太陽光パネルリサイクル義務化が必要な4つの理由
この投稿を読むとわかること
いま、国が太陽光パネルのリサイクル義務化法の策定を検討しています。
2024年9月に国の審議会がたちあがり、2025年3月に制度案のとりまとめがでています。
2025年の国会に提出され、成立が目指されていましたが、2025年5月に「国会提出見送り」という記事が出、2025年8月29日に環境大臣が制度の見直しを視野に入れて検討すると発表しています。理由は、現状の制度案でリサイクル費用を製造者負担となっていることに内閣法制局が他の法律との整合性がとれないと指摘していることなどがあるようです。
グリーンピースでは太陽光パネルのリサイクル義務化は必要不可欠な制度だと考えています。理由を大きく4つに分けてお話しします。とくに製造者がリサイクル費用を負担することについて、適切と考えています。
太陽光パネルリサイクル義務化が必要な理由を4つに分けて説明します。
1. 環境汚染を防ぎ、資源を有効利用
太陽光パネルは、ガラス、アルミニウム、プラスチックなどでできています。また、鉛などの有害物質が使用されているものもあります。そのため、リユース・リサイクルされない場合は埋め立て処分となる可能性があります。一部は不法投棄されるおそれもあります。それらは環境汚染につながります。リサイクル義務化は、廃棄物を減らし、環境汚染を防ぎます。また、ガラス、アルミニウムなどが再利用されれば資源の有効利用となります。
(下図:東京都「太陽光発電設置 解体新書~太陽光発電の“クエスチョン”をひも解く〜」より)

2. 資源循環型社会をつくる
太陽光パネルもリサイクルして再利用することは、「資源循環型社会」づくりにつながります。限りある資源は何度も使い、大量生産・大量消費・大量廃棄を続けていくのは持続可能ではありません。一度使ったら捨てるーーという使い捨てを一品目でも減らしていくことが大事です。太陽光パネルのリサイクル義務化は、リユース・リサイクルを進めて、資源を国内で循環させるサーキュラーエコノミーを進めます。

3. 気候危機の解決策である再エネをすすめる
太陽光パネルのリサイクルを確実にすることで、太陽光パネルについて、社会的評価が高まります。太陽光パネルに利用を持続可能にすることで、消費者は安心して利用できるようになるでしょう。太陽光パネルが普及すればエネルギー自給率も向上します。また、蓄電池との併用で災害時の非常用電源にもなります。

4. つくる責任・つかう責任を果たす
今回の制度案は、リサイクル費用について、製造者(および輸入者)が負担することになっています。取り外し費用は、消費者が負担です。SDGsのいう「つくる責任・つかう責任」をそれぞれが果たすことになります。これにより、生産者はリユース・リサイクルしやすい製品をつくるようにもなるでしょう。消費者も、リユース・リサイクルする責任を分担します。

あなたにできること
このブログを読んで、太陽光パネルのリサイクル義務化は必要だ、と思ってくださったら、ぜひ、シェアしてください。
また、太陽光パネルリサイクル義務化法をつくるのは国会議員です。あなたの選挙区の国会議員に、ぜひ、事務所に電話したり、メールしたりして「太陽光パネルリサイクル義務化法の策定」を要望してください。
*自民党 環境・温暖化対策調査会は2025年6月5日、石破首相に太陽光パネルリサイクル義務化法案の国会提出を求める決議を手渡しています。
NGOが共同声明「義務化を」
2025年8月29日(金)に浅尾環境大臣が、これまで検討してきた太陽光パネルリサイクル法案の実現が困難と発表したことを受けて、グリーンピースを含むNGOが共同声明を発表しています。
共同声明:日本政府に対して太陽光パネルのリサイクル義務化を求めます
2025年8月29日
原子力資料情報室
国際環境NGO 350.org Japan
自然エネルギー100%プラットフォーム
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
WWFジャパン
気候ネットワーク
環境エネルギー政策研究所
市民電力連絡会
8月29日、浅尾環境大臣は、政府がこれまで検討してきた内容での太陽光パネルのリサイクル義務化を断念したと発表しました。政府は制度案の見直しを視野に入れて再検討するとしています。
検討されていた法律案では、太陽光パネルのリサイクルを義務化し、太陽光パネル製造業者(海外製造分は輸入業者)が、新設分のみならず拡大生産者責任(EPR)の考え方から既設分も製造量に応じて費用負担することになっていました。しかし、内閣法制局から、太陽光パネルのリサイクル費用を製造業者らが負担するという方針が他のリサイクル関連法と齟齬する、との指摘があったと報じられています。
太陽光パネルの廃棄量は、2040年頃には年間40万トン規模に達する可能性が指摘されており、早ければ、FIT制度初期の買取期間が終わる2030年代前半には急増することが見込まれるため、既設分の対応を含めたリサイクルの義務化は急務の課題です。石破総理大臣も、昨年12月の循環経済に関する関係閣僚会議において、「再生材利用の拡大や、環境配慮設計の推進、太陽光パネルリサイクルの促進のための法整備について、国会提出に向けた作業を加速」するよう求めているとおり、早期の国会での成立が求められています。また、今年2月に閣議決定されたばかりの第7次エネルギー基本計画でも、義務的リサイクルの検討を進める方針が示されています。「他のリサイクル関連法と齟齬する」との指摘ですが、拡大生産者責任の重要性が増す時代に合わせて新法で制度的枠組を刷新することは何ら問題がないはずです。
代替案として、リサイクルについての報告義務化や努力義務化などが検討されていると報道されています。しかし、リサイクル義務化と比べてどこまで実効性が担保されるかは不明です。また、現状でも太陽光パネルのリサイクル実施は可能ですが、製造者にリサイクルを義務付けることで、太陽光パネルをリサイクルしやすい形で設計することが期待できます。義務化され、大規模にリサイクルが行われるようになれば、これに掛かるコストの低減が期待されます。逆に言えば、義務化しなければリサイクル費用は高いままとなり、リサイクルがほとんど行われず、大量廃棄の解決は見通せままとなりますないことが懸念されます。
すでに使用済み太陽光パネルの放置問題は地域トラブルの大きな原因となっています。気候危機が深刻化する中、化石燃料でもなく、始末に負えない核のごみを生み出す原子力でもなく、持続可能で公正な再エネこそ導入の加速が必須です。太陽光パネルのリサイクル義務化が遅れることは、廃棄物問題への懸念を深めることになり、再エネ導入拡大の大きな阻害要因となります。私たちは、政府に次期臨時国会での拡大生産者責任を前提とした太陽光パネルのリサイクル義務化法案の提出を求めます。
以上
参考資料:中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会
産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議とりまとめ「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」