【2022年最新】IPCC報告書からわかる気候変動の影響について知っておくべき5つのこと
この投稿を読むとわかること
- 1. 気候変動による影響は、より早く現れ、より深刻になっている
- 2. 現在の気候変動による影響に対してさえも備えが足りておらず、人命が犠牲になっている
- 3. さらなる温暖化はより多くの問題をもたらし、温暖化を1.5℃に抑えることで、予測される損失と被害(ロス&ダメージ)は大幅に減少するが、なくすことはできない
- 4. 少なくとも地球の30%を保護し、自然を回復させなければ、地球は私たちを守り続けることができない
- 5. 住みやすく、公平で、持続可能な未来を確保するためには、この10年間が重要
- 私たちができる5つの行動
- 1. 化石燃料からの即時脱却
- 2. 2030年までに地球上の陸と海の少なくとも30%を保護する
- 3. 気候正義の実現
- 4.「無限の成長」から脱却して循環型の社会へ
- 5. 現実に向き合い、科学者からのメッセージを周りに伝える
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が最新の報告書(AR6/WG2)を発表しました。世界有数の気候科学者たちによる、気候変動の影響と、その影響にどのように、どの程度まで適応できるかまとめた、最新の大規模な評価です。 いくら気候変動に関心があっても、何千ページにも及ぶ膨大な資料に目を通す時間はありませんよね。この記事では、IPCC第6次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)について、知っておくべき5つの重要なポイントをご紹介します。 |
IPCCとは? IPCCとは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP)により設立された国連の「気候変動に関する政府間パネル」のことで、国連が招集した195の加盟政府と数千人の第一線の科学者・専門家からなるパネルです。 IPCCは、人為的な気候変動のリスク、その潜在的な影響、及び適応と緩和方策について、科学的、技術的、社会経済的な側面から、各国政府に提供する研究報告書の発行を行っています。 2022年2月28日に発表された報告書は、昨年8月に発表された第6次評価報告書の第1作業部会報告書(自然科学的根拠)に続く、第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)です。残りの第3作業部会報告書も今年発表される予定です。 IPCCは各国の政策決定に干渉することなく、専門的な立場から、報告を行っています。 グリーンピースはIPCCの公式オブザーバーであり、レビューに参加する権利を有しています。 |
1. 気候変動による影響は、より早く現れ、より深刻になっている
すでに自然環境や人々にさまざまな損失と被害(ロス&ダメージ)をもたらし、生命、家屋、生活、文化を破壊している気候変動の影響は、さらに悪化することが予測されます。
IPCCは今回、将来の温暖化レベルに関する「懸念の理由」の総合評価を更新し、前回のIPCC第5次評価報告書よりも低い温暖化レベルで、気候変動リスクが「高い」か「非常に高い」レベルまで増加すると結論づけました。つまり、温暖化の生態系への影響は、今までの予想よりも早く、広い範囲で起きていて、予想よりもさまざまな結果をもたらしているのです。
2. 現在の気候変動による影響に対してさえも備えが足りておらず、人命が犠牲になっている
気候変動に適応するための試みは世界的に増え一定の成果もありますが、そのほとんどは、まだ遅すぎて、最も必要としている人々に届いていない状態です。その結果、気候変動のリスクにさらされる人や資産の数は減少するのではなく、増え続けています。
世界中で人命や家屋が失われていますが、気候変動に脆弱な影響を受けやすい高い国では、洪水、干ばつ、暴風雨による死亡率が、影響を特に受けづらい国に比べて、過去10年間でなんと15倍にもなっています。
これは、気候変動の影響が、とても不公平に現れているということです。最も影響を受けやすい人々の命や家を守るためには、公平に十分な資金を提供し、海面上昇や強力な台風などの気候変動へ適応し、気候変動に強い開発を進めることが必要です。
3. さらなる温暖化はより多くの問題をもたらし、温暖化を1.5℃に抑えることで、予測される損失と被害(ロス&ダメージ)は大幅に減少するが、なくすことはできない
温暖化が進むごとに状況は悪化し、より多くの人々や生物種が生存の限界に達してしまいます。パリ協定で掲げられたように、温暖化を1.5℃までに抑えることができれば、予測される人間と生態系への損失と被害を大幅に減らすことができますが、完全になくすことはできません。
