【国際女性デー特集】気候危機の解決にジェンダー平等が欠かせない理由
この投稿を読むとわかること
3月8日は国際女性デーです。2023年の日本の男女格差は世界で125位、過去最低となりました。ジェンダー格差の大きな地域では特に、女性やマイノリティが、気候災害を含む有事の際に、より被害を受けやすいことがさまざまな研究で明らかになっています。しかし、同時にいま女性とマイノリティが気候危機の解決の鍵を握るという事実に世界的な注目が集まり始めています。ジェンダー平等が気候危機の解決に欠かせない理由を紐解きます。
▼この記事を読むとわかること >ジェンダーギャップ指数過去最低 >格差顕著 日本の政治と経済 >気候変動が大きくする不平等 >女性とマイノリティが未来の鍵を握る >未来のために声をあげる人がいる >社会が待っているのはあなたの声 |
ジェンダーギャップ指数過去最低
「ジェンダーギャップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ジェンダーギャップとは、性別を理由に生まれる不平等のこと。例えば、同じ仕事をしても、女性やその他のマイノリティ性の高いジェンダーの人の給料が、一般的に男性よりも低い場合、ジェンダーギャップの実例になります。
世界経済フォーラムが、2006年から毎年、「経済」、「政治」、「教育」、「健康」における分野ごとに、各国の男女格差を数値化し「ジェンダーギャップ指数」として発表しています。2023年に発表された最新の結果では、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位となり*、昨年の116位から後退し過去最低となりました。総合スコアは0.647と、前年(0.650)と比べて0.003ポイント後退。各分野別に見ると、特に政治と経済において深刻な格差が確認できます。この結果は先進国の中で最低レベル、G7では最下位です*。
「過去最低、G7最下位」と聞いて、日常のどこにそんな不平等があるのかと、首を傾げたくなる人もいるかもしれません。実は、性別における不平等は、人によって見えたり見えなかったりします。表面化していること以外にも、文化的に根深く染みついた差別や偏見は多く、それらは個人それぞれに見えている世界の「当たり前」や「スタンダード」の違いとなるため、気づくのが難しいのです。
また、性別による格差の影響は、特に社会に出てから強くなる傾向があり、世代や個人のいる環境、状況によっても大きく変わります。差別や偏見は、遭遇した瞬間には気がつかないこともよくあります。しかし、やはり社会の仕組みや制度、「当たり前」に感じているいつもの生活に、ジェンダーギャップはたくさんひそんでいます。
格差顕著 日本の政治と経済
日本においてひときわジェンダーギャップが顕著に表れているのが政治、そして経済の分野です。
岸田文雄内閣は、2023年9月の内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用していますが、2001年に導入された副大臣、政務官の役職は、女性ゼロでした。2023年の日本の政治分野におけるジェンダーギャップ指数は146カ国のうち138位と特に低く位置付けられました。
世界では、ここ30年の間に政治の場を占める女性の割合が大きく上昇しました。しかし、日本ではどうでしょう。2023年の内閣府男女共同参画局の発表によると、有権者の51.7%が女性であるにもかかわらず、衆議院議員の女性の割合は10%、衆議院議員の女性割合は26%となりました*。特に衆議院における女性の割合は、初めて女性衆院議員が誕生した1946年の8.4%*から、あまり代わり映えしていません。
経済面に目を移してみると、働き方や収入にもギャップが大きいことがわかります。従業員300人を超える企業に勤める女性の平均賃金が、男性の約7割に止まっていることが厚生労働省の調査でわかっています*。賃金水準の高い管理職に男性の割合が大きく、非正規雇用に女性の割合が大きいことが理由の一つと考えられています。実際に、日本では、女性は35〜44歳以上で非正規雇用割合が上昇する傾向がありますが*、これには、職場、そして家庭内のジェンダーギャップの影響が考えられるでしょう。
気候変動が大きくする不平等
