新型コロナ感染症と大気汚染
世界中で猛威を振るう新型コロナ感染症。
”ロックダウン”と言われる都市封鎖や外出自粛によって、私たちの社会を取り巻く空気は一気に変わりました。そして、実際に私たちが“呼吸する空気“も、大きく変わっています。
スペイン
政府が警報状態を発表してから1週間で、マドリードとバルセロナでの道路交通が約60%削減され、汚染レベルも急落しました。大気汚染の原因となる二酸化窒素の平均値は、世界保健機関(WHO)及び欧州連合(EU)によって設定された制限の40%に達しました。
アメリカ
3月のロサンゼルスは、この25年でもっとも長く澄んだ空気が続いたそうです。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の公衆衛生の専門家によれば、心血管や呼吸器系の疾患の発生との関連性が指摘されてきたPM 2.5の濃度が40%減少しました。
https://www.businessinsider.jp/post-210910
中国
衛星で観測した二酸化硫黄の濃度は、去年の旧正月の4週間と比べて、35%減少していました。中国の二酸化硫黄の排出源は主に、石炭を燃やす工場や発電所、石油を燃やす交通や工業によります。
このような産業は、感染症対策により大きな影響を受けていました。営業が規制され、従業員が休暇から戻れない、需要が低下したなどの理由によって、多くの工場は閉鎖またはキャパシティを下げて営業していました。
https://www.businessinsider.com/quarantines-air-pollution-china-but-wont-last-for-long-expert-2020-3
インド
インドでは新型コロナウイルス対策のため工場が閉鎖され、道路から車が消え、空の便も運航を停止しました。そのため、ここ数週間で大気汚染が劇的に改善していました。インド北部のパンジャブ州で、200キロ近く離れたヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見晴らせるようになり、市民を感嘆させました。デリーでは、規制が始まった初日に微小粒子状物質「PM10」が最大で44%減少しました。
https://www.cnn.co.jp/world/35152184.html
空気がきれいになることは、私たちの健康を改善することに直結
毎年、420万人もの人が、大気汚染によって命を落としている現実をご存知でしたか?
そしていま注目したいのは、大気汚染によって感染症の蔓延が悪化する可能性もあると専門家は指摘しているということです。
大気汚染で感染症が悪化する可能性
米ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院の研究者が、米国の人口の98%をカバーする約3000の郡で、大気中のPM2.5の濃度と新型コロナウイルス感染症による死者数を分析した論文が発表されました。
この研究では、PM2.5の濃度が1立方メートルあたり平均わずか1マイクログラム高いだけで、その死亡率(人口当たりの死者数)が15%も高いという結果が出たそうです。
PM2.5は体の奥深くまで侵入して高血圧、心臓病、呼吸器障害、糖尿病を悪化させるリスクがあります。こうした症状を抱えている場合、免疫系を弱体化させたり、肺や気道の炎症を引き起こしたりして、感染や重症化のリスクが高まります。
現在のパンデミックの中心地であるニューヨーク市のマンハッタンを例に、大気汚染の影響が示されています。
マンハッタンではPM2.5の平均濃度が1立方メートルあたり11マイクログラム、4月4日時点で1904人の死者が報告されています。
研究チームの推算では、過去20年間のPM2.5の平均濃度があと1マイクログラムでも少なければ、死者数は248人も少なかったはずだといいます。そして、犠牲者の数は4月4日以降も増え続けています。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/041000226/
感染症の危機が去った世界で
車や飛行機が減り、工場が閉鎖されれば、改善が見られるのは、考えてみれば当たり前のことと言えるかもしれません。
感染症の危機が去って、私たちの日常が戻ってくるとき、どんな社会になっているでしょうか?今まで通りの暮らしから何か変えられるとしたら、みなさんはどんな変化を望みますか?
空気をきれいに保ち、そして体を守るために、私たちは日常的にできることがあります。
交通手段を変える:自家用車の利用を減らし、自転車や電車・バスなどの公共交通機関を利用する
電気を変える:自宅や事務所の電気を、自然エネルギー100%で発電する電力会社から買う
銀行を変える:石炭火力発電に投資する銀行からダイベストメント する
声を上げる:石炭火力発電の新設を止めるために活動している地元グループをサポートする現在のコロナ感染症対策期間中に、私たちの今後の生活に活かせることを考えてみませんか?