さらに、損失と被害は平等に起きているわけではありません。特に気候影響の影響を受けやすい脆弱な発展途上国では、現在の財政、ガバナンス(統治)、制度的な取り決めでは、対処が不十分です。
4. 少なくとも地球の30%を保護し、自然を回復させなければ、地球は私たちを守り続けることができない
地球の生態系を健全に保つことは、人間と社会にとって不可欠で、気候変動に強い開発の前提条件です。生物多様性豊かで自立した海や森は、大量のCO2を蓄えてくれるなど、気候変動に対処するためにいくつもの貢献をもたらしているからです。
IPCCも、生態系を生かした気候変動への適応と緩和の必要性を強く強調しています。特に、生物多様性と生態系サービス*の回復力を維持するには、自然な状態に近い陸地、淡水、海洋の約30%から50%を保全することが必要だと強調しています。
*水や空気の浄化、気候の調整、防災・減災機能、食料の供給など、生態系が人間や社会に提供する恵みのこと
5. 住みやすく、公平で、持続可能な未来を確保するためには、この10年間が重要
気候変動の影響とリスクは、さまざまな危険が同時に発生します。そして、持続不可能な開発モデルや社会的不公正が生み出す複数のリスクと相互作用するため、ますます複雑になり、管理が難しくなっています。
エネルギー、食糧、産業、都市、社会システムにおいて、気候変動に強い、公平な開発を実現することが必要で、求められているのは、段階的なステップではなく、広範囲にわたる包括的な転換です。そして、それは即刻、行われなければなりません。
私たちができる5つの行動
IPCCは、こう結論付けています。
「累積された科学的証拠は明白である。気候変動は、人間のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)と地球の健康を脅かすものである。これ以上、適応と緩和に係る世界的な協調行動を遅らせることは、すべての人にとって住みやすく持続可能な未来を確保するための、短く急速に失われつつある機会を逃すことになる。(非常に高い確信度)」
私たちがこの地球で安全に生き続けられるために、残された時間はわずかです。気候変動による影響を最小限に抑えるために、今すぐ行動を始めましょう!
1. 化石燃料からの即時脱却
化石燃料を燃やすことによって大気中に炭素が放出されるごとに、状況はさらに悪化します。かつて保守的で知られていた国際エネルギー機関(IEA)でさえ、今では化石燃料から自然エネルギーが主軸となるエネルギーシステムへの転換は可能だと言っています*。日本でも自然エネルギー100%の実現へむけて行動しましょう!
2. 2030年までに地球上の陸と海の少なくとも30%を保護する
この3月、各国政府が国連に集まり、世界の海の30%を保護区にすることを可能にする海洋保護条約の交渉が行われる予定です。
そして今年は、国連の生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)もあります。この会議では、2030年までに世界の陸・海の少なくとも30%を、先住民族と地域社会の権利を十分に尊重した上で、保全・保護することに合意しなければなりません。
3. 気候正義の実現
気候変動の影響は平等ではなく、温暖化の要因を作り出していない若い世代や、海抜の低い地域の人々など温室効果ガスの歴史的な排出量が少ないのにも関わらず、より大きな影響を受ける人がいます。政府には、気候正義を実現し、今も未来も誰もが安全で健康に生きられるようにする義務があります。昨年だけでも、気候正義に関する多くの重要な判決が下されました。
影響を受けたコミュニティは、引き続き気候正義を要求しますが、気候変動は人権の問題でもあるという認識が、グローバル・スタンダードとして次第に定着してきています。気候正義を求めるFridays For Future Japanなどの活動に参加して、急速に拡大する世界的なムーブメントに参加してください。
4.「無限の成長」から脱却して循環型の社会へ
私たちは、地球の限界を無視した無限の成長と採取に基づいた時代遅れの経済モデルから、脱却しなければなりません。経済的利益よりも命が大切にされる社会、自然とつながる社会、包括的に意思決定がなされ、みんなが平等で多様性が尊重された社会へ、システムの転換を求めて声を上げましょう。
5. 現実に向き合い、科学者からのメッセージを周りに伝える
問題を解決するためには、まず、この問題と向き合う必要があります。現在、私たちは1.5℃温暖化した世界にも備えることができていない状態で、2.7℃温暖化した世界に滑り込もうとしています。危機的な状況が自分の身にも迫っているということを一人でも多くの人が知り、行動しなければいけません。
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