国際自然保護連合(IUCN)がジェンダーに起因する暴力と環境の関連を調べた研究では、気候変動によって、世界各地で女性に対する身体的および性的な暴力、精神的な虐待、セクシャルハラスメント、ストーカー行為、レイプなどが増加していることが報告されています*。食糧や飲料水が不足したり、日常通りの生活を送れないことからくるストレスなどが、コミュニティや家庭内にあった不平等を大きくしてしまうためです。気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)事務局で、ジェンダーに関する問題の責任者を務めるフレール・ニューマンは、「社会に残る不平等は、気候変動の影響でさらに強化される」と指摘しました。
世界中で起こっているこうした負の連鎖は、決して遠い国のお話ではありません。日本では新型コロナ感染症が拡大する中で、DV(配偶者暴力)の相談件数が急増しました。
13年前、2011年3月11日に発生した東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響下においても、性別の格差による被害は起こっていました。当時、被災地において停電中のレイプ、DVなどの女性への暴力が増加し、避難所ではプライバシーの確保などの女性のニーズが後回しにされていたことがグリーンピースの報告書からもわかっています。
その後の生活においても、「避難をするしない」、「どこに避難する」、「いつまで避難生活を続けるか」といった重要な判断の際に、女性やマイノリティより年長の男性の意思が尊重されるという不均衡も生じていました。差別の構造が、立場の弱さの下にさらに弱いものをつくり、被害の連鎖を生んでいます。
女性とマイノリティが未来の鍵を握る
ジェンダーギャップの強い社会では、女性が気候変動に対応するための政治的な仕組み決定の場や、意思決定のプロセスに参加する可能性も低くなります*。私たちが生きるのは、年齢、性別、セクシュアリティ、さまざまな属性の人々が多様に生きる社会です。環境問題に限らず、社会のルールや仕組みを、一定の属性の人々が中心になって設計することには大きな問題があります。
しかし、一方で、女性やマイノリティとされる人々が、この先の地球の未来に良い変化をもたらす可能性に世界的な注目が集まり始めています。
2022年の6月にドイツで開催されたボン気候変動会議では、気候変動の影響に対して女性が男性よりもより弱い立場で被害を経験するということ、そして同時に、 女性を始めとして周縁化された人々が、気候変動の緩和のために重要な存在であることが指摘されました*。
女性は、同じ状況下であっても、食生活や交通習慣、投資や予算計画などに関して、男性よりも持続可能な意思決定を行うことが多いというエビデンスがあります*。それにもかかわらず、世界中で女性が意思決定から排除されたり、権利を制限されてきました。女性だけでなく、ジェンダーにおけるマイノリティ、周縁化された人々は、世界中の意思決定プロセスにまだ十分に参加できていません。
これは、今後の変化を生み出し得る大きな余白となります。つまり、ジェンダー平等への過程は、環境好転の道筋と大きく重なる可能性があるということです*。
未来のために声をあげる人がいる
歴史を振り返っても、守られるべき権利や持続可能な暮らしのための仕組みは、自動的にもたらされてきたわけではありません。過去に声を上げる人がいなければ、女性は参政権や教育の機会すら得ることはありませんでした。そして、今声を上げる人がいなければ、地球は近い将来、人が住める環境を失ってしまいます。
声を上げて仕組みを変えようとする人が、平穏な日常に波風を立てているように見えたとしても、その日常が、他の誰かにとっては平穏とは程遠いものであったとしたら。そればかりか、その日常があなた自身やあなたの大切な人の今と未来をおびやかしているとしたら。
100年先の地球で、子どもたちが豊かな自然の恩恵を受けて生きられることを心から望むなら、あなたも環境活動家かもしれません。
社会が待っているのはあなたの声
あなたが誰であっても、どんな人であっても、何者であっても何者でなくても、あなたは社会の一員であり、社会について意見する権利を持ち、誰にも侵害することのできない人権を持っています。
同時に、あなた以外の誰もが同じように平等な権利を持っています。そして私たちは他の誰かの人権が侵害されることを許してはいけません。あなたが大人であるなら、子どものためによりよい社会にするためにできることをする責任も持っています。
すべての人の命と権利が守られるように、そしてあなた自身のために連帯して声を上げましょう。社会、そして地球は、他でもないあなたの声を待っています。