東京都の太陽光パネル設置義務化が、地球にも家を買う人にもメリットしかない理由
この投稿を読むとわかること
東京都が、ハウスメーカーに対して、新築住宅の屋根に太陽光発電の設置を義務付ける新たな制度を提案しています。東京都を再生可能エネルギー100%にするには、住宅の屋根のスペースを活用して、太陽光発電の設置を増やすことが欠かせません。気候変動対策だけでなく、家を買う人にもメリットとなるこの制度の内容とは? |
気候変動対策に使える「屋根の上」
まったなしの気候危機。CO2の大幅削減に有効なのは、省エネ・高効率化して使うエネルギーを減らし、必要なエネルギーを再生可能エネルギーにシフトするスピードを早めることです。
再生可能エネルギーの拡大には、太陽光パネルや風力タービンを設置する場所が必要ですが、東京のような大都会にも、太陽光パネルの設置を大幅に拡大できる場所があります。住宅の屋根の上です。
東京都は現在、ハウスメーカーに、新築住宅に太陽光発電設置を義務付ける新たな制度を提案しています。2030年までに再エネ比率を50%に引き上げるための施策です。屋根の上を有効活用して太陽光発電を推進する設置の義務付けは、気候変動対策としてとても有効です。
東京都は、6月24日まで、この新しい制度についてパブリックコメントを募集しています。この記事を読んでこの制度のメリットについて学び、気候変動対策としてこの制度を実現することを求めて、パブリックコメントを提出しませんか?
6月27日追記:パブリックコメントは締め切られました。グリーンピースが提出したパブコメはこちら |
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4%しかない
屋根置き太陽光発電は、東京都ではまだ住宅への設置率が4%程度しかありません。
日本では、住宅への太陽光発電設置の義務化はこれが初めての例となりますが、海外では、アメリカやEUですでに取り入れられています。日本でも、全国に広げていかなければいけません。
この制度は、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」改正によるものです。改正には、報告書制度なども含まれますが、ここではハウスメーカーへの太陽光発電設置義務制度のポイントを説明します。
気候危機に効く!
太陽光発電の住宅への設置の拡大は、深刻化する気候変動を緩和するために、地球の温度上昇を1.5度以下に抑えるためには必須です。
グリーンピースが環境エネルギー政策研究所(ISEP) に委託して作成したシナリオでは、住宅や商業系建築物には、8.3ギガワットの太陽光発電導入ポテンシャルがあります。公共の建物や工場の屋上、未使用(低使用)農地の導入ポテンシャル、そして、域外から調達する洋上風力発電の導入ポテンシャルと合わせると、東京都は再生可能エネルギー100%を達成することができます*。
逆に言えば、住宅の屋根を利用しなければ、再生可能エネルギー100%を達成できません。
災害時に安心
住宅の屋根に太陽光発電設備をつけると、地震などの災害で停電になっても、太陽が照っていれば家電製品やスマホの充電もできて安心です。
6年でもとがとれる
標準的なケースだと、太陽光発電の設置費用は約92万円です。
毎月の電気代が安くなり、約10年でもとがとれます。さらに、東京都の補助金を活用すると約6年でもとがとれます(東京都の試算 資料参照)。
リースや屋根貸しなどの方法で、初期費用ゼロで設置できる方法もあります。
義務付けの対象はハウスメーカー
太陽光発電の設置義務は、建築主個人ではなく、一定の規模以上(年間2万平方メートル以上)のハウスメーカーが対象です。約50の事業者が対象になることが見込まれます。
日照条件や建築主の意向などで設置できない(しない)ケースがあることを考慮し、事業者単位で、年間の総量として設置義務量が設定されます。都内の年間新築件数4.5万棟のうち、その約半数が対象になる見込みです。
住宅の買い手の意向も考慮されるので、新築する誰もが、絶対に太陽光発電を設置しなければならないわけではありません。
東京都があなたの意見を募集中
気候変動対策としても有効で、買う人にもメリットがあるこの制度が確実に実施されるように、あなたの意見をぜひ、提出してください。
東京都以外からも、提出が可能です。東京で実施されれば、他の地域にも制度が広がることが期待できるので、東京に住んでいない方もぜひ提出してみてください。郵送とWEBのフォームの二つの方法があります。ここではWEBのフォームからの送り方を紹介します。
1. WEBフォームを開く
「東京共同電子申請・届出サービス」のサイトにいきます。
2.「利用規約に同意する」をクリックします
3. 入力画面で意見を入力します
- 該当箇所に、「太陽光発電設備などの設置義務」などと書いてください。ご意見1に、意見内容を書きます(一行でも二行でもかまいません)。
