[スタッフVoice] 社会を変えるのは一人ひとりの声。気候危機を回避し、平和をまもるため、声をあげ続ける
[スタッフVoice vol.5]
グリーンピース・ジャパンのスタッフ、一人ひとりの考えや今までの背景を紐解き、新たなビジョンとして策定した「地球の恵みを、100年先の子どもたちに届ける。」への思いをご紹介します。5回目は、グリーンピース・ジャパンの気候変動・エネルギー担当で、そこに住んでいる市民が自治体の脱炭素に取り組む市民活動「ゼロエミッションを実現する会」を担当しているK・Sさんのインタビューです。長くグリーンピースで働き続ける彼女には強い信念がありました。
グリーンピースらしい、ロジカルで戦略的な活動に惹かれて
グリーンピースの活動は、1971年、アメリカによる核実験に反対する若者たちの行動から始まりました。団体名が物語るように、平和への思いは団体から切っても切り離すことができません。
そんなグリーンピースの姿勢とK・Sさんの思いがリンクしたのは、1991年の湾岸戦争がきっかけでした。K・Sさんは戦争を止めたいという思いに駆られ、電話帳で関連しそうな団体を調べました。そして、戦争反対のデモなどに参加する中で、グリーンピース・ジャパンと関わり始めます。
当時、日本政府はアメリカを筆頭とする連合軍のために90億ドルもの大金を拠出しようとしていました。国内で大きな議論を呼んだこの決定に対して、グリーンピースがとった行動、その選択に至った考え方に、K・Sさんは強く惹かれたといいます。
「グリーンピースは、その90億ドルで太陽電池を買うようにというレポートを出していたんです。この戦争の本質は石油の奪い合いだから、再生可能エネルギーの世の中にしなければならないと主張し、グリーンピースは、その90億ドルで太陽電池を買うようにというレポートを出していました。さらに90億ドルを出さないように、キャスティングボートを握っていた公明党(当時は野党)に対して働きかけていたのも、戦略的だと思いました」
戦争ができないようにお金の流れを止めるーーそんな戦略に基づくグリーンピースの活動は、K・Sさんの目にとてもロジカルだと映りました。そこでグリーンピースに関わろうと決心し、ボランティアを始めます。毎日のようにオフィスに足を運び、月曜日は海洋生態系の問題について、火曜日は森林問題についてと、さまざまなキャンペーンに関わり、環境問題への関心を深めていったのです。
「30年以上前ですけど、既にグリーンピースは温暖化の問題に取り組んでいました。環境問題について学んでいくにつれ、このままでは地球は大変なことになるんだなと感じましたね」
K・Sさんはグリーンピースで働きたいと考えるようになり、ボランティアからアルバイト、そして正職員へと、さまざまな職種の経験を積んでいきます。そして、1997年に京都で国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)が開催され、気候変動への関心が高まっていく中、担当したのがグリーンフリーズです。
グリーンフリーズは、オゾン層破壊物質を使用されていない冷蔵庫を製品化させるというキャンペーンです。それまでの冷蔵庫にはオゾン層破壊物質のひとつであるフロンガスが使用されるのが一般的でした。グリーンピースは、パナソニック(当時は松下電器)にフロンガスを使用しない冷蔵庫の製品化の約束をとりつけ、2002年、実現しました。現在では、フロンガスを使用しない冷蔵庫が当たり前ですが、その裏にはグリーンピースのキャンペーンがありました。
市民が立ち上がり、みんなで声をあげることで社会は変えられる
その後、不妊治療のためグリーンピースを退職したK・Sさんは、2007年に女の子を出産、育児に専念した時期を経て、幼稚園も決まり、グリーンピースでの仕事をパートタイムで始めた矢先に起きたのが、東日本大震災。東京電力福島第一原発の事故を受け、多くの人手が必要になったグリーンピースから声がかかり、K・Sさんは核問題担当として復帰しました。
その後も原発問題に携わり続け、現在は「ゼロエミッションを実現する会」の活動に力を入れています。これは、自分の住んでいる自治体をゼロエミッション(脱炭素=温室効果ガス排出実質ゼロ)にするために行動する市民活動で、事務局をグリーンピースに置いています。
「政治家を選ぶ有権者であり、企業を選ぶ消費者である市民は大きなパワーを持っている。自治体には市民参画の仕組みも実はけっこうある。そのパワーを使って社会を変えることができるのに、今はその力があまり使われていないと感じます。だから、この活動に力を注いでどんどん社会を変えたい。そして実際、動けば変わったんです。」と、K・Sさんはイキイキと活動の手応えを語ります。
一般市民の人たちが立ち上がり、声をあげることで生まれる力、「ピープルパワー」はグリーンピースの活動になくてはならない力です。その力と一緒にキャンペーンを押し進め、より良い社会へと変えていくことを、グリーンピースは目指しています。
その100年先には、どんな社会が広がっているのでしょうか。「あなたが望む100年後の理想の未来の姿とは?」という問いに対し、K・Sさんの回答は明快です。
「100年後と言わずすぐにでも、貧困がなくて公平で、環境問題で苦しむ人がいないような社会になってほしい」
そんな社会を目指して一人ひとりが声をあげていくことが、理想の未来を実現するとK・Sさんは信じています。「今、女性が投票できるのも、声をあげてきた人がいるからでしょ?」と、温かな笑顔で語るK・Sさん。たくさんの人とつながって声をあげれば社会を変えられる。そう信じているからこそ、活動を続けてこられたのでしょう。そんな希望や信念が、今日もグリーンピースの活動を前進させているのです。
【プロフィール】
K・Sさん
気候変動・エネルギー担当
1991年に入職し、核軍縮、原子力などのキャンペーン担当を歴任。 2011年の東京電力福島第一原発事故からは、グリーンピース独自の放射線調査の結果を国内外への発信や、 避難者の人権を国連人権理事会を通して国際社会に訴える働きかけ、 放射能汚染水の海洋放出反対キャンペーンなどを行う。