2022年3月、海の3分の1を海洋保護区にする国際条約についての国際交渉が行われましたが、各国政府は合意や結論に達することができませんでした。 海はまだ十分に保護されておらず、工業型漁業、化石燃料の海底掘削、プラスチック汚染、気候変動によるダメージに直面し続けています。
しかし、海に代わるものはありません。健全な海は、地球上のすべての人類の生存に関係するだけでなく、気候危機を緩和するためにも重要な役割を担っているのです。

32億年前、海は、人類をはじめとした無数の生きものの命の源でした。 現在でも、世界の30億人以上の人々と沿岸地域は、食料と生活のために豊かな海の資源に依存しています。 健全な海は、気候を調整し、水を循環させ、二酸化炭素を吸収するなど、住みやすい地球を保つために重要な役割を果たすだけでなく、気候変動の緩和にもつながります。

海洋食物連鎖の頂点に立つクジラやサメは、乱獲や海の汚染などなの結果、数が減っている(2013年5月)

9つの科学的事実、海と気候の関係は?

なぜ海を保護することで気候変動を遅らせることができるのでしょうか?

実際、海は地球上で非常に重要な役割を果たしており、気候調節、水資源循環、生物多様性の保護と密接に関係しています。

  1. 海は、温室効果ガスによってこもった熱の90%以上を吸収しています。
  2. 海の調節がなければ、地球の気温は36℃まで上昇します。
  3. 気候変動は海流の変化を加速させています。たとえば、アルゼンチン海はブラジルから暖かい海流を受け取り、南に広げています。
  4. 毎年、大気中の新たな酸素の50%から80%を、海が供給しています。
  5. 海洋植物プランクトンの1つであるプロクロロコッカス(Prochlorococcus)は非常に小さな藍藻ですが、地球上のすべての熱帯林よりも多くの酸素を生成しています。
  6. 海は地球の大気からメタンと二酸化炭素の約3分の1を吸収します。これは、熱帯雨林の30倍の速さで100億トンに相当します。
  7. 工業型漁業、プラスチック汚染、石油やガスの沖合採掘などの人間活動は、気候変動を緩和する海の能力に大きな影響を与えています。
  8. より積極的に海を保護しなければ、今世紀の終わりまでに、洪水による被害は毎年大幅に増加すると推定されています。
  9. エルニーニョ現象などの異常気象は、22世紀はじめには、21世紀の2倍起こりやすくなると予想されています。
オーストラリアのグレートバリアリーフのサンゴは2017年に大規模な白化現象を起こした。サンゴの生態系に依存する種も打撃を受けており、地球温暖化が海洋生態系を脅かしている(2017年5月)

海を守るために最も効果のあること、トップ5

世界の海の30%以上を海洋保護区とし、効果的に保護できれば、海の生きものたちがダメージから回復し、海の状態を改善できると指摘されています。

実際、私たち人間はすでに海を守る手段を持っており、グリーンピースは長年にわたり次の5つの行動を推進してきました。

  1. 2030年までに少なくとも30%の海洋を保護するという目標を達成するために海洋保護条約を採択する。
  2. あらゆる形態の商業捕鯨を世界中で禁止する。
  3. プラスチックや有害物質による海洋汚染を止める。
  4. 違法、規制されていない、報告されていない漁業(IUU漁業)をとめる。
  5. 海底からの化石燃料の抽出を段階的に廃止し、禁止する。

しかし、こうした変化を実現するには、さらに大きな力が必要です。

人々の団結と声、そして政府や企業とともに積極的に問題解決に向け取り組んでいかなければいけません。

乱獲は海洋生態系に大きなダメージを与える。海を守るためには、厳格な漁業管理、さらには禁漁区の設定も必要となる。

「海洋保護条約」を2022年内に締結する

人類による海洋資源の過剰な商業利用は、不可逆的とは言えないまでも、気候に劇的な影響を与え続けています。現在、地球表面の約70%を占める公海のうち、保護されているのはわずか1%です。

海を守り、気候変動を抑えて地球上で生きるすべての命に、生き残るチャンスを与るためには、世界海洋条約を通じて、2030年までに少なくとも30%の海を海洋保護区にする、より野心的な保護体制が必要です。

2022年3月に開催された国際交渉では、条約締結へ成果が出ず、次の政府間会議が2022年8月に開催予定です。

グリーンピースは、これ以上条約締結を遅らせることなく、2022年末までに条約締結を目指しています。

グリーンピースは、地球上のあらゆる海で、工業型漁業や開発、プラスチックによる海洋生態系への影響を調査し、海洋保護区の必要性を訴えています。2022年3月には、調査船を用いて、アルゼンチン海の脆弱で繊細な海洋生態系を調査し、石油探査計画の中止を呼びかけました。

グリーンピースの船がアルゼンチン海で海洋生態系を調査。国連の国際交渉にあたる各国政府に、「今すぐ世界の海洋条約を作ろう!」と呼びかけた(2022年3月)

世界中の500万人近い人々が、世界の海の30%を海洋保護区にすることに賛同し、すでに署名をしてくれました。

各国政府に対し、みなさんから託された思いを届け、科学調査からわかった海洋保護区の必要性を説明することを通して、2030年までに海洋の30%を保護するという目標に、今では100カ国以上が賛同するようになりました。

みなさんも、海を守るための拘束力のある政策を求めて、声をあげてください。健全な海を守れば、私たち、そして未来の世代が、地球でより安全に暮らせる環境を守ることができます。

独自の調査活動ができ、導き出された科学的根拠に基づいて企業や政府に働きかけるグリーンピースのこうした活動はすべて、みなさまのご寄付のおかげで続けることができています。

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