- 意見を6つまで書けるようになっていますが、一つでもかまいません。
4. スクロールして「申し込み内容の確認に進む」をクリック
5. 「完了していません」という画面が表示されたら、スクロールして、「申し込む」をクリック
これで完了です。
グリーンピースもパブコメを出しました
グリーンピースは、以下の意見を出しました。
該当箇所 太陽光発電設備などの設置義務(再エネ設備設置の最低基準の新設 ) 意見 このたび提案されている太陽光発電設備などの設置義務に賛成です。 破局的な気候危機を回避するためには、建物の断熱など徹底した省エネやエネルギー効率の良い機器への更新、そして再生可能エネルギー利用の拡大が不可欠です。そのうちの再生可能エネルギーの拡大についてこれから伸ばしていけるのは風力発電と屋根置きの太陽光発電です。東京都の資料によれば、東京都での屋根置き太陽光発電の住宅への設置率は設置可能とされた戸数の4%程度に止まっています。大きなポテンシャルがあるのに進んできませんでした。しかし、今回、ハウスメーカーに太陽光発電設備設置を義務づけることで市民が自分の建物で発電した電力を利用できる可能性が大きく高まります。 また、個人へではなく、ハウスメーカーを義務対象としたこと、総量で規制するとしたこと、日照や施主の意向も配慮できる柔軟な制度としたことを評価します。 国際環境NGO グリーンピース・ジャパンでは、いくつかのハウスメーカーにヒアリングをおこない、本制度に対し、ハウスメーカーでも賛否が別れていることを承知しています。しかし、反対されている事業者においても、制度の柔軟性を詳細に説明し、規制者との意見交換を行うことで理解を得られる余地があることを確信しました。 住宅への太陽光発電設備義務付けという気候危機回避に有効な手法を全国へと広げていくためにも、まず東京都において確実に実現させることが重要です。そのために、東京都に、今回50社と見込まれている義務対象となる事業者と信頼関係を構築し、詳細な制度設計について十分に事業者の意見を聴取し、反映させるべき点は反映させていくことを望みます。 さらに、今回の義務付けにより太陽光発電設備の設置数は年間建築数の約半数に止まるという試算もでています。設置率を高めるために、段階的に設置義務量の向上など規制を強化していくことを提案します。また、今回義務対象となっていない比較的小規模の事業者や、既存の建物についても適用の拡大ができるよう、関連事業者との意見交換などをおこなって、検討をしてください。 |
他にもこんな意見がだされてます
「パブコメを書く会」などで共有された意見をご紹介します。あなたのパブコメの参考にしてみてください。
気候危機を回避するためには、省エネ、再エネの導入についてあらゆる施策をすすめていくことが必要です。太陽光発電設備のハウスメーカーへの義務付けに賛成です。補助金を通年で(〆切日を設けず)、原則申請者すべてに交付してください。 |
脱炭素社会を実現し、気候危機を防ぐため、再エネの早期普及は不可欠だと思いますので、今回の新築住宅の再エネ設備の設置の義務化に賛成いたします。他の県でもこのような条例案を進めていくためにも東京都で確実に実施していく事が重要と考えており、早期の成立を希望いたします。現在の案では、新築の50%ほどの設置率の試算があるようですが、今後はさらに設置率を上げるために、基準の拡大をしてほしいと思いましたので、ご検討お願いいたします。 |
6/13(月)緊急オンラインセミナー ※終了しました
東京都の太陽光発電の設置義務化実現に向けて
▶︎2022年6月13日(月)13:00-14:30@オンライン開催
▶︎主催:自然エネルギー100%プラットフォーム(CAN Japan)
追記:セミナーは終了しましたが、当日の録画・資料を見ることができます。 当日の動画 「東京都が提案する『住宅メーカーへの太陽光発電の設置義務化』を考える 自然エネルギー財団常務理事 大野輝之氏 「住む人にとっての太陽光発電設置義務制度の意義」 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 前 真之准教授 「太陽光義務化して大丈夫なの?と思っている人たちへのメッセージ」NPO法人上田市民エネルギー理事長藤川まゆみ氏 |
6/23(木)ポイントを聞いてパブコメを書く会※終了しました
東京都・ハウスメーカーへ太陽光パネル設置義務化!ポイントを聞いてパブコメを書く会
▶︎6月23日 (木) 19:00-19:50@オンライン開催
▶︎主催:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
参考資料
・前真之東京大学准教授「太陽光発電についての一考察」
・気候訴訟ジャパン インスタグラム
・自然エネルギー財団 インフォパック