクライナ戦争で不足する小麦をカバーできることがわかりました。

食肉需要の増加で穀物需給の効率が悪化し、環境問題や食料問題の原因になっています。何が問題なのでしょうか。

家畜の飼料に使用される膨大な穀物

ロシアの侵攻から7ヶ月以上が経ったウクライナ危機。大量の穀物を輸出していた両国の経済活動が滞り、世界市場に混乱が始まっています。

ウクライナは年間平均2600万トンの小麦を生産しており、そのほとんどを輸出しています。国連食糧農業機関(FAO)は、ウクライナの穀物生産は戦争の影響を受け、20%から30%減少する可能性が高いと見積もっていますが、もし事態が深刻化し、減少幅が50%になると、世界の最貧層を養うための小麦が1300万トンも不足することが予測されています。

EUでは、穀物の総使用量3億300万トンのうち、1億6250万トンものあらゆる種類の穀物が家畜に与えられています。その中でも、小麦は3,820万トンを占めています。

グリーンピースは、現在の小麦の不足分を補うために、穀物使用量の8%削減に見合った肉の生産量を直ちに削減するよう、EUと各国政府に求めています。

肉や乳製品の生産は資源を過剰に使用する

畜産では多くの穀物が飼料として消費されるため、家畜動物の飼育から生産することができる食料以上に食料を消費してしまいます。

たった1kgの鶏肉を生産するために3.2kgの農作物が使用されます。牛肉に関しては、1kgのステーキの生産のために25kgの穀物と15,000ℓの水が必要となります。そして、家畜の飼育と大量の飼料生産には膨大な土地を使用します。

例えば、イギリスでは農地の85%は家畜の飼料と飼育に使われています。これは非常に非効率的な土地の使い方です。そしてこれはイギリスだけではなく、世界各地で同じ状況であり、特にアマゾンやインドネシアなどの熱帯雨林は今日も違法伐採や放火などにより破壊され続けています。

農作物を家畜に食べさせることで、何十億人分もの食料を浪費しているのです。

現在、家畜動物が消費している穀物を直接人が消費するプラントベース(植物性)の食生活へシフトすることで、農業や畜産に使用される土地を大幅に削減することができます。

国連報告書によれば地球上で、最も土地を使用しているのは工業型畜産であり、森林破壊の主要な原因です。2011年までの50年間に世界全体で生じた耕地の拡大の65%は動物性食品の生産を目的としています。

家畜自体が排出する温室効果ガス、家畜が食べる食物の生産、牧草地のために伐採・焼却される森林、化学物質の使用などを合計すると、畜産は世界の温室効果ガス排出量の19%を占めています。

世界最大手の食肉加工企業の一つJBSは、イタリア全土よりも多くの温室効果ガスを排出していることが分かっています。

たとえ今日、化石燃料の使用を中止したとしても、肉や乳製品の消費を大幅に削減しなければ、温暖化を1.5℃に抑えることは不可能なのです。

合成化学肥料市場の混乱と環境問題

ロシアのウクライナ侵攻によって懸念されているのは小麦不足だけではありません。ロシアは農業用トラクターの燃料として使われる石油や、合成化学肥料に使用される天然ガス、カリウム及び窒素肥料の生産国でもあります。

世界シェアでアンモニアや尿素などの窒素肥料の15%、カリウムを有効成分とするカリ肥料の17%をロシアが占めています。このため、化学肥料原料の価格も世界的に値上がりしています。

合成肥料を大量に使用する農業は、他国の資源に頼り、食の安全保障を脆弱なものにするだけではなく、環境への負荷が大きく、そもそも持続可能ではありません。

合成肥料は生産の過程で多量にエネルギーを使うほか、二酸化炭素の約300倍もの温室効果を持つ亜酸化窒素*というガスを発生させたり、硝酸態窒素として河川などの水質汚染を引き起こしたります。温暖化や水質汚染は、生態系を破壊するだけでなく食料生産にも直結し、悪循環を招きます。

合成肥料の大部分は工業型食肉生産のための動物飼料を育てるために使用されます。合成肥料への依存をやめ、生態系の力を生かした農業へシフトしていくためにも、大量の飼料を消費する食肉生産を減らしていく必要があります。

オランダでは肉の広告を禁止

オランダのハーレム市は、食肉製品の広告を禁止することを決定しました。ハーレム市内のバスや公共の場所にあるすべてのスクリーンから、食肉の広告が排除されることになります。*

オランダのいくつかの都市では、すでに化石燃料の使用を助長する広告を禁止しており、食肉が気候変動を悪化させる製品リストにあることから今回の決定に至りました。

グリーンピース・フランスが欧州8カ国で実施した世論調査によると、過半数が公的機関は食肉の消費拡大を目的としたマーケティングに資金を提供すべきでないという意見に賛成しています。*

この世論調査は、欧州委員会が農産物振興政策の一環として、食肉製品を含む広告キャンペーンへの資金提供を継続するかどうかを検討している最中に行われたものです。過去5年間だけでも、欧州委員会は肉製品の販売促進のために1億4,300万ユーロを費やしています。

ベルリンの農業見本市である「グリーンウィーク」の期間中、有害な農業政策に反対するデモが行われ、特に豚の工業型農業に対して、30,000 人を超える人々が、より良い農法を求めて行進しました。横断幕や看板には次のように書かれています。「豚を飼育しすぎ」、「これ以上、豚を飼育しないで」、「工場農業、いい加減にして」

他に、「食肉会社が公的なイベントのスポンサーになったり、公共の場で広告を出したりすることは許されるべきではない」といった意見に36%が賛成と回答しています。イタリア(47%)、フランス(45%)、ポーランド(43%)で食肉販売全般の制限を支持しています。

グリーンピースEU農業政策ディレクターのマルコ・コンティエーロは、次のように述べています。

「気候危機が肉食を減らす十分な理由ではなかったと感じていた人々も、ロシアのウクライナ侵攻により食料の供給不足が心配される中で、家畜の飼料としてどれだけ多くの穀物が使用されているか理解したはずです。

肉食を控えることは、私たちの健康にも、自然にも、気候にもよく、誰もが十分な食料を確保できる最も簡単な方法です。政府が納税者のお金を費やして肉の消費を促進させるようなPRキャンペーン、ロビー活動、研究への資金提供などを行うことは間違っています。」

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