あなたはひとりじゃない─未来のために立ち上がる人たちの気候アクション
この投稿を読むとわかること
地球の現状に危機感を持った人々が起こすアクションはとても多様です。 気候危機から地球環境を守るために、スタンディング、ハンガーストライキ、植林、デモなど、あらゆる行動が起こされています。しかし、どんなアクションも、それが「地球を守ろう」と訴える心からの叫びであることは共通しています。利益のために自然が犠牲にされることを看過せず、当たり前とされてきたことを変えるためにアクションを起こす人々。彼らは厄介者扱いをされたり、時には殺人予告を受けたりすることすらあります。そして、同時に彼らに共鳴し、後に続こうとする人たちも生み出しています。どんな小さな行動でも、波紋のように広がって大きなムーブメントとなる可能性を秘めているのです。世界を変える社会的運動も、もともとは1人の勇気から始まります。 |
「もう黙っていられない」気候危機に立ち向かう市民運動事例
気候変動の影響が日ごとに大きな被害を出している中、各国の政府や大企業がなかなか先進的な決断を下そうしないことに暗澹たる気持ちになる人もいるのではないでしょうか。
しかし、一方で気候危機への対策を求めて声を上げる人が世界中で大きなムーブメントを巻き起こしています。
例えばスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんのたった1人のストライキは7,500の都市、1,400万人もの人々を巻き込み(※1)、「フライデー・フォー・フューチャー」として国際的に最も有名な気候アクションの一つへとひろがっていきました。
この瞬間にも、未来のために行動を起こす人たちが発生させた気候アクションが連鎖の輪を大きくしています。
世界各地で気候危機に立ち向かうために起こされた市民による活動の数々を紹介します。
科学者たちの団結と市民的不服従
気候変動について専門的に研究を続ける科学者たちは、研究結果に基づいて、科学的根拠とともに世界に向けて地球の置かれる状況を訴えてきました。
しかし、データに裏付けられた警鐘に政府や企業は耳をかそうとしません。
そこで科学者たちは団結し、活動家とともに2021年に「サイエンティスト・レベリオン(科学者の反乱)」を立ち上げました。
サイエンティスト・レベリオンには、これまで世界25カ国以上で約1,000人の科学者たちが参加し、逮捕者を出すこともいとわず懸命に抗議を行っています。
2022年4月、アメリカ、ロサンゼルスでは、気候学者のピーター・カルムスさんら4人の科学者たちが、化石燃料分野に世界最高額の融資を行っているJPモルガン・チェース銀行の扉に自分たちの手首を鎖で繋ぎ、涙ながらにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の発表を受け止めるように主張しました。
ホワイトハウスでは土壌科学者のローズ・エイブラモフさんらがフェンスに身体を縛りつけて、バイデン大統領に「気候非常事態」の宣言を求めました。
イギリス、ロンドンでは25人の科学者たちがビジネス・エネルギー・産業戦略省の窓に接着剤で学術論文や自分たちの手を貼り付けました。
スペインのマドリードでは国会議事堂の壁に血に見立てた赤い塗料がまかれました。
気候変動について最も正確に知っている科学者たちは、事態がどれだけ切迫しているのかを懸命に人々に知らせようとしています(※2)。
先住民コミュニティからの自然破壊の現状告発
気候危機は、世界中の人々に不平等に影響を与えますが、その影響を特に顕著に受けているのは先住民たちです。
アラスカ西部の先住民は、地球平均の約3〜5倍もの速さで進む温暖化に狩猟や漁業、植物採集などの伝統的な活動を脅かされています(※3)。アマゾンの先住民は悪化する気候変動のみならず、森林伐採などで生活に直接的な影響を受け、動物たちがいなくなるのを目撃しています(※4)。
にもかかわらず、彼らの声はこれまで十分に注目され、受け止められてきたとはいえません。
