国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は、東日本大震災並びに東京電力福島第一原発事故の発生から14年となった本日3月11日、以下の声明を発表しました。

グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー

東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から、今日で14年が経ちました。亡くなられた方々に改めて哀悼の意を表しますとともに、大切な方を亡くされた皆様、被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

日本政府は2月18日、2035年の国別温室効果ガス削減目標(NDC)を国連に提出し、その目標達成の土台となる第7次エネルギー基本計画および地球温暖化対策計画を同日閣議決定しました(注1)。日本のNDCは2035年度に温室効果ガスを2013年度から60%削減することを目指しますが、温暖化を1.5度以内に抑えるという観点からも、工業先進国としての責任からも、この目標は極めて低く、本来であれば、1.5度目標に整合する78%削減を目指すべきでした。また、原発については、福島第一原発事故後の第4次エネルギー基本計画(2014年)から入っていた「原発の依存度を可能な限り低減する」という文言が削除されました。しかし、原発には多くの難題がある上、計画から稼働開始までに長い時間を要するため、気候危機回避には間に合いません。

原発は運転期間が長くなるにつれリスクが増大し、地震などの自然災害に対する脆弱性も高まります。福島第一原発事故は、30年以上の運転を経た原発で発生し、放射線量が非常に高いために事故から14年経った今も損傷した原子炉を人間が直接調査することすらできない状況です。それにもかかわらず、原発推進に方針転換することは到底許されません。使用済み核燃料の処理についても全く目処が立っておらず、既存の保管設備は既に満杯に近い状態であり、原発の周辺住民が不測の事態に安全に避難できる実効的な方法についても、多くの自治体で具体化できていない状況にあります。加えて、日本政府および東京電力は、漁業関係者や住民等の懸念を押し切る形で、事故を起こした福島第一原発からの放射性物質を含む処理済み汚染水の意図的な環境中への放出開始に踏み切り、放出は2051年まで約30年間続くとされています。

14年前、当時の政府は首都圏5000万人の避難の可能性を検討しました。実際、東京都の浄水場では一時的な乳児への摂取制限もありました(注2)。風向きによって、放出された放射性物質の多くは海上へ運ばれましたが、風向きが異なっていれば全く違う結果になっていたでしょう。当時極秘に用意された首相談話の草案(注3)には最悪の事態が想定されたとありますが、あの事故を経験した私達は、あの時心に抱いた想いに忠実に歩んでいるでしょうか。

30年前の阪神・淡路大震災、14年前の東日本大震災、1年前の能登半島地震、その他全国各地で地震や洪水が相次いでいます。これら天災に、私達は万全に備えることしかできませんが、原発災害は違います。原発事故は、原子力発電という発電方法を日本に住む私達が選択し利用することに起因します。幸いにも、原子力も化石燃料も使わない再生可能エネルギーによって、電力供給を代替できるようになり、快適な省エネルギーを追求する可能性が日本には数多くあります。原発事故を二度と起こさず、将来の世代に豊かな自然環境をつなぐためには、原発をやめていくことが唯一の合理的な道筋です。政府は、エネルギーの安定供給と脱炭素化のためにも、原発や化石燃料の利用を段階的に廃止する方針を明確に示し、健康や快適性・効率の増進につながる形での省エネと、地域や自然と調和する形での再生可能エネルギーの利用を大きく進め、省エネ・再エネ立国日本を目指すべきです。

(注1)経済産業省 ニュースリリース / 環境省 プレスリリース(2025年2月18日発表)

(注2)NHK「都の水道水、放射性物質を検出」(2011年3月23日)

(注3)中日新聞「首都圏避難へ『首相談話』 最悪シナリオへ極秘作成」(2021年2月22日)