先住民コミュニティを代表する活動家たちは、機会を逃すことなく粘り強く発言を続けてきました。彼らは偉大な気候活動家として説得力と影響力を発揮しています。
ブラジル先住民族を代表するチャイ・スルイさんもその1人です。
スルイさんはロンドニア(ブラジルの内陸、国境近くの北部の州)のスルイ族として生まれ、先住民の青年たちによる気候運動グループを創設し、その代表としてイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26に参加しました。
スルイさんは各国の首脳に向けて気候変動の被害を語り、アマゾンを森林破壊から守らなければならないと強く呼びかけました(※4)。
そんな中、あろうことか熱帯雨林地域を中心に多くの環境活動家たちが殺害されています。2015年以降、主に中南米で年間約200人にも上る環境活動家たちが犠牲になりました(※5)。
スルイさんを始め、アマゾン先住民コミュニティの環境活動家は、文字通り命懸けで地球環境のために行動し続けているのです(※6)。
市民抗議、デモ、気候マーチ
気候危機を訴えるために市民は世界のあちこちに集まります。
スウェーデンのグレタさんが始めたムーブメント、フライデー・フォー・フューチャーも市民による気候マーチの一つです。
フライデー・フォー・フューチャーは日本でも多くの人々の共感を呼び、2019年の2月の東京から始まって、若者を中心に全国各地に活動の輪を広げています。
2018年に設立された、非暴力の直接行動によって政府に気候と環境の危機に対して行動を起こすよう要求する国際ネットワーク、「エクスティンクション・レベリオン」も各地で多くの市民の支持を集めています。
アメリカの公民権運動などをモデルに、集団逮捕さえも戦術にして世界中の政府に「気候と生態系の危機」の宣言を求めて活動するエクスティンクション・レベリオンは、LGBTQ+の人々や移民、障害者、有色人種など、マイノリティの人々と連帯して抗議を続けています。
人間、動物、植物、あらゆる多様性を持つ地球で、公正で平和な社会を実現するため、人々は今日も路上に繰り出すのです。
市民の権利を侵害する企業や政府を訴える気候訴訟
政府や大企業は温暖化に大きな責任を負っているだけでなく、事態を劇的に変えられるはずの力を持っています。
その力を正しく使ってもらうため、市民はたびたび彼らの背中を押さなければなりません。
人々は時に大企業や政府を相手どって訴訟に踏み切り、彼らに正しい選択を迫ります。
気候変動学者クララ・メイヤーさんは、2021年11月、グリーンピースとともに、気候保護を求めてフォルクスワーゲン社を提訴しました。
クララさんとグリーンピースはフォルクスワーゲン社に2030年までに二酸化炭素を排出する内燃機関車の生産中止と、二酸化炭素排出量を18年比で少なくとも65%減らすことなどを要求し、8週間待って真摯な回答が得られなかったため、提訴へと踏み切っています(※7)。
このように気候変動に加担する企業、時には国を相手に、市民が気候変動訴訟を起こす動きが世界で増えています。
2015年に当時11歳から22歳までの21人の若者たちがアメリカ政府を訴えた裁判は大きな注目を集めました。
この訴訟で、原告の若者たちは国による利益を優先した環境を顧みない選択によって、憲法上の基本的人権を侵害されたとしています。
訴訟の最中に誕生したトランプ政権が審理を延長させ、最終的に訴訟は棄却されてしまいましたが、連邦地方裁判所が「安定した環境は基本的な人権の一部である」という原告の主張の正当性を認めたことは歴史的な出来事となりました。
あなたは1人じゃない
ここで紹介することができたアクションは、世界中で行われている市民運動のほんの一部でしかありません。
気候危機との闘いは決して孤独な闘いではありません。あなたが起こしたアクションに共鳴し、一緒に動こうとする人は必ずいます。
想いを共有しあい、それによって繋がることで行動の輪は広がっていきます。1人の一歩が、企業や政府を動かす大きな転機へと変化していくのです。
今、この場所から始められるアクションを通じて、グリーンピースと一緒に地球の未来をより良い方向へと変えていきませんか。